キャロル&チューズデイを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
下町のピザ屋で、政治家の冷たい豪邸で、DJキングの私宅で。
様々な場所で踊る火星の音楽、人々の人生。
出会いが曲を生み出し、音楽が人を繋ぐ。
上手く繋がることばかりじゃないけど、時には炎と雨も降り注ぐけど。
私達は元気です!
そんな感じの第三話、ややトーンと輝きをトラックダウンして、落ち着いたエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
キャロチューの仲良しキャッキャ力はそのままに、火星生活の細かいところを掘ったり、小さな挫折を埋め込んだり、陰りの奥の輝きを見せたり。いい具合に、今まで書いてないところを描くエピソード。
お話はトンチキマネジ・ガスと出会った二人の運命が、石のように転がっていく面白さを軸に、タオ&アンジェラ(&ママ)の冷たく渋い…けど、奇妙な温もりも見えてきた生活とか、、色々見せるエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
キラキラ力をちょっと落とした分、今までより影が見えやすくなったかな?
地味なところで生活感を出すのがやっぱ好きで、火星ではレストランと農業が一体化してるとか、『ハーシェルのことわざ!』とか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
火星移植から50年、恐らくハーシェルクレーター(長径300km)が一大都市圏になってて、独特の言語文化が蓄積されるくらいにはなっていると、この一言から判る。
更に言えば、作詞担当のチューズデイは言葉に強い興味があって、しっかり覚えているから『ビーバーは河に入らないと掴まえられない』と、とっさに出てくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
橋を渡り、ずぶ濡れになるセレブ訪問とも繋がっていて、とても好きな言い回しだ。
©ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会 pic.twitter.com/CZDGg3G332
サブタイトルの”Fire and Rain”が、怒りの歌詞ノート着火とスプリンクラーで回収されるとは思わなかったが、キャロルのトンパチな部分も垣間見えて、良い運び方だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
原曲は親友の自死を歌った重たい話だが、エピソードは挫折も明るく楽しく、陽性にすすめていく。
キャロチューが既にすっかりマブダチで、お互いの呼吸がピッタリ重なり、シンクロしている描写が多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
一緒の食事を食べて、同じ風景を見て、ビートに乗って曲を作る。魂の根っこがもう繋がってて、すっかり信頼しきっている。
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今回食事(作画にシズル感があって、美味しそうに見えるのがとても良かった)が信頼のフェティッシュとして多用されていて、個人的な興味にガッチリ噛み合った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
固めの盃代わりに、産地直送マルガリータピザ。世慣れたキャロルは軽い警戒を示すけど、胡散臭いマネジと同じ皿から飯を食う。
ガスも出会っちまった若造二人に期待をかけ、負け犬人生を詰め込んだグラスとおさらばする。アルコールを抜いて、本気で二人の面倒をみる覚悟。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
それはあくまでコミカルな描写だが、芯と体温があるいい表現である。メシを上手く描くと、やっぱ仮想世界に脂が乗ってくるね。
キャロチュー&ガスの楽しい食卓と対比的に、チューズデイ実家の冷たい状況も、食事で見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
明るい外側に比して、薄暗い家の中の陰り。名前も紹介されず、果実を貪る色男。母の背に回された誘惑の腕。
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豪邸から飛び出した妹が、色々楽しい経験を積んでいるのに対し、檻に閉じ込められたままの鬼いちゃっんは世知辛い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
より深い闇に沈んでいくヴァレリーの”性”は生臭く、今回は少しセクシャルなテイストも随所で顔を見せる。
『足のマッサージを要求されても、絶対断れ』かぁ…。
例えばガラスの向こう側に配置された、アンジェラの水着。あるいはアーティガンの明るい退廃。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
世界に満ちたセックスに、キャロチューは健全に距離を置く。そういうアピールから保護されて、音楽一本で勝負する、出来る特権を持っている。
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アブない関係を予期させつつも、アーティガンは性より音楽に夢中のアーティストだ。奇人だが卑劣漢ではなく、不躾な若造をざっくり跳ね除ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
主役を認めない世間代表だが、テキトーなコネで動かされない道理を背負い、トンチキながら魅力がある。面白いキャラだな…マモは奇人やると良いなやっぱ。
清廉に音楽一本なキャロチューに対し、アンジェラは常にカメラがつきまとい、必要とされる媚態を望まず振りまく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
カメラの前の彼女は、バチッとポーズを決め、関節をやや内向きに意識して入れる。大衆が無意識に求め、消費する”女”を演じる
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撮影され、編集され、消費される”プライベート・カット”
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
素の自分で一切勝負出来ない、ティーンモデルの媚態に悲しさがにじむのは、オッサンの勝手な共感か。
『全てが退屈』と吐き捨てていた彼女は、しかしパブリックイメージ(あるいは商品価値)を維持するために、ハッピーな自分を演じ続ける。
アンジェラを描く時、シャープな斜めの線が明暗を分けるレイアウトが多用されているのは、とても気になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
スパッと割り切った光と闇。作り上げた”プライベート”と、タオの前で見せる蓮っ葉な表情。ハードトレーニングに垂れる文句。https://t.co/pDuKxQbLGe
大衆の前で幸福と媚態を演じているときより、冷たいタオとギャーギャー言い合ってるほうが、むしろアンジェラは”本当の自分”なのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
ママの期待を背負い、差し伸べられた手を跳ね除けられない優しさが、薄暗い車中ににじむ。
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自分を酷使するタオへの不平を、自分を見てと年相応に訴えかけるアンジェラを、ママは見ない。遠く昔に失ってしまった栄光、娘に待ち構える子役の宿命に、目を奪われている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
だが、生身の娘に優しく触れる気持ちを、ママはちゃんと持ってもいる。火星でも、家族の肖像は複雑怪奇だ。
トンチキ極まるキャロチューの”ボイトレ”の後に、タオが機械で追い込むアンジェラの”ボイトレ”が重なる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
二人と一人の珍道中は明るく楽しそうで、一人と一人の冷たい交流はまだ発火を知らない。しかし、種火は小さく積み重なっている…かな?
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”陽”のキャロチューはサクセスも結構順調だし、関係性もぐんぐん縮まって、シンクロする多幸感でみっしり満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
それは最高に良いのだが、やはりそれだけでは立体感が薄くなる。タオとアンジェラが薄暗い部分を担当してくれるから、お話のバランスが取れているのは間違いなかろう。
アンジェラは『アタシを見なさいよ!』とタオに怒り、タオはアンジェラが定めた限界を奇っ怪な拷問具で突破させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
ギクシャク薄暗く噛み合わないように見えて、一人と一人がジワジワ繋がっていく様子も、サブカメラでちゃんと捉えられている。それがチャーミングなのが好きだ。
”二人”の方はもう一生キャッキャしてて、流転する運命の中で出会えた喜びに満ちた”Round & Laundry”作成のモンタージュは、脳髄をハードにぶん殴ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
パパパっとセリフ無し、テンポよく時間を飛ばして状況を描く演出が。無条件に好き。
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お嬢様時代は入ったこともなかっただろう、コインランドリー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
見ず知らずのオジサンを間に挟んで、生まれるヴァイブス。
アンジェラがカメラを拒絶したガラスは、ここでは扉であって開け放たれ、交流可能な可能性に満ちている。
あくまでオープン、オジサンもノリノリだ。こういう可愛げが良いのよ。
コインランドリーでのキックスタートでは、回る洗濯機に自分を重ね詩を見つけたチューズデイに、キャロルが音を付けていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
キラキラな日常の中で、キャロルはキックボードを教え、チューズデイは作詞を教える。お互いを混ぜ合わせ、回る運命
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時計の針、換気扇、ジャグリング、リサイクル。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
世界に満ちた”回るもの”を数えていく映像は”My Favorite Things”っぽい素朴な幸福があって、とても良かった。
世界は楽しいことに満ちている。それは薄暗い檻から飛び出したチューズデイの視界だ
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回る世界の中で、新しく出会ったものと混ざる。新しい自分を見つけていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
先週…というかピザ屋での警戒まで、現実的な自己防衛はキャロルの仕事だった。譲れないものを、戦って守るタフさは、可愛いお嬢にはない…はずだった。https://t.co/8AprTQXjM9
だが大物に理不尽(なんだが、社会的にはある意味当然)に拒絶され、ソファーを回り込んで抗議の炎をともしたのは、弱いはずのチューズデイの方だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
それは秘められていた情熱。新しい世界に飛び出し、周り混ざり合って見つけた新しい自分
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多分チューズデイは元からこういう子で、しかし”家”に閉じ込められた時は表に出なかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
ノートに書き溜めたまま、音を待っていた詩のように、流転する世界…ガラスの向こう側に飛び出したからこそ出会えた奇跡。
それは、少女と音楽のの顔をしているのだ。
二人は橋の上での出会い、心と心が繋がってしまう奇跡を理屈ではなく魂で感じ取っていて、凄くあけすけで距離が近い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
失敗に終わった挑戦も、仕草を重ねながら共有して、笑って話せる。そんな若い明るさから、オジサンはちと遠い。
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一緒に買った勝負服が、キャロルはちょっとワイルドさを抑えて甘めになってて、チューズデイは過剰なお嬢力が削られたチョイスなところ、ホント好きです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
お互いのファッションを、自分を譲らないまま取り入れている感じ。こういう部分で二人の重なる鼓動を見せる。”絵”の表現を怠けない。
仕草がシンクロする描写が多いのも、そんな若い二人からガスがちょっと間合いをとって、でも真摯に可能性を感じて身を乗り出しているのも、ちゃんと見て取れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
明瞭な友情サクセス物語が展開しつつも、言葉にしない部分の奥行きが色々見て取れるのは、響きが豊かでグッドだ。
マネジとして(一応)現場に立ったガスに対し、ロディはあくまで安全圏というか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
ちょっと距離がある感じなのを、レイアウトも抜け目なく抜いてくる。ピザ屋の段階で、ロディだけ間に柱が入ったり、斜に座ったりすんのよね。
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でもマルガリータを食べ終わる頃には、しっかり正対するようにもなっている。テキトーながら大物と渡りを作ってはくれたし、『二人は僕のことどう言ってました!?』と興味津々でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
この距離感を万事悟った感じの、”今どきの若者IN火星”がどう詰めて、カンパニーになっていくか。
ここも楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
色んな場所、色んな物語の種子に細かくクローズアップしつつ、画面にしっかり情報と感情を込めてくれてるんで、あんま混乱しないのよね。
各物語の繋がりもなんとなくながらしっかり判るし。
家に取り残されたお兄ちゃんとか、アンジェラとママの車中描写とかね。
名前も出ない人含め、色んな人が生きている火星。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
様々な人を巻き込みながら、少女たちの音楽は踊り、人生は転がっていく。そこには複雑な味わいと色彩があって、光もあれば陰りもある。
今は主にアンジェラが背負う重たい陰りを、ピカピカハッピーなキャロチューも背負うのだろうか?
魂の双子のように強く結びつき、同じ仕草を鏡合わせに混ぜ合わせる二人が、一度分断されることもあるのだろう。このままキャッキャしてるだけじゃ、ドラマ弱いからな!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
いや、一生キャッキャしてくれてていいけどね…とにかく出会った奇跡、生まれる多幸感重点で進んでるよね、キャロチューの描写。
そこにクスブリ負け犬オジサンとか、クールなAIキッドとかがどう混ぜ合っていくかも含めて、非常に楽しい回でした。降り注いだ炎と雨は、大物の心に何かを刻んだのかな?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
全ッ然混ざり合わないタオ&アンジェラの物語も、妙に手触りがあって凄く良いしね。こっちの本格始動も楽しみ。来週が待てねぇ!
余談
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年4月25日
コーヒーカップの中で混ざり合う白と黒。そこに二人の人種を見るのは、まぁ過剰な読みだと思う。
火星がどういう人種意識で社会構成してるか、まだ描写されていないしね。あんま地球でのルーツに拘んない社会なのかもしれんし。
©ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会 pic.twitter.com/Mj4QECjYcO