キャロル&チューズデイを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
花の盛りは短くて、夢は骨へと枯れ果てる。
かつて一世を風靡した歌姫も、頂上から滑り落ち帰る場所を失っていた。
かつてその歌に震わされた者たちが、後悔を取り戻すため、未来を掴むために走る。
あの時掴めなかった恋は、再び花を開かすのか。
そんな感じの火星の浪花節、キャロチュー人生教室第二弾はガスの昔の女! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
前回デズモンドを相手に"死"を知ったように、今回二人はフローラ相手に"老い"を知る。頂上に駆け上がっても滑り落ち、歌は消え花はしおれる。盛者必衰の理を誰も避けることは出来ない、重たい現実。
男と女の未練も絡む"大人の話"から二人は遠ざけられるが、プロデビューも果たし父とも出会い、否応なく大人になっていく二人は、その因縁に思い切りぶつかっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
枯れ果てた歌は、歌で取り戻す。掴めなかった腕は、思い切り掴み直す。
人は一度やり直せる。エントロピーになんて負けない!
キャロチュー視点で見るとそういう話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
キャロルに関しては、ダンとの離別と再開を経験したことが、人生の複雑怪奇を前に引かない気概を作ってるかな。
チューが家族と正面勝負するのはここからだし、まだお姫様気質が抜けきらないので、そこまでの積極性は見えない。が、引くこともしない。
"Army Of Two"(あるいは"The Loneliest Girls")として、一緒に人生を戦っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
順風満帆なサクセスストーリーに乗るだけでなく、取り返せない後悔に満ちた時間の流れに、魂と歌で棹さして未来を目指す。
キャロチューの物語は、やはり2クール目に入って軸足を変えつつある。
フローラの憔悴した現在は、ガスの後悔につながっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
90度に捻れ、どうにも踏み込めない間合い。
かつては思い切り、まるで浪漫の騎士のように花を携えて踏み込めた距離が、時間を挟んであまりに遠い。
©ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会 pic.twitter.com/LjHyJ3Bans
FloraはFlower由来の名前だから、ガスは楽屋で彼女自身を差し出したことになる。歌い、人を動かす己の才能。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
それはガスが本気で信じなければ、頂点まで咲きほこることがなかっただろう。ガスが隣にいればこそ、彼女は自分が何者かを確信できたわけだ。
しかしそれは、孤独の中で荒廃していく。
大手レーベルと契約した時の、冷たく遠い距離感。クズにまみれ、灰色の世界に取り残される苦しみ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
ガスがキャロチューを資本に委ねなかったのは、フローラとの過去があったからなのだろう。事由を失った歌は、時に窒息死する。
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絶頂ばかりは続かない。人生は色あせ、人は老いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
1クール目のキャロチューを取り囲んでいた金色と、対置するような薄暗い荒廃。ザラついた美術の迫力が、否応なく彼女をすりつぶした重さを見せる。
シンデレラをお城まで連れて行ったガラスの靴は、かくして打ち捨てられました。
今回はガスの繊細な優しさが良く見えるエピソードだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
ふらついたフローラを支える両手は、後悔を孕んで重い。だが見捨てられはしない。
AIタクシーが尋ねる『行き先』がもうないことを、流れる涙から悟った時の表情。 pic.twitter.com/yGQqK2vbbo
Aiタクシーのシーケンスは根塊の白眉で、機械はシンプルに自分の仕事を果たしているだけだが、その無味乾燥が女が追い詰められた場所の暗さ、言葉を失ってしまった哀しさを鋭く強調する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
問われても、もう失ってしまった。取り返したいものに、掛ける言葉はない。裏切ったのは自分なのだ。
ガスが自分の隣にフローラを置けない気持ち含め、もう子供ではない二人の重たい過去が、ギシギシ軋んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
手を取って飛び込んで、ハッピーエンドにたどり着いた。でも現実にはその"先"があって、二人は手を離した。
結果、世界最高の歌姫は『行き先』も知らず、震えることしか出来ない所に来た。
キャロルはまだそこら辺の難しさを知らないので、自分がフローラと出会った喜びを素直に伝える。しかしそれはむき出しの刃になって、傷ついた女に刺さる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
その反応を相棒と交換しながら、二人は人生の難しさについて考える。イノセントであることが、どうしようもなく誰かを傷つけることもあるのだ。
しかしイノセンスは時に、過去を乗り越える特別な力にもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
あの時手を伸ばせなかった後悔を、ガスが既に乗り越えている事実…キャロチューをスターダムまで引っ張った今までの物語が、今駆け出すための理由になることを、チューズデイは真っ直ぐに伝える。
『あの時、私の手を取ったみたいに』という言葉が、ガスの存在がチューズデイにどう刺さっているか理解らせてくれて、とても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
こういうシンプルで力強い掛け合いがあると、キャラが運命を共同して物語を走っている感じがして、グッと作品に前のめりになれるし、キャラを好きになれるねやっぱ。
あの時は隣り合わせ、お互いの顔を見れず手を掴めなかった別れから、お互いに向き合った対置へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
時間を経て、男は太り女は痩せた。時はお互いを傷つけたが、胸の高鳴りは未だ死んじゃいない。なら、もういちど駆け出せる。
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池の睡蓮が、再開の時に増えているのが良い。時の流れの残酷さと、もう一度走り出す二人への祝福が同居している感じだ。フローラが再び歌い出す時は、花(Flora)が寿ぐのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
今回騎士道ロマンスのやり直しなので、小道具がロマンティックね
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ぼんくらバンドを引き連れて、キャロチューは自分の歌を歌う。クソナードっぽい外見なのに、演奏が爽やかに洗練されているのは好き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
彼女たちはただ受け取るのではなく、それを繋ぎ返す立場へと変わりつつある。デズモンドが託したものを、別のステージで披露するスタンスに。
ガスは掴んだその手を離さずに、フローラを闇から光へと、より人の多い方へ連れて行く。孤独から遠い場所へと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
"Give You The World"をカバーすることで、フローラは歌を取り戻す。それは掠れているが、確かに響く。
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いきなり全盛期に復活する感じじゃなく、長いブランクを反映した惨めな姿を、しかしプライドと優しさを込めて穏やかに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
キャロチューらしいポジティブな視線が、シナリオゲストであるフローラに注がれていて、今回はベタ足ながらやっぱ良い話である。
ガスもアルコール漬けの敗残の日々を、キャロチューの歌に震わされることで振り払った。二人の歌には、そういうパワーがある、ということだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
言葉を取り戻したフローラは、ガスに重いを伝える。
あの時見つけてくれた花は、とても綺麗だった。
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花がフローラ自身の象徴であることも考えると、キャロチューのカバーはフローラが過去においてきた自己像、ズタズタになった栄光も再生させた、ということだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
ガスの後悔をキャロルが焚き付け、フローラの手を取ってステージまで引っ張ってきて、フローラの歌を若人が手渡すことで、花が咲き直す
思いのリレーが心地よいエピソードであった。リスペクトを込めたカバーはキャロチューが"歌い手"だからこそ可能な魔法で、そうやって"歌"を受け取る特権がフローラにあるのは、例え栄光が枯れ果てたとしても彼女が歌ったからこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
後悔と哀しみが全てを滅茶苦茶にしても、人は歩き直せる。
そういう話だったのかなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
コミックリリーフ多めなガスが、シビアな過去と向き合う中で誰かの背中を既に押していた事実を取り戻していく流れは、とても良かった。
やっぱビシッ! と決める話がないと、三枚目のコクは出ないよなぁ。大事な話だったと思う。
かくして騎士なり損ないは花の剣を携え、見事過去を討ち果たしたわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
現在進行系でロマンスに身を浸すアンジーは、ヤバな男とヤバなストーカーに悩まされていた。1/1ミニ四駆みてぇなクルマ乗りやがって…
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ある意味シベールの闇を、時間差でぶっ込まれているような展開だけども、一人暮らしを始めたアンジーをママはもう守ってくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
ナイト気取りのクレイジーにぶっ壊されないためには、自力で戦っていくしかないのだ。
でも孤独は、無力と荒廃を呼ぶ。フローラが今回示したように。
あの子かなり強火のツンデレなんで、キャロチューのように素直に誰かに頼ったり、誰かの背中を押したりってのは難しいかもだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
むしろだからこそ、誰かに頼り、誰かを助ける強さでもって、自分を守るお話が必要だと思う。そこにどう、展開を持っていくか。モンペとしてはハラハラである。
ガスが(キャロルのプッシュを受けて、あるいは過去自分が果たした決断に後押しされる形で)ロマンスを取り戻したのと、ナイト気取りにガンガン押し込まれるアンジーが対比されているのは、なかなか上手くてズルい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
このままだと、フローラが堕ちた深い闇にアンジーも引きずり込まれる。さてどうする
って伏線なども張りつつ、ガスとフローラの再生物語でありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
キャロチューが二人のシリアスな事情に踏み込むことで、"歌"という武器で人生と戦える自分、もう子供ではない自分を確認し、薄暗い"老い"相手に前向きな戦いを仕掛ける、成長の物語でもあったと思います。
アンジーが先んじて学んでいた生老病死の複雑さを、黄金の少女たちも学んでいきます。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月8日
父と別れ、母と対立し、遺志を託され、荒廃と諦めを蹴り飛ばす。2クール目の少しダークな雰囲気は、主役に陰影を足しいい感じだと思います。
次はアーティガン、破滅に真っ逆さま。コメディ調子が面白そうで楽しみ