風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
そうして、僕らの旅が終わる。
たかが1/10の期間に全てを載せ、タスキを繋ぐために汗だくになりながら、僕らは思い出す。ここに至るまでの全てを。走ることで手に入れ、駆けることで失ってきたものを。
箱根駅伝、往路。僕たちの速度で。
そんな感じのレース開始、一区二区三区一気に行きますよ! なエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
繋ぐタスキはそれぞれの卒業証書とばかりに、王子が、ムサが、ジョータが、これまでの歩みを回想しつつ、自分の役目を自分らしく果たしていく。一つの物語が終わっていく寂しさと、力走が”次”に繋がる喜びの同居。
『ああ、クライマックスなのだなぁ』という感じの、本番開始である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
五区に神童という大地雷が控えているからか、レース運びは大崩れすることもなく、各員自分らしさを保って奮戦、力走の中で自分の歩みを回想する余力もあった。
そこに後悔はなく、がむしゃらな野心と穏やかな心持ちが同居している。
第8話から第10話にかけて大きな揺らぎの中にいた王子を筆頭に、いつも誠実で安定していたムサ、走りながらジョージとの離別を決意するジョータと、三人三様の物語が、それぞれ穏やかに閉じていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
この少し温度が低く落ち着いた感じが、凄くこのアニメらしいなぁと感じた。
一区を駆ける王子は、相変わらず手の位置が低い独特のフォーム。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
チームの落ちこぼれ、エキセントリック漫画少年として波風起こした時もあったが、今や彼は漫画に憧れる一読者ではなく、漫画のような力走のど真ん中にいる主人公だ。
そこにずっと憧れながら、彼はページを捲ってきた。
ナードな青年を”走り”に引き合わせたハイジは、決戦を前に王子に謝る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
そこで王子は『そんな言葉が欲しかったんじゃない』と、ハイジの謝罪を跳ね除ける…というか、上回る。想像の外側に出たかつての落第生を前に、眼を丸くした後微笑むハイジ。
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思えばこのアニメは、経験者でありモチベーターでありトレーナーでもあるハイジが強引に、ときに騙しや嘘を使ってでも10人を引っ張ることで成立していた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
タフ・ネゴシエーターとして、無敵のエースとして走ってきた彼が、しかしどうしようもなく”人間”であると見えてきたのも、王子のエピソードから
王子を強引に巻き込み、彼の人格を無視してまで走らせてきたハイジには、当然後ろめたさがあった。それを吐き出す夕日の景色に、王子はため息ではなく真っ直ぐな視線を返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
騙されて、似合わないことをした。でもそれで観えた景色、手に入れた自分なりのフォームは、悪くはなかった。
そいれはハイジの想定の外側に出た答えで、チームの牽引役でありおかーさんでもあったハイジを、ようやくチームメイトが追い抜いた瞬間なのだろうな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
膝の爆弾を抱え、王子が駆け抜けた21.3キロを、ハイジもまた走る。彼自身にも、超えるべき苦痛と物語がある。
そんな個人的な事情にハイジが飛び込むためには、”チーム”を背負える所まで各キャラクターが強くなり、”走り”が好きになる必要があった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
第一走者である王子がしっかり、そんな成長をまず見せる作りになっていたのはとても良かった。劣等生だったからこそ、伸びしろは鮮明だよなぁ…。
王子はヘロヘロになり、視線が下る。持ち前のネガティブが顔を出して、ゴール直前で”走り”に迷いが出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
その時、届く声。顔を上げれば、広い世界と明るい光、自分を待つ仲間がそこにいる。それが、漫画オタクが嫌いな”走り”で手に入れたものだ。
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ずっと王子の視線は下向きで、孤独だと思い込んだまま走ってきた。顔を上げず、背筋を曲げて漫画ばかりに目を向けてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
でもそんな自分の速度を曲げないまま、王子は嫌々走り、力をつけた。背筋を伸ばして、期待に答え、気恥ずかしい友情をちゃんと受け止める足腰を鍛え上げた。
最後の予選回で、王子に前を向かせたモノがもう一度、彼の背中を伸ばす。あの時手に宿った思いは、今はタスキになって王子自身が背負い、ムサに預ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
それを成し遂げるだけの力を、王子はちゃんと手に入れたのだ。やっぱ王子は”強い”なぁ…背負ってる物語が太い。https://t.co/UP88jvYl3V
漫画オタクがスポーツバカになったわけではなく、相変わらず”走り”も暑苦しい友情も苦手なままなのが好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
かつて読者として憧れたヒーローたちの生き方は、積み上げた鍛錬と同じくらい彼の支えになってくれている。フィクションは、人を走らせる燃料になるのだ。わりとモロに元ネタでたなぁ…。
周囲に流されず、僕たちのペースで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
王子の鉄面皮は緊張を跳ね除け、権太坂を走りきらせる。望まれた仕事を果たしたチームメイトに、ハイジは『すまなかった』ではなく『ありがとう』という。漫画の名シーンのように、王子が望んだままに。ええ話…ホンマええ話や…。
ここで『ありがとう』と言い直したことで、ハイジもまた過去の自分…チームメイトに本物の信頼を置けなかった自分を乗り越えられたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
そうやって背中を追い、追い越されてまた追いつく。箱根が終わっても、成長と友情と青春は続く。そんな余韻もある一区だった。
対してエース区間を背負うムサは、これまでどおりの実力と誠実さを発揮し、安定感のある走りを見せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
風呂の中でハイジから受け取った言葉を思い出し、オーバーヒートも自分で修正。最後まで立派な男であった…。
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給水のペットボトルを投げ捨てず、ちゃんと手渡しで返す。細かい仕草にキャラの人格がにじむのは、何も走りのフォームだけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
ここら辺の把握と表現がこのアニメずっと的確で、群像劇を力強く回すエンジンになってたと思う。まぁムサは手渡すよね。描写力と分解能に、信頼しかねぇ。
ムサの力走に並走する形で、イワンキ君も彼の物語を走っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
予選会で脱落した選手とかもそうだけども、メインカメラが切り取らない人々にも当然彼らなりの物語があって、そこには敬意を払うべきだという姿勢が、僕はとても好きだ。
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藤岡さんも背負う、エースの重責。『勝って当たり前』という周囲の視線と戦いながら、イワンキは自分の走りを果たす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
区間賞ならずとも、記録は出ずとも、それはチームに期待される役割を立派に果たす”強い”走りだったのだろう。
彼のお辞儀と、それに涙する仲間の描写が細やかに刺さる。
何しろ全てのクライマックス、カメラはアオタケに思いっきり寄せて話の全部を作れば良い。最後の晴れ舞台とばかりに、走者たちは内面をみっしりモノローグする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
それと同時に、俯瞰で風景を切り取り、沿道の応援、様々な支えもカメラは切り取っていく
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そういう視力の良さ、クローズドな熱量と同時に風通しの良い広い世界を大事にする姿勢は、このアニメがずっと走ってきた道であり、独特の強みだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
僕らが2クール見守ってきたアオタケの物語は、当然重たく尊い。それと同じものが百億のランナー、全てにあるのだと認めること。
それは主役の背負う重たさ、熱量を減じず、逆に大きく空いた窓から強く風が吹き込んで、物語を加速させてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
二区でのイワンキの描写、そこに先んじる第16話でのカケルとの交流は、そんな立脚点をしっかり強調してくれた。爽やかで、力強い。
そして第三区、双子の片割れである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
第2OPで示唆していたとおり、いつでも一緒だった幼年期を静かに終わらせて、お互いの尊厳を大事に別々の道を進んでいく決意を、ジョータは力走の中で固めていく。https://t.co/NxVHzO8wbo
これも第2区とは違う形での公平性、風通しの良さへの視線かな、とも思う。同時にここまでずっとコンビで描かれてきたので、ジョータの巣立ちはある意味唐突というか、新しい感じもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
色んなモノが入り混じりながら、状況は前に、前に進んでで行く。それは孤独な歩みではない。
例えばキングが、後輩の震える足にちゃんと目線を向けれるようになったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
例えばカケルの天才的な走りを、双子がずっと追いかけていた様子だったり。
彼らは常にチームとして、お互いに影響されながら変化してきた。
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そんな関係性の網目の先端に、葉菜ちゃんとの甘酸っぱい恋があるのかもしれない。オレンジのマフラーが可愛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
土壇場のこの状況で、今更恋に気づく所が双子っぽいなぁ、と思う。タスキと一緒に、『好き』という爆弾も手渡しちゃうところとか。ジョージも、急にそんな事言われても困るよねぇ…。
四区、ジョージは兄から手渡された戸惑いを背負って走る。その先には、ズタボロになった神童がいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
ムサ相手に死亡フラグめいた言葉を口にした時、皆が『そういうの良いからッ!』とツッコんだだろう。僕もそうだ。次回予告でムサ、男泣きに泣いてたな…。
そんな感じで、明るく楽しいハプニングも、あからさまにヤバい波乱も匂わせつつ、四区、五区へと繋がる序盤戦でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
箱根本番、全ての総決算ということで、各キャラクターの到達点を静かに、しかし熱く描き、クライマックス感がしっかりありました。みんな成長した…。
アニメ版はカケルとハイジにフォーカスしつつも、”10人”全員が主役の群像劇としての色彩が濃くなるよう、的確に再構築されてきました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
一人ひとり違った個性と思いを載せて、タスキを繋いで走る。アオタケのラストランに感慨が深くなるのであれば、それはやはり群像を描くのに成功した結果でしょう。
あと景色がむっちゃ地元で『あ、あのタックルベリー…』『あ、あのデニーズ…高浜台の前の…』っていう驚きが、あらゆるシーンに満ちてたのはデカかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
毎年おなじみの風景っつーより、自分の足で歩いて見知った場所が”アニメ”になってるのは、やっぱ特別な感じしますね。
そんな神奈川県民の感慨はさておき、往路はまだ続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年2月27日
チームのために、自分のために、何かを犠牲にしてきた歩みは、痛みを孕みつつも止まることはない。
ジョージの四区、神童の五区。それぞれの箱根に何を込め、何を思うか。クライマックスはこれから、非常に楽しみですね。