イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プレイレポート 18/04/30 クラヤミクライン『廃屋のメリー』

昨日は冒険企画局の新作、クラヤミクラインを遊んできました。初手はやっぱり付属シナリオ!

システム:クラヤミクライン シナリオタイトル:廃屋のメリー GM:コバヤシ

シェンツさん:小鳥遊紬:27才女性:誠実 お肌の衰えに恐怖を感じつつ、中東からの転生妄想で限界なハートをもたせている限界女。頼れる大人とグダグダクソアマの間を、高速で反復横跳びする安定感のない最年長。
田中くん:浅川蕾味:15才女性:寛容 ちょっとシスコン気味なサバサバ系女子。クセの強いメンツの中で常識人っぽさをにおわすが、劣悪虐待環境から抜け出すために実父を◎した過去を持つ。
浅間忍さん:諏訪坂雪乃:9才女性:愛 メンツ最年少の可憐なる乙女……と思わせておいて、勝手に見初めた『おじさま』をストーキングしまくる危険なクソガキ。得意技はトランキライザー一気食い。
二次元くん:不知火蒼:15才女性:純潔 ジャンヌ・ダルクの転生を自称するJKヤクザ。盛り過ぎである。サンプルキャラなのに。忘八者特有の野蛮力が怪異を相手によく唸り、状況に飲まれないタフさを見せた。
新米くん:井澄朋佳:14才女性:信仰 中学生作家であり、持ち前の博識で怪異を解析している頼れるクレバー女子。と思わせておいて、電源の入っていない携帯電話で謎の助言役『ヨシノさん』と連絡を取る、ドッピョムーブを炸裂させる限界人間である。

というわけで、ヤバい廃屋に集った限界人間どもはコイツラだ! って感じのメンバー。何故か全員女性。クラヤミクラインはクイックスタートも、フルスクラッチも、基本超ろくでもない生き物が出来上がるように出来ているので、亞侠もビックリの超絶ロクでなしどもがオートで集まる感じだ。

初プレイとなりましたが、非常に面白かったです。プレイ前にルールを読んで感じていた、プレイエイドを多く使ってボードゲーム(あるいはゲームブック)的に遊ぶフィーリングは、軽妙かつ独特でとても面白い。
1回のプレイングが丁寧にパッケージングされているので、プレイ環境に合わせていろいろ味付けを変え、好みの風合いで遊んでいく感じになると思います。ウチはTRPG経験が分厚く、濃いめのロールを好む傾向にあるので、シンプルな進行にいろいろ骨肉を付け、自発的な物語生成を多め、想定時間よりやや長めで展開しました。
とは言っても、ボイスオンセ・プレイヤー5人で初システムという条件で、ラップタイムは二時間四十五分。昨今の新作ゲームの特徴である『軽量化&シナリオ構造/ゲーム体験の可視化』を先鋭化させ、速くて強いゲームになっています。
ボードゲーム的なプレイフィールを支えるべく、色んなコンポートメントを使っていくことになるのですが、手で触れることが不可能なオンセだと、ちょっとやりにくかったかな。これはGMやった僕の不手際かもしれないですが、リアルで触れれる情報量を前提にゲームシステムが組まれている感じで、それが消失してしまうオンセだと、ちょっと情報交流にモタつきを感じる場面がありました。

付属リプレイではなく付属ゲームブックにして雰囲気を伝える英断により、世界観やシナリオ、キャラクターを分厚く生成する補助が非常に手厚い、クラヤミクラインのルールブック。
これが実プレイでも生きていて、『こういう雰囲気で、こういうゲームをする!』という共通認識は強く取れていたように思います。ヴィジュアルでのムード作りが非常に強いので、イメージの伝達が正確、かつ強力なのだな。
付属シナリオの記述がしっかりしていたのも、『このゲームは限界人間の限界っぷりをワイワイ楽しむだけでなく、ちゃんと”怖い”ゲームなのだ』という認識を作る足場になっていたと思います。
キャラが弱いホラーゲームでは、時にPCが恐怖を体験するためのトークンになってしまいがちですが、そこをしっかり楽しみつつなんとか生存しようといういいバランスで、ゲームを遊べたと思います。
それは世界観やシナリオを真剣に味わおうというプレイヤーの姿勢、そしてそれを惹起するルールブックとシナリオの記述があってこそ生まれるもので、かといって堅苦しくもなりすぎず、非常に楽しく遊べました。

クイックスタートを名前レベルまでピッチリ決めてしまって、半分NPC的な扱いをする戦術も、ビシッと決まっていたと思います。濃口の限界人間どもがみっしり詰まっているクイスタページを見ているだけで、『こういうゲーム』という雰囲気は共有されるし、期待感もアガる。
その上で色々なサジェスチョンをクイスタに埋め込むことで、雰囲気を超えて『こういうことをしよう』『こういう楽しみ方をしよう』という意識が、自然と生まれてきます。
クイスタは基本ルールブックに乗っている情報なので、ゼロからビルドするよりPL間での共有力が高いのも魅力ですね。『こいつどんなキャラだっけ?』と思ったら、ルールブックを見れば良いし、説明もルールブックに書いてあること読めばいい。
吊るしのキャラに窮屈さを感じたら自作すればいいわけで、二人の自作勢もクイスタ勢に負けない、濃口の限界人間っぷりを発揮してくれていました。ライフパスだけでキャラができるシンプルなシステムと、そこに大量に書かれたドギツイ設定がいい噛み合いを見せて、軽量なのに再現幅が広い、いいキャラメイクシステムになっています。

数字の処理も基本『侵食』に一本化・シンプル化されていますが、取れるオプションが多めで、PCには結構強い。これは無力感を感じさせず、世界観の異常さも伝えられるいいデザインだと思います。
オプションの処理がやや複雑で、初回では結構戸惑うところもありました。ここら辺はプレイ重ねてなれてくると、スマートに処理できる部分かな。基本侵食を巡るせめぎあいに一本化されているので、それなりに複雑でも理解はしやすい印象。
TRPGの醍醐味である『決断』をシステム化した処理は、非常に鮮明なプレイ経験が得られる優れたルールで、とても楽しかったです。3章立てに限定されているシナリオの横幅を、決断による分岐(2×2×2で最大8ルート)で担保する作りも巧い。
ただ、シナリオ記述がシステム化されておらず、結構複雑な条件で分岐するシナリオを扱いかねた部分もあります。選択によるシナリオ分岐をツリー化、あるいはフロー化するプレイエイドが公式に供給されると、システムが持っているポテンシャルを最大化できる気がしますね。それまでは、自分でフローを書いて可視化すんのが良いかな。

ゲーム自体は人数が多かったこともあって、比較的波風少なく遊べました。それでも破滅判定のヤダ味がスゴイので、最後までピリピリした感覚が残っているのはとても良い。
PCはスナック感覚でバリバリ発狂していて、その不謹慎な楽しさがゲームに勢いを与えてもいました。『そういうもんだ』と自覚し、精度を持って遊ぶ部分には、超ろくでもないことをするのは死ぬほど楽しいわけで、そういうエンジン積んでるのはやっぱ良いね。
他のあらゆるシステム、あらゆるセッションに言えますが、倫理や楽しさを図る共通のものさしを確認して、踏み込みすぎないよう、及び腰になりすぎないよう楽しむのが、やっぱり大事かな、と思いました。
そういう意味では、今日のセッションは人数多めだったにもかかわらず、お互いの顔や卓全体をよく見た、意思疎通のあるセッションになってくれました。自発的な幕間生成も多すぎず少なすぎず、いい塩梅で濃い目にやれたかな。ルール通りに運用すると、うちの環境だと幕間多すぎ、時間圧迫しすぎにはなりそう。

そんなわけで、非常に楽しいセッションとなりました。サイコロ・フィクションから離れ、初心者導入のために様々な部分で勝負を仕掛けてくる野心的なシステムは、既にゲームを体験しているプレイヤー層にも新鮮な楽しさを与えてくれると思います。
良いセッションでした。同卓していただいた方、ありがとうございました。