ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
荒野は雷の密室、亡霊が彷徨い謀略が蠢く。
過去の無念を燃やすべく、第5次聖杯戦争参加に執念を見せるエルメロイ二世。降霊科の重鎮からの依頼を受け、工房の暴走と父の死に切り込んでいく。
しかしそこには、数多の思惑が…。
という感じの、事件簿アニメ初! 前後編IN荒野! なエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
主人公の起源を見せた第一話、ミステリとしての基本構造を知らしめた第二話、学園モノとしての形を描いた第三話に続き、時計塔の複雑怪奇な政治力学をどっしり見せるエピソードである。ふ、ふくざつ…(情報過多死)。
回をまたぐことで視聴者が一週間、ミステリを考える時間が生まれ、『作者からの挑戦』的な構造ともなった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
物語の形をカッチリ作り込んでいるところは、登場人物も背景世界も複雑なこのお話を支える大事な所だと思う。
解くべきパズルも、魔法絡みの扱いが難しいやつだしなぁ…。
何でもありの魔法世界でミステリを成立させるべく、例えば降霊による一発クリアは封じられ、隠蔽工作が嫌疑を掻き立てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
法制科の蛇女も顔を見せたわけで、日常世界から隔離された時計塔独自の秩序が、おぼろげながらスケッチできる感じ科。
前回は現代世界と否応なく接続された神秘が、時代遅れに足払いを食らう展開であったけども、今回は結界バリバリ、魔眼も水銀生命も堂々公開の魔術領域である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
人間の法とか倫理とか知ったことか、霊脈も妖精も見れないやつがギャーギャー言うんじゃない! とばかりに、独自の世界が暴走する。
雷と地下墳墓。構成要素が前回と似ていて、しかし舞台は大都会ロンドン地下と、遥かなる荒野。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
対比でもって現代魔術科の見据える世界と、旧体制が見つめる世界の差異が浮き上がってくるのは、なかなか面白い。
何が正しいかは、法制科が恣意的に決める。それって法なのか…?
今回のお話は複数の利害関係が、歴史ある時計塔の腐った因習に絡みつきながら展開する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
エルメロイ二世はイスカンダルへの慕情を諦めきれず、ウェルズの依頼を受ける。ライネスとブラム、化野とワレッタもそれぞれ接触を果たす。
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三者三様の向き合い方に、それぞれの人品が見えていい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
暖かな紅茶を挟み、一応人間の領域で正面から向き合う二世。
宝石による結界に一般社会を隔離し、片側だけが酒を継ぐライネス。
サウナの中で裸の付き合い、お互い酌を組み合わす…が、複雑な利害を思わせる化野の間合い。
一見気さくな関係に見えて、化野とワレッタの間にはなにか歪んだものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
グラス越しの歪んだ視界を、我こそが自在に操るとうそぶく法制科の傲慢。罪過と劫罰を自在に定義し、縛り付ける官吏の暴政。
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見る、というのは今回の大きなテーマで、ライネスは霊脈、ウェルズは妖精をそれぞれの魔眼で見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
才能に欠ける二世は、義妹がビシビシ言わされる狂った霊脈も、儚げに何かを訴える養成も見えやしない。魔術的世界、魔術的政治のアウトサイダーなのだ。
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ナチュラルに異界が見えてしまうものと、生まれつきそれを見る”眼”を持たないもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
二世はある意味、時計塔の政治力学や秘められた魔術的真理を才覚なしで見通す補助具として、智慧を必死に収集している。
それが講師としての彼の優秀さ、魔術師としての無能を支えてもいる。
僕ら凡人(この文章読んでる方に、時計塔関係者がおられたら申し訳ないけど)と二世の視界はよく似ていて、動機もするりと納得できる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
冒頭グレイが覗き込む、”僕”の世界。愛しい憧れの残滓を撫でる指の演技は、艶かしく少し寂しい。作画力を活かした良い芝居だった。
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二世は箱に封じた願いを叶えるべく、第5次聖杯戦争を目指す。それは薄暗い闇に身を投げることであり、そのためなら政治的取引にも応じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
のだが、先程見たように二世はあくまで、人間として魔術師と向き合う。義妹が生粋の魔術師として、背中合わせの距離感を乗りこなしているのとは対照的だ。
”義”とはいえ兄妹の間柄で、魔術刻印を継続するためだけに血を繋ぐ。褥を共にする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
魔術世界では当たり前で、人間社会では狂いきったライネスの誘惑は、しかしあくまで遊びで終わる。
兄妹仲良く、ナイトキャップでグースカも出来る。微笑ましい。
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能力的にも人格的にも”人間的”な二世を鏡に、ライネスの二面性が反射されているのはとても面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
幼い外見と、危険な蠱惑。優れた術才、政治を泳ぐ才覚からときおり漏れる、妙に人情味のある表情と可愛げ。
それが同居している矛盾が、彼女の魅力になっている。グレイトは違った意味で、良いヒロイン
二面性は二世も同じで、窓辺に移ったウェイバー・ベルベットの残影を、彼の瞳はたしかに捉える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
それは魔術など関係ない、人がみな囚われる”過去”という魔物の影で。同時に、そんな”子供”が生き残っているからこそ、二世は良い”大人”、良い”教師”でいられもする。
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あの橋で一応の決着を迎え、しかし未だなお燻る未練。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
それが彼を荒野にいざない、事件と出会わせる。
自分の願いのために全てを捨て去るのが魔術の本道であるとすれば、全てを押し流して事件を制圧すればいい。
しかし魔眼も才能も持たぬ二世は、推理と教育という搦め手で魔術世界に挑むしか無い。
彼がバトルの才覚に満ち溢れた、主役らしい主役であったのなら。かつての自分のように強引に参加権をもぎ取り、超アクションの末に聖杯にたどり着く道もあるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
しかしそうやってルールを踏み外した結果、ケイネス先生は死に、その始末もあって教室を引き継ぐことになった。
だから子供に戻るわけには行かない。時計塔の政治の檻の中で、既存のルールを尊重しながら少しずつ、願いを手繰り寄せるしか無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
しかしそれでも、あの時の出会いと別れが疼く。もう一度、闘いの中で己と、己の魂に焼き付いた英霊の誉れを証明したい。ガキっぽい熱量が、未だ燃えている。
その不安定な感じが、やはりこのお話の支柱である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
大人と子供、魔術師と人間。分割されたニ極が拮抗点を見つけ、より善い真実の結論にたどり着くまでが魔術とミステリ、そしてジュブナイルの本道だとすれば、このお話はそういう道をしっかり、フラフラ歩いているのだろう。
凡人にすら見て取れる、焼け焦げた雲と雷鳴の気配。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
超常的密室を荒野の屋敷に形成する落雷に焼かれ、死体がもう一つ増えたところで次回に続く、である。
ギスギス極まる政治的綱引きの果て、遺産に集まった魔術師達。死霊術師の傭兵、物言わぬ妖精。謎解きの材料は多い
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不安を掻き立てる雲と雷鳴の美術は、とても良かった。イギリスの色んな場所、色んな風景が見れるのは旅番組的な楽しさがあり、このお話の数ある魅力の一つだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
結構色んな所に足伸ばすのが、話も場面も停滞せずゴロゴロ転がるテンポに繋がっていて、新鮮な味わいを生んでもいるかな。
そして色んなヒント。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
グラムサイトを手に入れたものは、もう一つの世界に引き寄せられ、この世から消えるという。ウィルズを誘うものは何か。妖精は何をいいたいのか。
あとお久しぶりの獅子劫さんね。クッソみたいな政治力学で息苦しかったから、破天荒なオッサンが顔出してくれて楽しかった。
魔術師たちは荒野を自分に都合よく、工房に変えてしまったけども。巨大な地下墳墓には古い歴史が刻まれ、別の物語があるはずだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
その無言の訴えをどう聞くかが、ミステリ解決の大事になる…のかなぁ? メタ読み以外の解法、どうも苦手だ(ミステリ読者の資格なしマン)
コドリントン家の遺産騒動にしても、ライネスたんの妖しい誘惑にしても。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
魔術師の”家庭”がかなり壊れていると見せたところで、”家”が絶えてなお娘のために奇跡を望んだ獅子劫さんが顔見せるのは、なかなか面白い文脈構築だった。
真人間は基本、アウトサイダーしかいないんだよなぁ時計塔…。
ファンの郷愁を煽るためだけに人物配置するとも思えないので、獅子劫さんの特殊性がなんらか、物語に噛んでくるとは思うのだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
悪霊殺しのスペシャリストたるグレイと、死霊魔術の達人たる獅子劫さんが肩並べると、来週あるだろうアクションがどんな風に弾むか、期待も高まるわね。
という感じの、荒野の出題編でした。ほんっと時計塔の政治は陰湿かつ複雑で、理解するのに時間がかかり、肩もこる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日
そんな檻に取り囲まれた中で、どう子供の自分を開放し、大人の自分を肯定するかが二世のクエストなんだろうから、しっかり描く必要はあるわよね。
ここからどういう解答が出てきて、事件が解決していくか。それと同じくらい、”家”に絡みつく因業とか、時計塔の妖怪共の差し合いとか、謎解きの過程で更に見えてきそうで、色々楽しみですね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年7月27日