はねバド! を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
エレナはバドミントンを楽しむ綾乃を取り戻すべく、行ったり来たりのおせっかいに励む。
シャトルを追いかけない友達が、壊れてしまった少女に何が出来るのか。いったい自分は何を見つめ、何を追いかけているのか。
一少女の繊細な優しさを追う、綾乃とエレナの復帰エピ。
というわけで、凄まじく丁寧に藤沢エレナという少女を追いかけ、彼女の迷いや決断、弱さと強さを彫り込んでいくことで、彼女に繋がる綾乃や部員を照らしていくエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
共依存に踏み込みかけていた自分と綾乃を見つめ直し、バドミントンの凄さを門外漢なりに考え直し、最善の道を探す。
等身大の青春と日常をしっかり積み上げることで、繰り返される象徴に様々な意味を込めることで、エレナが歩いている当たり前の青春が、どれだけ特別なものかが判る。彼女が持つ迷いと優しさが、どれだけ尊いものかが見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
明瞭な意図に支えられた演出が、非常にナイーブな感覚をしっかり伝えてきた
今回のエピソードは”モノ”の使い方が鮮明であり、繰り返しの演出が鋭い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
入部届一つ追いかけるだけで、ストーリーラインが把握できるほどに”モノ”の記号的聖性は磨き上げられ、それを使い倒すように演出ラインが引かれていく。
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物語開始時は”エレナに押し付けられるモノ”だった入部届は、二人のすれ違いを経て”暗い場所に押し込められるモノ”となり、エレナが自分の道、綾乃の道、みんなの道を見つめ直して定めることで、最終的には”バド部と私達を繋ぐモノ”になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
二枚の紙っキレが保つ意味の変遷こそが、今回のお話の軸だ。
エレナはバドに打ち込む綾乃に、幼い頃から惹かれていた。そういう特別な”華”を、綾乃はずっと持っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
ここら辺は、第1話・第2話でなぎさを追う中で、退部組や理子に投げかけられ、ストーリーを照らした光でもある。
主役になりうる才覚は、自覚せずとも他人を引きつける誘蛾灯なのだ。
冒頭、エレナが綾乃と共有していた時間と共に、第1話ラストの裏側が描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
鏡に向かい合い、決意を新たにして、軽薄な仮面をかぶり直すエレナ。綾乃が好きな自分と、綾乃が好きなバドミントンに道を繋ぐため、強引でも嫌われても引き込む決意。
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バドミントンをやらないエレナにとって、シャトルも練習もどうでもいい。大事なのは綾乃が笑顔でいること、自分を惹きつけた輝きを取り戻すことだ。
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第2話冒頭の試合があっさり終わったのも、火を付けたエレナの決着が勝敗には無いからだ。
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しかしこの話はバドミントンの話なので、エレナの立場は弱い。どうにか出口のない繰り返しから出たいけども、才覚のない自分では綾乃を引っ張り出せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
綾乃を動かせるのは、バドミントンの神様だけだ。母やなぎさはそちら側で、綾乃はそちら側ではない。
※ 訂正
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
✕綾乃はそちら側ではない →○エレナはそちら側ではない
三回繰り返される『たこたこたこ~』、あるいは紫色の空。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
リフレインを的確に使った演出が、綾乃とエレナが閉じ込められた袋小路を、巧く魅せる。
なぎさと初めて接触した時の空は、過去と同じ色をしている。エレナの時間は簡単には動いてくれない。
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薄暗がりに閉じ込められて、なかなか出口が見えない。この状況も、前回まで語られてきたなぎさの袋小路と同じ状況だ。そしてなぎさは、コーチや理子たちの手助けで、そこから先に這い出した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
脱出口はかすかに見えるが、しかしエレナと綾乃には遠い
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闇を完全な闇の色に塗らず、どこかに出口があるのだと示す視座。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
それがとても重苦しく、簡単には抜け出せないものだと示す視座。
エレナが置かれた世界(それはつまり、エレナに依存した綾乃が置かれた世界だ)を描く筆には、二つの視座が同居している。救いはどこかにあるが、ここにはない。
だから近づき、あるいは引き寄せることが大事になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
その源泉を魅せるのが冒頭、子供時代のシーンだ。バドミントン、母、親友、楽しいという感情。
シンプルで力強い”答え”が、損なわれることなく存在していたま全き日々。損なわれることなき黄金期
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物語はこれを再獲得するまでの道のりを写していくわけだが、ここでもエレナは”バドミントンをしない側”にいる。シャトルを持たず、暗い影の中にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
そういう非特権の哀しさを忘れず、苦く塗り固めていくことで、逆にエレナの特殊性、決断の重さも見えてくる。
今回のお話はすれ違いと背中合わせが非常に多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
川沿いでなぎさとすれ違うとき。綾乃が退部を言い出したとき。出口のない闇の中で、方向を変えた時。
シャトルを持たないエレナは、問題解決の決定権を有しない。それは選手のものだ。
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部活を抜け出して見た映画は、依存と決断の物語だ。誰かを振り回し、誰かに振り回される関係の話。つまり、作中の現実を写す鏡である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
エレナはままならぬ状況、シャトルを持たない決定的な無力さを幾度も思い知らされ、それでも前に進むことをやめない。自分と綾乃の依存を見つめ、適切な距離を思う
三回繰り返される『たこたこたこ~』の呼びかけ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
一回目、カメラはエレナから入って綾乃に移り、二人をバラバラに映す。時間が進んで二回目、綾乃が映る。
そして問題解決が行われる三回目は、引きで適切な距離を獲得した”ふたり”が映る。
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それはずっと昔から続いてきて、綾乃とエレナを縛り付けている距離がどういうものか、視聴者に見せる構図だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
一番近くで見守っていたはずなに、シャトルを持たない距離感。母を失った寂しさを、そのまま親友への依存に移し替えてしまったねじれ。
麗しい幼馴染の友情は、相当に歪だ。
エレナはその暗がりに足を踏み入れつつ、背筋を伸ばして自分を見つめる。自分とつながった綾乃、綾乃と繋がった自分、ふたりと繋がった世界を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
自閉せず、より幸せな結末を柄むにはどうしたらいいか、歯を食いしばって考え、光を引き寄せてくる。凄まじく強くて偉い。
エレナの客観性は、問題解決をなぎさに預ける選択へ繋がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
シャトルを持つ側へ、バドミントンが誰よりも好きな人へ。
綾乃が誰よりも好きな自分がシャトルを握るのではなく、最適なレシーブを打つ(打てるように成長した)人へと預ける。
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それは全てをより良い方向に導く”正解”だ。だから、その直前までエレナが身をおいていた暗闇は消えて、玄関から溢れる光が彼女を包んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
しかし、人間なかなか”正解”を選べない。ほかでもない私がシャトルを握って、最高のスマッシュをキメる主役になるんだと、吠えたくなる。
エレナは携帯電話をつまらなそうに弄りつつ、なぎさがそういうエゴイズムに腰まで使って抜け出したこと、綾乃と同じ歪みを知っていること、そこから一足先に出て、引っ張り上げてくれることをしっかり見抜いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
そして、シャトルを預ける。自分よりうまく打てる人へ。
その献身は、残酷で綺麗だ。エレナは自分一人で世界が変えられないこと、黄金期が戻ってこない事実を認識している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
そこに寂しさがないわけがない。特別な人の、特別に離れない事実。コートに入っていない現実を認識するのは、暗くて寂しい。
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なぎさと綾乃の戯れを見つめるシーンで、エレナは不動だ。それは彼女がゲームをしていないから、シャトルを握らないから、自分を見つめているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
自分が主役ではない事実に、身を切り裂く痛みに耐えている真っ最中だからだ。
その上で、エレナは目の前の事実全てを飲み込んでいく。自分以外の人が綾乃を動かしていることも、綾乃が笑顔に、かつて共有した黄金の季節に帰還してる幸福も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
可能なら、全て自分がやりたかっただろう。だが、そういう万能感は偽りでしか無い。
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背丈が伸び、遊びだったバドミントンは競技になった。勝ち負けがあり、失われるものがあり、傷がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
自分が取り戻したかった綾乃の笑顔は、なぎさとラリーすることで回復する。世界はままならない。自分だけが主役じゃない。
エレナにはそういう寂しさを、笑顔で飲み込む強さがある。
あるいは、綾乃とバド部を巡る物語の中で、そういうままならなさすら愛おしく思える自分へと、背丈を伸ばす。成長痛を、笑ってごまかせるようになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
そのかけがえのない強がりが、取りこぼしてしまう欠片すら含めて。見事に切り取るドラマと映像だったように思う。
時間は戻らない。エレナだけのものだった小さな綾乃も、去っていった母も、元通りには再生しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
だが相手を変え、場所を変え、広がった世界の中で黄金の季節は再生する。誰もいなかった公園に、シャトルは星のように輝き、ラリーされる。
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そういう風に輝くものを探しながら、みんな走っていく。傷ついても、ままならなくても、闇に閉ざされたと思っても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
道の狭さと出口の遠さ、そこから溢れてくる光の強さが”みんな”のものであることを、エレナ個人をしっかり追うことで強調し、作品の主軸をどっしり見せるエピソードでした。
ホンマエレナが、歴史の教科書に載るくらい偉くて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
自分が綾乃の問題解決の主役じゃないこと、綾乃の世界に入るにはバドミントンというパスポートがいるけど持ってない事実を幾度も叩きつけられても、綾乃がバドミントンを取り戻すためにホント必死に、一歩ずつ歩いていて。
そういうありふれた惨めさに負けず、(負けちゃった結果がなぎさであり、綾乃なわけで)泥まみれで前に進めるのは、愛があるからじゃないですか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
すごく好きな人が、凄く輝いていてほしいから選んだ行動は。綺麗で痛ましい。その検診と身勝手両方しっかり見せてくれて、まさに最高でした。
エレナと綾乃の隘路をやりすぎると、話が絶えられないほどに重くなるからか、今回は原作序盤からコメディ色を引いてきて、巧い差し色に使ってました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
のり子の肉食獣(プレデタースタイル)っぷりが強化されていて、良い笑いを生んでた。清楚系ビッチマジこええ…。
芹ヶ谷さんもピンク髪浮きまくり、一人だけ濃口萌えアニメ時空から迷い込んだストレンジャーとして、いい具合の空気穴になってくれてた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
コーチへの一目惚れ要素、原作でも蒸発した描写なんでスルーするかと思ったら、気合い入れて演出してきたな…
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綾乃がグダグダ思い悩んでいる過去を、芹ヶ谷さんは自分なりに踏ん切りつけて歩き始めている。だから、向かう先には光が溢れ、遮るものはなにもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
まぁバイオハザード大作戦は、コミカルなBGMでごまかせないヤバっぷりだったが。でも母が離れてったの、アレが根本原因ってわけじゃねぇからなぁ…
そこら辺も含めて、綾野の隘路はまだまだこれから、本格的に潜る場所だ。その前哨戦…というか足場がためとして、丁寧にエレナの道を探ったのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
綾乃が深くて暗い道を潜る時、しっかり命綱を握ってくれるように。エレナの迷いは今回で断つ形だ。
これ以上無いほどにエレナの内面を掘り下げ、だからこそ関わるキャラの陰りや過去、希望も描ける。脇役の使い方、報い方。凄まじいエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
シャトルを握らなくても、綾乃をバド部に入れたのは、光を引き寄せたのはエレナだ、やっぱ。
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ラスト部のみんなが探してくる描写、なぎさが”遊び”を肯定している様子が、前回までの重苦しい空気が抜けた事実を教えてもくれた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
コーチや理子に支えられてたなぎさが、今度は部長として綾乃やエレナを支え、導く。
”部”であること、倒れ伏したままじゃない力強さが明瞭で、爽快だ。
”ふたり”の入部届が受理され、エレナはようやくシャトルを握った。綾乃はバドミントンに向き合う、第一歩を踏み出した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年7月16日
なぎさや”部”も含め、三話で全員スタートラインにつかせる所まで来ました。その段階で、すでに死ぬほど面白い。
いいアニメです、とてつもなく。来週が楽しみ。