読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

3月のライオン:第7話『神様の子供その3&大切なもの。大切なこと&将棋おしえて』感想

アニメ 3月のライオン

過酷な人生の冬と暖かな春を行ったり来たりする渡り鳥の物語、今週は零君の! 友達百人できるかな!!
前回意味ありげに引いた高橋くんとの魂の対話、その後の全部のせカレーでの団欒、熱き親友二海堂の将棋講座と、暖かな友情が零君を取り巻いていくお話でした。
可愛くて優しい女の子だけじゃなく、爽やかな男の友情もどっしり育んでくれるところが、零君の人生を追っかけている感じがして暖かいですね。
演出的にも暖色を多用し、アップテンポに運ぶ元気さがとても楽しくて、気合の入った特殊EDまで付いてくる、サービス満点な仕上がり。
楽しく一気にEDまで運ばれてしまう回だっただけに、来週休みなのが辛い……。

というわけで、零くんの新しいお友達と、古いお友達両方がメインになるお話。
鉄華団では血塗れの因縁で結ばれた細谷さんと葛西さんですが、三月町では尊敬と真心で真っ直ぐ繋がりあうことになり、零くんの人生に新しい彩りが生まれていました。
お互いの思いが伝わったシーンのキラキラ感が半端なく、どう見てもロマンスの演出すぎて面白かったですが、実際男女の出会い並に猛烈なものがあそこにはあったわけで、あの演出で良いのだ。
横から切り取るカメラワークが、高橋くんのすっくと伸びた背筋を強調していて、彼が真剣に零くんをリスペクトしている姿がはっきり判るのが、非常に良かったです。

零くんは過去に色々傷もあり、器用な生き方はできない少年です。
その不器用さで周囲を傷つけたり、周囲に傷つけられたりしながら生きているわけですが、高橋くんの本気をちゃんと受け止め、投げ返した真剣さを同じように受け止めてもらえる関係も、時には作れる。
才能ゆえに追い込まれていく青年にカメラを向けつつ、人生の厳しさだけを取り上げるのではなく、それを癒やす暖かさだけを大事にするのでもなく、真剣さの別の価値を『友情の萌芽』という方向性で見せてくるのは、非常に豊かな展開だなと思います。


未来を真面目に見据える少年たちがシンパシーで繋がった後は、『カレーWith唐揚げ&温玉』という破壊兵器が見事に炸裂し、血縁の枠を超えた団欒が描かれていました。
全部のせカレーが美味そうなのも良いし、『ビデオデッキ』というもはやレトロなアイテムと狭い居間の描写が、逆に緊密な関係を強く演出するのも素晴らしかったです。
ここらへんは、零くんの家にモノが少なく、ガランと殺風景なのと巧く対比してるなぁと思います。
元々三月町と六月町の美術は明瞭なコンセプトを持って対比されているんですが、大枠だけではなくこういう細かいところでも手を抜かず、ヴィジュアルでテーマを補強していくのはいい作りだ。

恋に恋するひなちゃんの感情爆発も非常に良くて、中学生女子の瑞々しい感情、それに触れることでじっくり温まってる零くんの魂を、身近に感じることが出来ました。
零くんも言ってるけど、表情がコロコロ変わるひなちゃんはとても元気で可愛らしくて、視聴者も『ああ……ええな!』と強く思える、良いアニメーションでした。
色んな表情がモコモコ動きつつ画面を埋め尽くしていくところは、ちょっと凝った見せ方で面白かったな……3月のライオンはこういう、コメディーシーンでの細かい動画遊びにセンスがあって、見てて楽しいですね。

ひなちゃんの感情変化を好ましく思っていた零くんが、『親友』二海堂の熱気に当てられ感情を爆発させ、物語の最後でそのひなちゃんに『なんか良いね』と言われる。
高橋くんとのコール&レスポンスでも感じられた善因善果は川本家の団欒でも繰り返され、零くんがどういう世界に生きているのか、よく教えてくれます。
『新しい友達』である高橋くんと、『古い友だち』である二海堂とがビデオ越しに交錯する構図もそうなんですが、今回は角度を超えて同じモチーフ、同じテーマを再度撮影する手法がよく効いていて、変奏を繰り返し畳み掛けることで一定のムードが紡がれていたように思います。
『このお話はこういう話』『このシーンはこういう意味』というのを声高に叫ばなくても、こうして繰り返すことで伝わるものが沢山なるわけで、いい具合に抑圧が聞いた饒舌さですね。


エピソードの響きを引き継ぐ、スラーのよく聞いたお話にふさわしく、後半は俺の二海堂が元気に暴れていました。
公共の電波であれだけアツく親友にメッセージを残せる二階堂は、まさに『ニカはすげぇよ……8(CV細谷)』って感じですが、零くんも普段のクールさで受け流すのではなく、引きずられるように少年らしい感情を激発させていたのは、なかなか好ましかった。
むっつりと思い悩む零くんも零くん『らしい』んだけど、普段見せない年相応さもまた彼の『らしさ』であり、川本家とは違う『らしさ』を引き出し背負える二海堂は、やっぱ親友以外の何物でもねぇよなと思います。

二海堂自身の『らしさ』も多様でして、零くんにアツくぶつかる若さを見せたり、若き棋士として一般層への普及に務める落ち着き、JCと幼女をぎゅうっと引き込む表現を持ってくる才気と、色々見えました。
一応二海堂は零くんよりも歳上なのですが、年を超えた人間力の強さみたいなものが彼にはあって、女子供に対するどっしりとした対応と気配りから、それは感じ取れます。
将棋にゃーちゃんの可愛い絵面、邪気のないコメディの中に、そういう人格の太さが滲んでいるのは、やっぱ作品の豊かさだなと思います。

EDの"ニャー将棋音頭"はハッピーで暖かなエピソードのトーンを最大限増幅させつつ、3Dモデリング新規ぶち上げの無駄っぷりに感心しきりな、良いスペシャルさでした。
こういう部分に過剰なパワーを注ぎ込むのは好きなタイプのキチ力だし、にゃーちゃんはちゃんと可愛かったし、非常に良かったですね。
大真面目に作っているからこそ生まれる笑いを完全に理解し、一切の妥協なく曲もモデルも仕上げてきたのは、力入ってて素晴らしいなと思います。
こういう一発があると、今回のエピソードで手に入れた暖かさに特別なメモリアル感が漂って、しっかり記憶にも残るわけで、ネタとしてもシリーズ全体の中での演出としても、良い一発でした。


というわけで、不器用零くんの数少ない男友達が、どんだけ良い奴らかをしっかり教えてくれるエピソードとなりました。
高橋くんとの背筋の伸びた付き合いも、暑苦しい二海堂との気の置けない関係も、苦しい生き方をしている零くんにとってはかけがえのないもの。
笑いと温もりを丁寧に演出しつつ、前向きさをみっしりと詰めた、気持ちのいいお話でした。

まぁ温もりを強調すればこそ、吹きすさぶ風の激しさもよりはっきりと伝わんだけどな!
春風を割って聞こえてくる遠雷のように、そろそろハード・コアな試練が来そうな予感に震えていますが、このアニメは暖かさも冷たさも非常に真面目に、人生の一側面として本腰で描ききるお話。
苦痛も癒やしも全てひっくるめで生きている、桐山零という少年の物語がどう転がるか、いやはや楽しみです。
……来週お休みだけどね!