メイドインアビスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
闇の産道逆戻り、死と隣り合わせの楽しいピクニック。二層の森を舞台に、リコとレグの旅路は続く。
生死流転のアビスの宿命を確認しつつ、明るい森から薄暗い逆さ森にたどり着き、不動のオーゼンが顔見世するまで。相変わらず異常なクオリティで巡る異界が最高に気持ちいい
前回人間の領域を脱し、死の世界に本格的に足を踏み入れた子供たち。それを歓迎するように、ナキカバネが初手からぶっ殺しに来て、狒々たちは石を投げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
アバンナレーションで言っていたように、死地においては生者は異物、いつでも死ねるし、死と己を同質化しなければ生き続けられない。
そういう理屈をナキカバネのエグい捕食で真っ先に見せてくる辺り、親切なのか悪趣味なのか。アビスにおいて、リコは簡単に死にうる。生き死にはアビス(とその縁にある街)ではアタリマエのことで、死人を糧に育ったナキカバネもバクバク食う。それをためらうレグは、異物の中の異物といったところか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
つくづくレグを『記憶喪失のロボット』にしたのは巧い配置だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
アビス世界のドライな価値観から外れ、21世紀日本のヌルい価値観に染められた視聴者(つまり僕)の代理人として、疑問に感じるべきポイントに悩み、ツッコむべきところに踏み込める。
アビスの申し子であるリコとの対比も際立つしね。
異質な世界、異質な価値観というのは然るべきフィルターを通して初めて、視聴者の軟弱な胃腸に消化可能な形になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
世界を知らない、フツーの価値観を持ったレグが主人公に座ることで、アビスの脅威と残忍は『あの世界の当たり前』のまま、視聴者にしっかり届く。作品と読者が乖離しない。
ナキカバネの肉を前にした問答は、アクションの中で世界の実態を見せつつ、そこに感じる違和感や疑問をしっかり溶かし、『この世界はそういうものなのだ』と視聴者を納得させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
異世界に視聴者を馴染ませる細やかな配慮があって初めて、超絶異質な冒険譚を楽しむ足場も生まれるわけだ。
無論あのシーンにはそういう物語作用だけではなく、作中の現実を必死に生きるキャラクターの奮戦も存在している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
鳥葬されるときの狭い視界、火葬砲の圧倒的な火力と、それが生み出したシュールでグロテスクな風景。真っ赤に焼けた世界の中で、幼女の裸がきらめく瞬間の悪夢的目眩、あるいは嘔吐感。
食われかけて、その相手を喰う。アビスめしはいつだってむき出しの弱肉強食…というか『いつでも弱者と強者がひっくり返りうるある種の平等さ』を強調する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
自分で餌を取れないナキカバネの雛を、自力で命を守るしかない子供たちがぶっ殺し、親を自分の糧に変える構図が、ヤバいくらい残忍だ。
街の段階で既にそうだったが、深度を深めるほど作品世界は子供たちに厳しくなる。いつでも命を奪われ、誰でも命を奪える、むき出しのサヴァイバル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
社会によって保護されない孤児たちは、それでも自分たちを守ってくれた胞衣から深く離れて、笑いながらゲロと肉のリアリズムに沈んでいく。
リコは失ったノートを一瞬だけ悲しんで、ケロッと忘れる。奪い、奪われるのはアビスの宿命。そのルールを否定した所で、母なる暗黒に帰ることは出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
出来るのは死と生の流転を、当たり前のものとして受け入れること。喪失も宿命なのだと認め、あるいは受け入れること。そこに正気の居場所はない
リコはおそらく、己の身体や精神がアビスに奪われたとしても、そこまで絶望はしないだろう。そういうもんだ、フツーなのだと納得して、奥に奥に分け入っていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
街では社会不適応な狂人だったアビスの申し子は、死と狂気の王国に深く分け入る内、ルールに適応した存在に変わりつつある。
正気から狂気への相転移。作品を貫く価値観が変化するにつれ、具体的な光景が変化していくのは非常にいい。狂っていることにすら気づけないまま、当たり前に変質してしまう情景が、無言で作品を支えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
輪郭線を取らず、モワッとした質量が伝わってくる森の景色がいい。
今回物語は、第二層最奥、逆さ森に到達する。噂に語られてきた白笛が初めて登場し、意味深な監視が主人公たちを貫くそこは、中盤のクライマックスだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
不穏な空気、あるいは期待感を受けて、グッと美術の質が切り替わる。至近距離で目を塞いでいた森が消え、見通せない遠さと薄暗さが強調される。
異質な世界に分け入っていくワクワク感だけではなく、作品のトーン、物語の起伏を背景が教え、支えてくれるリッチさ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
通奏低音のように作り込んだ世界が視聴者を包囲することで、喉の奥まで残酷なるファンタジーに満たされている恍惚が加速していく。やっぱ、気合の入ったファンタジーは良い。最高だ
死を肯定し、誉れと受け止めるアビス世界。その客神であるレグがしかし、左手に強烈な『死』を宿していることも、今回の火葬砲の描写が強調するポイントだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
これまで道を切り開き、いのちを守るために使われてきたレグの腕は、今回命を奪い、自分の意識を危うくするべく使われる。
しかしアビスにおいては(そして現実においてもおそらくは)、命を奪うことが命を守ることに接続されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
殺さなきゃ殺されていた局面で、レグはリコを殺しかねない一撃を打つ。
生きることと死ぬことの危ういバランスを、子供は理屈ではなく、実地試験の中で確認していかなければいけない。
アビスという世界そのものが、厳しくも真摯な教師として子供を鍛え上げている感じがあるのは、子供が穴に潜っていく物語に必然性を与えていて好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
レグは何も知らないまま、アビスに潜り、殺し、殺され、奪い、奪われる。深淵行そのものが、記憶喪失の孤児に世界と自分を教えていく。
それは退屈な大人の寝言を座って聞いているより、遥かに危険で興味深い講義だ。(孤児院の急峻な講義室描写を挟んだことが、こういう時効いてくる)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
ワクワクして、ヤバくて、ギリギリな探検それ自体が、失われたレグの記憶を、死が当然となった世界での己の立場を学ぶ教室なのだ。
非常に残忍かつ歪な形ではあるが、このアニメはとても教育的なアニメなのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
見ている側ではなく、作品世界を探検する子供たちが学び、成長するという意味で。授業料は勇気と暴力、授業内容は実地100%の超絶スパルタであるが。
『こども』への歪んだ愛情をひしひしと感じる。
火葬砲の『死』を描いた後、迷いの森を攻略していく『生』の輝きをテンポよくモンタージュしたのも非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
作画の情報量が多いので、セリフが音にならなくても何言っているか判るのは素晴らしい。たしかに、遺物一個一個に興奮している場面じゃない。大事なのは重量制限だ。
今後産道を深く逆戻りしていくうちに、『死』は色を濃くしていくだろう。子供っぽい甘い夢を踏みつけ、肉体を砕く暴力は勢いを増していくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
それでも、街に包まれている時夢見た『生』の輝きを、レグの伸びる腕の優しい使い方を、忘れてほしくはないなぁと思う。やっぱ冒険シーン、すっげぇ良い
そんな感じで、話数もそろそろ折り返し、アビスのむき出しのリアルが主人公たちに迫る、森林踏破行でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月4日
強キャラオーラ全開で顔見世したオーゼンが、一体どんなふうに子供たちに対峙するのか。三層はどういう場所なのか。
気になることがいっぱいで、いいアニメだなぁ本当に。来週も楽しみ。