イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第33話『迷子のローラ!?』感想

迷い路の果てに新しい輝きがあるアイドルど根性ストーリー、今週は桜庭ローラ大復活。
ゆめにも的確な指導をしていた個性派幹部・白銀リリィの導きを受けて、迷って迷って自分の道を見つけるまでのお話でした。
第29話でガッツリ負けさせてから下げ調子が続いていただけに、ここでグッと上げ気味に期待が高まる話が来たのは、非常に素晴らしい。
ローラを導きつつも、あくまで自分のアイカツを譲らないリリィの強さもしっかり描かれ、状況を作ったアンナ先生の株も上がるという、横幅の広い話でもありました。

というわけで、才覚と優しさと根性を併せ持つ不遇の天才、桜庭ローラのメインエピソードです。
アイドルとして正攻法で出来る範囲のことはすべてやっているローラに、ちょっと角度の違う所から示唆を与えて目を開かせる展開は、定番ながらアツい話運びでした。
ローラは根本的に真面目なので、誰かが舵取ってやらないと『抜く』方向で努力するのは難しいだろうし、そこら辺看取って状況を整えたアンナ先生は、最近一番伸びてるキャラな気もする。

今回は全体的に演出が良くて、積み上げた努力を風呂桶に、道が見つからない迷いの涙を落ちる雫に巧く象徴させ、ローラの心情が巧く伝わってくる絵が出来ていました。
ローラの心情を台詞や表情だけではなく、抽象的なアイコンを活用して伝えることで、言葉を手に入れて迷いから抜ける展開にカタルシスが生まれるし、言葉で説明しきらない詩情がしっかり生まれていました。
長いトンネルを抜けて、幸運の青い鳥に導かれ広い場所に出ていくラストカットも、ローラが手に入れたものが巧く象徴されていて、印象的な見せ方でしたね。

『迷って道を見つける』というストーリーラインは堅牢なものですが、それに巻き込まれる形でローラのキャラがブレ気味だったのは、少し気になりました。
ローラは今回『勝負に拘りすぎていた』と反省するわけですが、これまでの物語でそこまで勝ち負けにガッツイたキャラだったけ? と思い返すと、それよりは観客の笑顔やパフォーマンスのレベルを大事にした、『形より中身』なアイドルだった気がします。
物事の本質を見抜く知性や、必要な行動を適格に見切る冷静さもローラの『らしさ』だと(推しの贔屓目抜きでも)思うわけで、そこら辺をあえて落として低いところから始めていく展開は、ちょっと違和感がありました。
『第29話の負けが衝撃的だったので、それが尾を引いて自分を見失っている』という受け取り方も、出来ないわけじゃないんですけどね……なかなか難しいところだ、ここらへんは。

ローラが手に入れた『我が道を行く』スタイルの値段は、今回だけでは決まらないと思います。
受け取ったものを今後のアイカツでどう活かし、桜庭ローラをどれだけ高められるかが、今回の発見(それを与えてくれたリリィや永吉さん、アンナ先生)の価値に繋がってくるわけで、転がし方次第かなと思います。
『先を見ないと、評価ができない』というのはここ最近のエピソードに共通する感想ですが、それは個別のエピソードが結構仕上がっていて、『先を見たくなる』からこそ生まれる認識です。
長い茨道をようやく抜けたローラが、今回見つけた『自分らしさ』をどういう風に表現するのか、こちらの期待に答えるようなエピソードを待ちたいところです。


今回はWメンター制でローラを導いていくお話でしたが、既に第26話で頼れる先輩っぷりを見せてたリリィだけではなく、エピソードゲストの永吉さんが非常に巧くトスを上げていて、安定した話運びになっていました。
ただのガミガミジジイと思わせていて、ローラの迷いを汲んだアドバイスをしっかり差し出し、自発的に視野を広げていく立ち回りは、お話の目的を的確に制する見事なもの。
やっぱゲストキャラがしっかり立ち回ると、お話の目的とキャラがスムーズに隣接していくなぁ……。

『教師で老人』という枯れた属性を持つ永吉さんに比べ、リリィは『野望に燃える現役アイドル』というギラついたキャラであり、導き方も手を引くというより背中を見せて解らせる感じ。
『誰かのためにアイドルをするのではなく、あくまで自分のために』という鋭いエゴイズムは、病身ゆえに『ファンも自分も』という贅沢が許されないリリィらしい『らしさ』で、凄く良かったと思います。
強いエゴが他人を惹き付けている描写は、ローラが目指すべき『自分だけの道』の例示としてよく出来ているし、そこら辺の『強さ』を"Dreaming bird"のポテンシャルが下支えしているのも、非常に強い。
『付き人さん』としか思われてないローラのオーラのなさと、ボケすら治すリリィの存在感をひっそり対比したり、メンターとしてのリリィだけではなく、アイドル・白銀リリィを大事にした出番だったと思います。

あくまで自分を大事にしつつも、他者を切り捨てるのではなく、隣に寄り添う姿勢を忘れない。
迷えるローラの気持ちを寝床で受け止め、しっかり言葉を返すシーンは、厳しさや強さ以外のリリィ『らしさ』がしっかり出ていて、なかなかチャーミングな見せ場でした。
ローラとゆめの距離感もそうなんだけど、あくまで自分を強く保ち、ベッタリしないけど信頼し合える間合いはスターズ独特の魅力で、今後もドンドン推して欲しいポイントですね。
他人の言葉を繋げていって、最後に『わたしの言葉』で〆るところとかも、リズムが合って好きな運び方だったな……リリィ先輩はいいエピソード貰ってるなぁホント。

地方巡業というお話の都合で舞台を離れていたゆめ先輩も帰還し、諸星学園長と『あの力』に切り込んでいく流れに。
ぶっちゃけ『あの力』関係はタメすぎのきらいがあるので、ザックザックと先に進めていくのは大歓迎です。
とは言うものの、『諸星ほたる』という名前と学園長との関係が出ただけなんだよなぁ……あくまで今回はローラの話なんで、そんなに尺取るわけにいかないのも判るけども。
今回作った足場を巧く利して、納得行く形で『あの力』関係のエピソードをまとめて欲しいところですね。


そんなわけで、しっかり物語のバネをたわませ、桜庭ローラを未来に飛翔させるお話でした。
メンター役がしっかり自分の仕事を果たしてくれたこと、へこんでいるローラの心情が伝わりやすかったことで、彼女が見つけた『自分だけの歌』にも素直に納得できる、良い運び方だったと思います。
第25話あたりからの圧の掛かった展開は、色々荒いところもありつつ巧く話を積み上げていて、『今後次第だけど、今後を見守りたくなる』いい塩梅で走っている気がしますね。

そんないい話が続いたところで、来週は次回予告を見てもさっぱりなカオス回の予感。
真昼メインなのは間違いないっぽいが、あのシヴの谷の蛮族達相手にどういう話が展開されるのか、さっぱり読めません。
トンチキを巧く使いこなし、話に起伏をつけるのも長期シリーズでは大事な実力だと思うので、どういうコメディの捌き方をするのか、楽しいにしたいと思います。