やがて君になる を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
カチカチ、カチカチ。止まった時計の針が進む。静かに疼く時限爆弾が、確かに炸裂の瞬間を待っている。
体育祭が終わり、夏合宿までの合間の期間。お互いいつもどおり、身勝手と無関心の凸凹は心地よく噛み合って、時は止まったままのはず。
カチカチ、カチカチ、カチカチ。
というわけで、合間の回のようでいて致命的なすれ違いが更に進行する百合テロリズムアニメ、第10話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
昼間の星のように、見えないけども確かにあるもの、確かにあるけど見えてはいけないものを抱え込む侑と、その強がりに甘える燈子。作家の目でそれを見抜くこよみ。
色んな感情と感覚が急所に接近しつつも、致命打には至らないサスペンス。何気ない日常、当たり前の青春の奥に隠された爆弾。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
神の視線で見ている視聴者だけが、侑が抱え込む感情の危うさ、それに気づかない燈子の身勝手に青ざめつつ、遠い舞台の物語には手が届かない。
真昼の星とは、侑の内側でどんどん大きくなる燈子の存在感であり、それに気づかないまま侑を使い潰す燈子の愚かさであり、その二つを特権的に見据えつつも手出しが出来ない、視聴者の立場でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
槇くんよりも侑よりも、恋の星に遠い存在。それは読者なわけだ。
こういうメタ構造を巧く織り込んで、姉への思慕と呪いと絡め”生徒会劇”にまとめているところが、上手い劇作である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
距離をおいて作家の目で見るからこそ、こよみは一切の現実を知らないまま、全て真実を射抜く。フィクションだからこそ、ノンフィクションよりも鋭く事実を捕まえる。
ここら辺の特権的で無力な存在感が、画面の外側の読者と視聴者を巧く取り込み、二重三重の不可思議な構造を生み出しているのは、なかなか面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
こよみはある意味、仲谷先生のアバターでもあるのかな、とも思う。全知であるが故に、恋の熱量には関われない、優しきデウス・エキス・マキナ。
タイトル未定の劇は、見事に真実を射抜いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
侑が勘付きつつも接触できない真昼の星。隠蔽の奥にある静止と死の匂い。百万の仮面の全てが真実であり、どれも真実ではない状況。
燈子は姉のギズモを演じ続ける自分を、当たり前の存在だと定義する。やりたいからやってるのだと。
しかしその実、姉が死んだその瞬間から時が動いていないこと、短かった髪を伸ばし姉と同化しようとしていることを、カメラは冷静に切り取る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
後ろめたいことなどないはずなのに、姉との思い出は引き出しの奥、薄暗いクローゼットの中だ。
©2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会 pic.twitter.com/Jfu9cE2qKj
真実やりたいようにやっているのなら、思い出をそこに閉じ込める必要はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
喪失を取り戻し、時間を止め続けようとする空疎が胸に痛いからこそ、燈子は侑を濫用する。身勝手に振り回し、真昼の星を胸に閉じ込めさせる。
『君でいろ』という父の願いを、押し付けがましいと反発するくせに。
自分が侑に何を強要し、何を略奪しているかに関しては、都合よく見ない。マージで最悪である。声が寿美菜子じゃなけりゃ、即TAIHOですよこの極悪百合犯罪者。そういうところが好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
侑の健気な嘘を見続けている側としては、『オメーいいかげんにしろよ』とは言いたくなるが。いいかげんにしろよ。
薄暗い矛盾を反映して、燈子の私室は小奇麗ながらどこか冷たく、それでいて生物的に不気味だ。奇っ怪な青白い光、身勝手な欲望の携帯電話を反射して、可愛いマスコットはおぞましいクリーチャーの貌を見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
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身勝手なベイビィ燈子のワガママを、小さな体に秘めたバブ味で受け止める侑の私室は、冷たいようでいてファンシーで暖かい。燈子のエイリアン宇宙船みたいな暗闇とは、正しく正反対である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
鏡写しのアンバランスは、そのまま二人の関係を反射している。https://t.co/2gDXgr8eBy
夏の雲ですら、燈子が絡むと爆心地から立ち上る噴煙のようにも見える。赤い赤い夕日に、不在の想い人を重ねるシーンの不穏さ。捨て去った過去、星に出会う前の冷淡を、清潔に見つめるシーンとは正反対だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
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第一話冒頭、冷たく無関心な離人を、中学時代の友人はよく覚えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
春が終わり夏が来て、その時代から侑が変わり果ててしまったことを。
三角関係の地獄を嘲笑う愉悦を、ノートに隠した槇くんとは、侑は違う場所に流れ着いたのだ。
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その笑顔が観客席の特権を破壊することを知っているから、槇くんは顔を隠す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
その願いが燈子との距離を壊してしまうと理解っているから、侑は白紙の短冊を持て余す。
同じ隠蔽でも、健気さと真摯さが違う。ほんっと槇くん最悪だな!
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真っ白な短冊がヨレヨレになるほど悩んで、苦しんで、それでも形にできない思い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
大好きな貴方に、やがて君になってほしい。姉の死を悼む人形ではなく、七海燈子になってほしい。だって、それは貴方自身の望みでもあるから。
人形のままでは生きていけないと、貴方という星が教えてくれたから。
七夕は”星”に願いをかける祭りだ。星に出会いつつもそれを認めたら、星が逃げてしまう侑にその短冊を用意するのは、まー最高に頭が良くて性格が悪い。悪魔か(褒め言葉)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
星なんて知らない素振りを続けなければ、燈子は去っていく。あの河原のように。https://t.co/B7stmZKGRb
あそこで突きつけられた冷淡に、”完璧な生徒会長”の仮面で遠ざけられる痛みに、侑は耐えられない。だって、好きになっちゃったんだもんな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
だから、都合よく微笑んで、燈子の求める冷淡な人形を演じる。
何も感じない人形同士、体温なんて混じり合わせず仲良くしましょう?
グラン・ギニョールの誘いはしかし、燈子の胸を焼く炎で、簡単に内破する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
むせ返るような性欲を抑え込もうとして、しかし耐えられない燈子の幼さは、肉体と体温を持った侑を、その唇を求め続ける。近づけば離れると自制しても、止められない。アナタさ~ホントさ~。
侑には我慢を強制しておいて、自分は欲望全壊大暴れ、クリームポップも無断で食べちゃうばくばくアニマル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
心を押し殺す生き方から生まれた重荷を、無意識に侑に預け、同じ生き方を強要しているところが、まさに暴君である。
”公平性”って辞書で引き直したらどうかな、頭いいんでしょ?
それでも、侑は燈子のワガママを、幼さを受け止め続ける。好きだから、危ないから、そうしているのが私らしいから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
だが時は流れ、季節は春から夏へ、体温は冷感から発熱へと移り変わる。それを止めることは、誰にも出来ないのだ。燈子は少しは我慢しろ。いや、ある意味し過ぎなんだけども。
ソフトボールは、侑の星たり得なかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
七海燈子に為れなかった少女と、熱い暑い夏で一瞬すれ違う今回は、燈子という星の特別性、残酷な不均衡を受け入れてしまう理由を、静かに際立たせる。
どれだけ不公平でも、だって君だから。恋とは、そういうものなのだろう。
しかしその危うさは、長く持つものではない。侑の押し殺した心も、燈子の仮面の下の熱量も、導火線を確実に燃やしながら、変化の中で蠢いている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
あまりにも真実を射抜きすぎている劇は、果たしてその炸裂を早めるのか、時を止める助けとなるのか。
そういう状況を静かに切り取る、熱い熱い夏の一日でした。こうして冷静に描かれると、七海燈子の最悪加減がマジ洒落になってなくてスゲェ。おめーどんだけだよマジ、って感じだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年12月9日
連鎖する青春爆弾を閉じ込めた夏合宿が、遂に始まる。『来週も燈子と一緒に、地獄に付き合ってもらう』って感じ。楽しみ