イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

刀剣乱舞 花丸:第9話『その過去があるから』感想

豊かな四季の中で育まれる共同体の絆の話、今回は超刀剣男子と阿津賀志山。
獅子王がジジイにサプライズをぶっ込むべく色んな人を巻き込んで走り回るAパートと、義経ゆかりの刀がその終焉の地で曇ったり立ち直ったりするBパートでした。
夏休み中は休業していた時空犯罪者狩りも久々に見れて、刀剣男子が戦う意味、戦いを離れて日常を営む意味を、じっくり考えるエピソードになっていたと思います。

今回の話はゆるふわとシリアスの境界線がはっきりしたお話でして、そこに共通した軸が貫通している構造だったと思います。
鵺というキメラを狩った逸話で高名な源頼政、その佩刀たる獅子王がキメラ刀剣男子になるのはなかなかの皮肉ですが、鳴狐に対抗心を燃やすのも、ジジイを思いやる気持ちあってこそ。
それは穏やかな本丸だけではなく、白刃きらめく戦場で、臆せず仲間を助ける勇気の原動力でもあるわけです。

獅子王が鶴丸や蜂須賀、加州や乱を巻き込んでサプライズを作り上げるように、過去改変の誘惑に負けそうになる今剣を引き止めるのは、過去の因縁のある岩融だけではない。
山姥切くんは写しという過去を乗り越える姿を身をもって示すし、沖田の夢に悩まされる安定も、今剣の義経への思いに共感を覚えています。
兄弟刀の絆、狐繋がり、袖すり合う奇縁……刀剣男子には色んな形式の繋がりがあって、非常に開かれた関係性を作りうる可能性に満ちている。
歴史の監視者という新しい役割を与えられ、人間の姿で顕現し、本丸という場所に集まった付喪神たちは、過去にとらわれるだけではなく、未来に向かって歩くことも出来る存在なわけです。

無論過去というのは力にも変わるわけで、獅子王がジジイに優しくしようとするのは、頼政と過ごした時の思い出が後押しするからでしょう。
今剣くんも仲間の支えを受けて、過去への無念を飲み込むことで、新しい道に進むことが出来る。
本丸と戦場、日常と非日常に別れつつも共通する、変化への可能性と過去への視線。
今回の話は、そういうものを描くエピソードだった気がします。
超刀剣男子のトンチキっぷりを戦場の興奮の後に持ってきて、日常にしっかり帰還させて落とす余韻の作り方が、凄く好きだったな。


キャラ個別の描き方としては、リーダーを努めた山伏さんが豪快かつ繊細な奮戦っぷりで、見てて楽しかったです。
戦いをどう受け取るかは刀剣男子によりけりなんですが、己を鍛え高みに登るための修練場として、ポジティブに捉えているのは面白い。
戦闘狂というわけでもなし、武器という本分から逃げるでもなし、バランスの良い独特なセルフ・イメージを持っているのだなと思いました。

そんな山伏さんに色々気を使われていた山姥切くんだけど、抜群の繊細美少女力を存分に発揮しつつ、『写し』というキャラ性の根本に拘りすぎない、『強い』部分を見せていた。
手入れ場で兄弟たちが『山姥切くん綺麗で強いかっこいい凄い祭り』を開催したとき言われているように、山姥切くんは「どうせ俺は写し……」ってネガってるキャラなわけですが、それを押しすぎると、今剣くんの抱えた『弱さ』と心中して、話がズブズブ沈下していく。
なので、戦場という晴れ舞台で『弱さ』に囚われすぎない『強さ』を見せて、『弱さ』のドミノが置きないよう、普段と違う山姥切を強調する運び方にしたのは、とても良かったと思います。
まぁ僕アニメでしか刀剣乱舞知らんので、『本当』の山姥切くんが今回のキャラ性で良いのか、判別つかんけどね。
でもま、仲間との信頼関係を重点的に描いた話で、ネガってるだけじゃない『強さ』が感じ取れたのは、自然だしいいことだと思います。

今剣くんが復活するまでのチャンバラは少々もたもたしてましたが、気合い入れてからは混合兵種の面白さの出た、良い殺陣になってました。
義経公譲りの身軽さ、短刀ゆえの機動性で相手の背後を取る今剣くんの一撃、結構好きだな。
あと国広兄弟の同時半裸ね……山伏さんが諸肌脱いでスミ見えたけども、闘争の捉え方といい明王みたいな生き方してるね、あの人。

ゆるふわパートは相変わらず、ワンテーマに沢山の刀剣男子を巻き込むシチュエーションの作り方が巧くて、色んなキャラが賑やかに登場。
トンチキな歓迎なんだけども、そこに込められた獅子王の真心を投げ捨てず、真正面からしっかり受け止めるジジイの安定感がすげぇ。
鶴丸も同じくジジイのはずなんだが、楽しそうなことには即座に飛びつくアクティブさがあるよな……それ言ったら、獅子王も平安末期作だからジジイか。

鳴狐が差し出した稲荷という『食』、みんなで獅子王を着飾らせた『衣』と、『日常』の象徴として『衣食住』を使ってくる演出方針も、花丸がずっと大事にしているポイントですね。
なので、戦場という『非日常』では服が破れ、ゆるふわ本丸では描けない感情や試練、関係性が表面化すると。
やっぱ殴り合いが挟まると話全体がピッと引き締まるので、適度に混ぜてくれると嬉しいもんです。
殺し合いから本丸に帰還してクールダウンする時間を取り、あくまで足場は『日常』の中にあると見せてから終わる、収めの巧さもあるしさ。


というわけで、コメディとシリアスを順繰りに回しつつ、共通するもの、対比されるものをしっかり打ち出す、花丸得意のど真ん中でした。
大人数を捌き見せ場を作って、拾いうる限りのファンサービスを展開するために、色々かっちり作っているのが、花丸の好きなところです。
一つの試練を乗り越えまた絆を深めた本丸ですが、続く神無月にはどんな楽しみと苦しみが待っているのか。
とっても楽しみですね。