イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Lostrage incited WIXOSS:第3話『セレクター/蜜と毒』感想

顔のない悪意が失われた怒りを喚起するTCGバトル・サスペンス、今週はすず子第二章・末路。
再び始まったゲームの末に何が待っているのか、同時並列で展開するバトルで見せる回でした。
相変わらずの利益なし・出口なしの閉塞感満載バトルではありますが、お兄ちゃんの抱え込んだカルマが濃厚すぎて、なんかヘンテコな高揚感があったなぁ。

色々と情報が出て来る回でしたが、やはり一番インパクトが有ったのは今回の末路。
コイン全てを失えば記憶を無くし、人格も失って別人になってしまうという、クソみたいなゴールが示されました。
どうしても無限少女システムによる肉体乗っ取りを想起させるペナルティだけど、実は『セレクターの意識が消失する』『別の人格が宿る』という結果だけが今回描写されていて、そこにルリグが絡むか否かは分かんないんだよなぁ……。
ここら辺は『ブックメイカー』という言葉と同じように、今後掘り下げていく部分なんでしょう。

今回のシステムが悪意に満ちたデスゲーム詐欺だというのは早い段階から見えているので、サスペンスとして話を引っ張るためには、詐欺の細かい内実を露わにしていくことが大事になっています。
ここの見せ方次第で話も盛り上がるし、同時にミスリードを仕込んで『やられたッ』と思わせることも可能なので、情報の開示と隠蔽をどうやって行くかは大事。
一つの謎が明らかになり、もう一つの謎が生まれていくカードの見せ方は、現状なかなか面白いと思います。

話数を積み重ねるに従って、ルリグとセレクターの関係性も多様に描写されてきて、みんながみんな心の隙間に漬け込む悪魔というわけではなさそうです。
はんなの所のナナシは従順な戦士って感じだし、あーやは毒舌肝っ玉おかんだし……ルリグがセレクターの記憶を反射する鏡だとしたら、セレクターの多様性だけルリグにも色々あるってことかな。
そんな彼女たちが同一のシステム上で生産され、同一のルールに従ってバトルしているのは間違いないっぽいわけで、多様性をまとめ上げるためのカラクリが一体どういうものなのかってのが気になるわけだが……これはゲームの目的にも関わる大ネタだろうな。

謎だらけのシステムに理不尽に巻き込まれ、逃げ道のない袋小路であがくお話である以上、システムが解明されていくことがお話しの進行とイコールなのはよく分かる。
つまり『なぜこのシステムが生まれ、何が目的なのか』という一番のモヤモヤはクライマックス直前までわからない訳で、そこを疑問に思いつつ、ここのセレクターの生き様/死に様を味わうのが、この段階では良い受け止め方なのかもしれません。
各人の価値観や行動方針をしっかり見せることで、後々セレクターバトルというシステムに反発する/従う/傍観するっていう大きな話が回りはじめた時、スケールの大きなダイナミズムを感じるのだろうしね。
いろいろ考えて、自分なりに『こうじゃないかなぁ』って答えを思い浮かべるのも、なかなかに楽しいですが、この話が一種のミステリである以上、答えはどうやっても、先を見ないとわからないからなぁ。


個々のキャラ描写に目をやると、すず子の食事シーンは色々密度が濃くて、セレクターバトルを拒絶しつつ居場所がリルにしかなくなっていく様子とか、そうなるよう追い込むリルの悪魔っぷりとか、良い窒息感だった。
薄暗い家の中で一人食事を取りつつ、気づけばリルの気に入る話題を出して『家族』の温もりを演じるすず子の限界っぷりは、痛ましいやらヤバイやら。
リルが『がんば!』だの『二人なら大丈夫!』だの、記憶をスキャンして都合のいいパワーワードを引っ張り出してくる都合の良さは、ガッチャマンクラウズインサイトの『くぅさま』みたいですな。
そのくせ『聞かれなかったから、言わなかっただけ』だもんなぁ……他のルリグと比べてもリルは邪悪というか、セレクターバトルシステムを円滑に運営する≒女子高生を地獄に追い込むことに熱心で、なんか理由があるのかと考えたくもなるな。

今回お兄ちゃんとあーやにガッツリ切り込んだことで、ルリグアーキから記憶を転写し、後悔や自罰願望なんかも反映してルリグが生まれる過程は、結構分かってきたと思います。
お兄ちゃんはマジキモいけど誠実な人で、過去への後悔と妹の愛情故に歯車が狂っちゃって、そういう歪みを反映してあーやがああなっているかと思うと……思うと……やっぱキモい。
そのキモさを逆手に取り、『キャピった妹キャラを演じつつ、実は毒舌肝っ玉キャラ』というあーやのキャラを際立たせるのも、なかなか巧かったな。

あーやとリアル妹が全然似ていない所が、逆にお兄ちゃんの追い込まれっぷりを強調していて良かったですね。
歪んでしまったとはいえ、お兄ちゃんはセレクターバトルに本気で立ち向かう理由がしっかり見える初めてのキャラなので、なんとか報われて欲しいと思いました……年頃の少女なら誰でも妹認定する所とか、最高にキモいけど、いい人であるのは間違いないんだ、キモいけども!!

一方かがりとはんなの勝負はかなりアッサリと決着がつき、はんなのドライな部分が強調される展開でした。
はんなは非常に理性的というか冷徹というか、TCGライターという職能に促されるまま、セレクターバトルの真実に辿り着きたいっていうクールなキャラだからな……ドライで強いのも納得といえば納得。
ブックメイカー』『敗北のペナルティ』と、気になる部分の触りを見せた上で核心は隠す見せ方は、いい具合に興味を掻き立ててくれてます。

他にもタイムアップ狙いのイレギュラー・白井くんとか、『ブックメイカー』らしき謎の男とか、群像劇を掻き回すアクターがチラホラ顔見世。
セレクターが抱えているカルマが表に出てくると、俄然面白くなってくる』というのはお兄ちゃんが証明してくれたので、謎を紐解き謎を増やしながら、セレクターの人となりにはどんどん踏み込んでいって欲しい。
悪趣味な舞台設定にふさわしく、人間のドス黒い部分と一縷の光りは現状巧いことかけていると感じるので、ドンドンディープな部分に踏み込み、ドンドン温度を上げていってほしいですね。
タイトルに『incited lost rage』が含まれている以上、失われた怒りが吹き上がり抑圧を弾き飛ばす瞬間は、一つの見せ場として必ずあると思うんだよなー……その瞬間を燃え上がらせるために、今はガンガン上から押さえ込んでいるタイミングであり、秘めたる熱源を描写するタイミングでもあろうのだろう。


というわけで、末路が分かってもわからないことだらけ、謎が謎を呼ぶ第三話でした。
このゲームで失われる『記憶』は人格と強く結びついているので、『敗北→白紙化→上書き』というペナルティにも納得はいくんだけども、もう一枚何かを隠している感じもあるんだよなぁ……。
無限少女システムのインパクトを巧く活かした上で、一捻りしたギミックを仕込んでいるならとても面白いと思うので、今後の謎解きも楽しみです。

んで、セレクターの抱え込んだカルマはよりディープに、より逃げ場書のない袋小路で沸騰している感じ。
今回出番がなかったちーちゃんもガンッガンに追い込まえているので、おそらく意図的に分離されている二人の主人公が顔を合わせた時、どういう吹き上がり方をするのか。
楽しみでもあり恐くもあり、やはりこのアニメ、面白いですね。