Free!-Dive to the Future-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
行こう、自由になれる場所へ。
視界を塞ぐ陰りが、泳ぎの中で取り払われていく。水だけが伝える真実の波が、次々伝播していく。きれいだから憧れた、ヒロイズムの初動点。それを受け取るものと発するものたちが、傷ついた足で泳いでいく。
そんな感じの迷い道の終わりであり、新たな始まりのエピソード。三期を引っ張った郁弥と日和の感情グジグジに決着を付け、才覚が持つ重たさ、否応なく人を引きつけるヒロイズムの責務という、新たな問題への入口を作る話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
四人の神聖なサークルを大事にしつつ、日和へのケアが十全なのが三期っぽい。
映画ハイスピでたっぷり尺をもらい、そこに帰還さえすれば素直な自分に戻れる郁也に対し、日和は三期からのぽっと出である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
抱え込んだ心のグジグジが出口を見つけ、水が在るべき場所に流れていくためには、ちとぶ厚めな描写が必要になる。
冒頭真琴、最後に貴澄。挟み込む形でシーンがあるのは面白い
第4話で真っ向ぶつかり合い、水の中だけで通じ合う"なにか"を受け取った真琴が、日和を気にかけてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
後に郁也が、遙と泳ぐことで"なにか"を掴みわだかまり全てを乗り越える展開の前駆としても、泳ぎの特別性を接点にしていくのはいい感じだ。真琴の視野の広さ、優しさも強調されるし。
コンテ・演出を担当した藤田春香のバキッとした印象主義が今回は強く出てて、レイアウトとライティングで関係性・心理状態は色濃く描写される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
非常に京アニらしい構図の、真琴を拒絶し、踏み込まれて黙ってられない反応の活写。
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日和はいつもどおり、笑顔の仮面をかぶることで距離を開けて、自分の本音を見せない。しかし真琴に痛いところを突っ込まれて、思わず立ち上がって正対する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
それは激情の爆発なんだけども、相手と自分に素直に向き合うという意味では、ポジティブな行動でもある。相手が自分を見てくれる場合は特に
第6話ラスト、公園でのすれ違いは郁也の足腰が弱く、日和の純情とエゴイズムは居場所を見つけられなかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
二期で遙という"神様"との決着を付け、教育者への道を着実に進む真琴は、当然郁也よりも足腰が強い。日和が抱え込んだ自意識の怪物も、ちゃんとケアできる。
ここで少し殻を破ったことが、後に遙への劣等感と嫉妬を乗り越え、郁也との距離感を見つめ直すために、大事な仕事をしている気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
笑顔で表情筋が固まっちゃってる日和にとって、怒った顔、素直な自分を見せるのは結構大変だ。本泳ぎの前に、真琴で準備体操してたからこそ巧く行った気がする。
感情のドミノは日和に一旦触って、本命である郁也に戻る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
"Freeしか泳がない"というキャらの根塊を切り崩し、誰かに何かを伝えるために混メを泳ぐ。この遙の決断を、三期は『成長』と呼ぶ。
俺もそう思うけど、一期二期は絶対に言わない、視界にすら入れない変化だろうなとも思う。
遙は小学校時代の小さなサークルから出て、大人になった。クッソ面倒くさい自意識を飛び出し、誰かをよく見るようになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
そのことで手に入れた公平性、失われた湿度と体温について語り始めると長くなるし、Free受容(あるいは消費)の真ん中にいないヘテロ男性には語る資格と資質がない気もする
さておき、遙は泳ぐことで何かを教えようとする。日常的な会話コミュニケーションでは、伝わりきらない濃厚な情報。水を同じくすることでしか見えてこない景色。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
フィジカルでダイレクトなコミュニケーションは、郁也の心を動かし、真実へと一気に近づけていく。
冒頭、ポエミーな人魚姫語りから強調されている泡のノイズ。自分の存在があやふやになり、ぱちんと消えてしまう恐怖。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
自分も他人も見えていない郁也の耳には、その騒音が強く入る。窒息性の水の中、遙の力強いストロークが聞こえ、ノイズが消える。
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後に同じノイズに囲まれている日和を、郁也のリレーがすくい上げることを含め、この"音"の演出はとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
内面を一気に語らせすぎ、感情を一気に動かしすぎている感じもあるが、作画力と音響と撮影、京アニの地力で説得力を肉付けする作りは、正しい勝負の仕方だったと思う。
もともと郁也の問題は彼の心の中にあったし、一つドミノが倒れれば一気に解決する問題でもあった。自分を縛り付ける鎖は愛で出来ていたのだから、輪が一個外れれば一気に壊れる、というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
しかしその一個がなかなか壊れず、また壊すには特別な資格がいる。日和ではダメなのだ。
そんなヒロイズムの唯一性を残酷に切り取りつつ、『自分ではなかった』事実に傷つく日和を丁寧に追う。三期らしい運びだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
日和の献身は、自分こそが郁也の理解者であり、唯一のケア役だという意識に支えられていた。エゴイズムと博愛は背中合わせに癒着し、剥がされるとひどく痛む。
第1期で怜が、第二期で宗介がはじき出された、特別なサークルの唯一性。そこが特別な時間だからこそ、特別濃厚な関係が生まれ、失われたときには強く魂を損なう場所。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
それが回復される奇跡から、後乗り男は排除される。
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そんな(こう言ってよければ典型的かつ濃厚に"Free的"な)構図を、郁也の回復、それを生み出す遙の特権は再生産する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
のだがしかし、"ヒロイズム"を俎上に上げることでその先、後乗り男のケアに踏み込んでいくのが三期である。
遙には才がある。圧倒的な数字を出す、というだけでなく、一緒に泳ぐと問答無用で判ってしまう強力な説得力を、泳ぎに込めることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
反感や言葉を超えて、否応なく感動を生み出してしまう能力。それは自覚されず、だからこそ残酷で危うい。
そして無自覚だからこそ力強く、決定的に人の心を揺さぶる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
遙に自分が引きつけられたように、自分もまた日和を引きつけていたのではないか。
無自覚な引力だったとしても、人の人生を捻じ曲げてしまったのなら、それにふさわしいレスポンスを返すべきなのではないか。
真琴と旭のアシストを受けて、郁也はそこに思い至る。(遙と才覚の向き合い方は、残りの話数を使って闘う大ネタなので今回結論は出さない)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
真琴と魂の接触をした休憩所で、郁也は日和に接近し、境界線を超えていく。
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この時、先輩が後方オヤジ面してるのが好きで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
日和と郁也の閉じた関係性を大事に描きつつ、三期はその周辺の世界、おせっかいに手を差し伸べてくる他人のありがたさも、丁寧に切り取ってきた。
郁也がリレーに誘われるのは、今回が初めてではないのだ。世界は常に、手を差し伸べてきた。
それを掴むだけの足腰を、遙との混メは生み出した(あるいは思い出させた)ということだし、そうやって社会性を再獲得し、社会と手をつないでより自分らしくなっていくのが、三期(というか映画ハイスピ以降)の"Free"の是なのだろう。サークルの中で閉じず、広がり伸びていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
郁也はフリーリレーへの参加条件に日和を入れることで、日和の献身に報いた。遥に変えられた世界の中でも、日和が大事な存在であること、彼からバトンを受け取る気持ちが自分にあることを伝えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
それはとても大事なことだと思う。向き合って、思いに思いを返す。すれ違っても、もう一度やり直せる。
言葉で伝わった想いが、水の中でさらに強化される。体を動かし、水を通じてメッセージを受け取ることで、心が落ち着くべき場所を見つけていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
郁也に対してそうだったように、遥の泳ぎは日和に伝わる。そうするだけの圧力が、天才にはあるのだ。問答無用で押し流す、非言語的コミュニケーション。
その強さに甘えていたのが高校時代までの遥だとすると、大学に入ってからの遥はかなり巧く言葉を使っていると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
一番当たり前で、凡人にも使いこなせる交流の道具。『郁也を信じろ』と、はっきり言葉にできる強さが、今の遥にはある。変化は成長の現れである。
"Freeしか泳がない"のと同じように、"口下手"は遥のキャラ記号だったと思う。そこを切り崩してでも、人間として大事な部分をすくい上げ、敬意の持てる相手として主役を描きに行く変化。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
それを作品としての成長としてみるか、長所を潰した変質としてみるかは、人によるだろう。僕には望ましい。
天才の鼓動を間近で浴びて、薄暗い闇で窒息していた人魚姫達は、ようやく自分を取り戻す。そうすると自分を取り囲んでいたものもクリアに見えてきて、過去も思い出せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
日和にとって郁也との出会いが圧倒的だったのと同じように、郁也にとっても出会いは大事なものだった。
見失っていたものを再発見し、それをちゃんと共有すること。自分を決定的に変えてしまった過去に帰還することで、今現在自分を取り巻く世界を肯定すること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
後ろ向きに逆走するだけでなく、そこから歩いてきた道のりと結果をちゃんと認める形で関係がまとまったのは、とても良かった。
感情のドミノが正しく倒れていく今回、桐嶋兄弟のぎこちない距離感も回復していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
"世界"で弟と競い合う、新たな夢。それが夏也の放浪に終わりを告げ、新たな道へと進ませていくのだろう。"世界"とは異国の集合体ではなく、より広くより可能性に満ちた場所を、三期では意味する。
体育館正面のレイアウトを巧く使って、関係性の変化を見せる演出が好きだ。縦に引かれたラインは、それぞれの心の間合い。遥が倒したドミノは郁也を動かし、日和を変え、夏也を変化させていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
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決定的な心的相転移を果たした人たちが、今後どういう泳ぎを見せるのか。明るくなった世界の景色は、どんな色合いなのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
そのフォローも気になるし、『70点』の泳ぎがどう"世界"に広がるか、人を強制的に変えてしまう遥の"才"にどう向き合うかも気になる部分だ。
美しい夕日が沈み、光が新たに灯る。やっぱり特別な四人組のサークルで郁也の物語は決着するわけだが、そこからはじき出された日和は孤独ではない。貴澄くん…キミがいてくれてよかった…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
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泡と消えてしまいそうな日和のよるべなさを、炭酸ソーダに仮託するフェティシズムが良かった。第6話で印象的だった彩豊なキューブソーダを、話数またいで引き継いだ演出。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
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それは儚げで無力なものだけど、スカッと爽やかでキレイなものでもある。日和が郁也と遥に抱いていたコンプレックスは、歪みつつ昇華されて、彼が前に進んでいく力に変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
人魚姫の片思いは水泡に帰する事なく、彼女は傷んだ足での泳ぎ方を覚えた。
泡と消えてしまいそうだった自分のアイデンティティを、"泳ぎ"が持つメッセージ性の強さ、それを最大限駆動させる遥の"才"で再獲得させる、回復と成長のエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
溜め込んだ感情ドミノが一気に倒れ、郁也&日和の物語はあらかたケリが付いた印象。日和が置いてけぼりにされんで良かった…。
郁也は自分が無自覚の内に日和を変えてしまった責任に向き合い、彼の友情をちゃんと受け止めた。『過去は大事だけど、今のお前と泳ぎたいんだ!』と向き合った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
ヒロイズムは無自覚だからこそ生まれ、しかしその結末を引き受けるためには、しっかり姿勢を作らなければいけない。
己に溢れる"才"の刃を、無自覚に振り回した結果『一緒に泳ぐと不幸になる』競泳をしてきた遥。その強烈な力は、"世界"に向き合うエンジンにもなりうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月30日
Free!三期後半戦は、主役が真実自由であるために背負うべき責任、そこから見える景色を書く展開になりそうです。
どうなるものか、楽しみですね。