イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

わんだふるぷりきゅあ:第13話『キュアニャミーを探せ! 』感想

 拳を握らぬプリキュアが、解り合う手段はあくまで対話!
 じっくりやるぜ相互理解! 麗しき新キュアの謎を追う、わんぷり第13話である。

 ドヤ顔でアホなことぶっこきまくるこむぎが大変可愛い、ギャグテイストの濃いお話であったが、まゆがニャミーに惹かれていく様子、それ故街に迫る危うい影に近づいていく姿も、大変いい感じに描かれていた。
 人間ドラマも関係構築も、どっしり構え時間を使ってやるのがわんぷりスタイルだと思うが、未だプリキュアにならぬまゆだからこそ描ける非日常への接近、得体のしれない恐怖とそれを乗り越えて惹かれる運命の引力も、ゆったり分厚く積み上げてくれる。
 変身はおろかプリキュアの存在すら良く知らない、一般人の時間を長く取れるからこそ、普通人から見たガルガルの脅威とか、それから守ってくれる美しき戦士の頼もしさとか、現代伝奇の美味しいところをガッツリ煮出せていて、大変良かった。
 まゆがいることで、日常の側から見たプリキュアがどういう存在かが丁寧に描かれて、結構すぐさま変身して闘うのが当たり前になりがちだった”プリキュア”の、描かれざる魅力がいい具合に出てきてるかなー、って感じ。
 描かれてみると確かに、プリキュアって『街を守るために異能を振るう秘密の戦士』なわけで、このすこし陰ったヒロイズムに光を当てられるのは、夜の動物たる猫だからこそ……かなぁ?

 

 守るために爪を振るうエゴイズムを一切躊躇わない、ニャミーの戦士としての在り方がいいスパイスになって、ガルガルの脅威もより際立っている。
 ヤバさがひしひし感じられるからこそ、危険と知りつつそこに踏み入ってしまう、見知らぬ少女へのまゆの思いもしっかり解る。
 猫の姿だろうが、人間の姿だろうが、猫屋敷の女たちは運命に導かれお互いを強く結びつけ合うという、極めてロマンティックな関係性が大変いい感じであるが、世界で唯一大切な少女を守るために戦ってるのに、その勇姿故に自分がまゆを危険に引き寄せてしまうジレンマは、けっこうユキの負担になっていそうだ。
 思いつきにすーぐ飛びつく”妹”との日々を、心から楽しみつつ振り回され導いていくいろはちゃんのスタイルに対し、ユキは危なっかしいまゆを影から見守り、ツンツンした対応の奥に燃え盛る情熱を込めて、黙って正しいと思ったことを貫く。
 同じ”姉”でも向き合い方は大きく違い、それぞれの難しさと尊さがあるわけだが、自分が美少女に変身して街を(つうかまゆを)脅かす脅威と戦っていると、告げられないためらいもまた大きい。
 ここら辺は、悟くん含めてなんもかんもオープンな犬飼家と、面白い対比である。

 前回の接触を受けて、なかなか本心を曝け出さないニャミーも少し変化があったのか、爪を振るうのではなく軽やかに攻撃を避けて、倒すより守るメインで闘うようになっていたのは、嬉しい描写だった。
 自分たちと道が違う相手とでも、というかだからこそ、相手を知ろうとギューギュー抱きつき、仲良くなろうと言葉を使うワンダフルたちの甘っちょろさが、俺は凄く好きだ。
 ハリネズミガルガルとのバトルには色んなアイデアが盛り込まれていて、バリアでポンポンキャッチボールしたり、木を利用して突進を止めたり、単純に殴り飛ばすのとはまたちょっと違う苦労を、戦わないプリキュアは毎回頑張っている。
 そんなワンダフルたちの優しさを、何も言わないけども無下には扱わず、譲れない自分のスタイルと照らし合わせつつ、譲歩できる間合いをニャミーも探ってくれている感じが、今回のアクションにはあった。

 ニャミーが体現する苛烈で狭い優しさと強さも、当然間違いではなく。
 愛ゆえに闘う心根は同じなのに、だからこそすれ違うお互いの在り方が、どうすれば対話と融和に近づいていけるのか。
 出会い、名前を知り、お互いを分かりあって思いをぶつけ合うという、コミュニケーションの階段を一歩一歩丁寧に進んでいくのも、ゆったりめのテンポを選んでいるわんぷり特有の見せ方かと思う。
 すぐさま全部が通じ合うわけではなく、ともすれば敵対してしまいそうな差異が確かにあった上で、歩み寄る姿勢を手渡しだんだん距離が縮まっていく感じが、孤高で気まぐれで愛が重いネコ科ヒロインのキャラを尊重しながら、定められた決着に近づいている感じがあって良い。
 ニャミーのツンと一人で立ってる感じ、とにかくフレンディな犬飼家だけでは描けない多様さを、作品に与えてくてる感じで好きなんだよな……。
 だから、大事に大事に扱ってくれているのは嬉しい限りだ。

 

 そんなニャミーに近づくべく、いつものチームがおバカな末っ子に振り回されつつ、動物いっぱいな街を走り回るパートも大変良かった。
 気づけば準レギュラーとして存在感バリバリ振りまいてる、三匹のマダムの出番とか、愉快なアニマルタウンという舞台がどんな街なのか、ここもゆっくり積み上げてくれている感じがある。
 キュアホリックが街に来て、開店から馴染むまでをかなりの話数使ってやってくれていることで、動物いっぱいファンタジックな魅力もありつつ、いい感じの実在感を宿した素敵な街として、アニマルタウンが描かれてる印象。
 ここら辺の生っぽい手応え、結構好きだ。

 今週は勢いのあるギャグがマジキレてて、大変良かった。
 まゆを主役にした現代伝奇ロマンの陰りを、より際立たせる意味でも明るく楽しいコメディが元気なのは、メリハリ付いてグッドだと思う。
 なによりこむぎが思う存分アホで、思いつきのまんまとにかく突っ走り、それをいろはちゃんと悟くんがニコニコしながら自由にさせている所が、とても素晴らしかった。
 世の中のこと何も知らない、だからこそ純粋で力強い存在が溢れさせるアイデアを、頭ごなしに否定するより一緒に笑って走ったほうが、多分世界は楽しい。
 そういう当たり前の大事な真理を、こむぎが大事にされている様子はしっかり描いてくれていて、そういうモン一生見てたい人間としては本当にありがたい。
 コミカルなシーンが普通に面白くて、『明るくて楽しいのって……良いことだなッ!』と、改めて当然だけども時折忘れる真実を思い出させてくれるの、わんぷり偉いなぁって思う沢山のポイントの一つだ。

 

 というわけで、まだまだガッチリ握手とはいかずとも、ちょっと謎めいた超戦士との距離が縮まる回でした。
 自分を突き動かす愛との向き合い方、戦い方が異なるニャミーと、こうして話数をかけて仲間になっていく様子を積み上げていくのは、人間がコミュニケーションを通じてどんな尊いものを生み出せるのか、信じて話を作っている感じがして好きだ。
 ”プリキュア”がそこを諦めちまったら、あんまりにも哀しいもんな……。

 危なかろうが謎だろうが、瞳の奥に焼き付いた美しい白影が猫屋敷まゆから離れない。
 その張本人が目の前にいることを、未だ非日常から遠い場所にいるまゆは知り得ないし、ユキの瞳にはいつだって一番大きく、自分が写っている事実もまだ届かない。
 美しくも切ないすれ違いを丁寧に膨らましている間に、どんっっどん猫屋敷ユキがパートナーに向ける感情のデカさが暴かれていく中、揺れる思いは一体どこへと流れ着くのか。
 次回、人見知り少女初めてのお泊り……大変楽しみです!