グランベルムを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
不死鳥は、炎の中から蘇る。焼け焦げた憎悪と愛情が、心にこびりついて執念を動かす。
アンナ・フーゴと新月・エルネスタ・深海。運命が結びつけ、切り裂いた義姉妹の旅路に決着が付く。
それは血と涙で書いた、凄絶のラブレター。
そんな感じのアンナさんさようなら回である。日笠陽子の本気が唸り、余りにトンチキなセリフ群に多分笑ったほうが良いんだろうけども、イヤマジ、余りに悲惨すぎて笑えねぇっす…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
去るアンナも、残る新月もな~んも満たされなくて、情念の行き着く先は荒野だなぁ、とつくづく思わされる。
アンナさんは適度に負け役をやったり、グランベルムが飲み込む感情の強さを体現したり、儀式が生贄を必要とすることを身を持って教えてくれたり、非常に優秀で献身的なキャラでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
ここで去ることが彼女最後の物語的貢献なんだろうけども、よくやった…と言いたいと同時に、あんまりにあんまりで…
そんな彼女が末期に咲かせた花を見ていく前に、OPで既に描かれて気づいたところを。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
魔石を通すと、魔術師は基本瞳を閉じる。陰湿極まる水晶ですらそうなんだけども、アンナだけ緑の瞳をカッと開くのよね…終わってみると、納得の差異であるけども…。
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今回のお話は新月のアンナの話であり、他のメンバーは基本部外者。しかし外辺の落ち着きを描くことで、死に至る高熱がより顕にもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
寧々ちゃんの幸福なリタイア。砕けた石を置いて”お守り”を満月に託せる優しさ。
そういうモノわかりの良さは、アンナにはない。
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外部から何かを見届ける。主人公もネトネトの家庭事情を前に傍観者であって、義姉妹が母を見守る最前線から距離を置かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
クレアの糾弾に助け舟を出そうとして、踏み込みを止められる。空疎な空白、根拠のない”大丈夫”は、余りに無力だ。
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逆光の濃い闇を背負いつつ、新月は義妹に視線を合わせ、自分に出来る限りの正しさで約束をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
そうすることしか出来ない。正しくあること。当たり前に情が通う瞬間を夢見ながら、それが何もすくい取らない哀しさに身を浸すことしか、望まぬ才を刻まれた少女は掴めない。
その致命な空回りを、持てるものの傲慢だと罵れれば、アンナの憎悪だけが真実だと思えれば、見る側はある意味楽である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
が、この兄目はそういう風には書かない。新月も彼女なり、必死に家族を愛そうとして、それでも決定的に届かない。才が幸福に至る道を、徹底的に潰す。
一見隣り合っているように見える満月も、名前が示すように当然逆さ合わせで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
赤い水辺に踏み込んでいく歩み、才持つ苦しさを吐き出す新月の側に、主人公は寄れない。
石は落ちる。魔法は解ける。完璧に傷つかないものなど、何処にもありはしない。
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決戦前夜の夜闇の中で、満月はやはりカツサンドを差し出す。”カツ/勝つ”に言霊を乗せた、語呂合わせも一種の魔術行使か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
思いのこもった食事を味わい、新月はいつものように『普通』と評する。そこに切実がこもっていることをもう知っているので、満月も微笑む。
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満月と新月を繋いだ、新月の清らかな人格。優しさも強さも、アンナにとっては憎悪の対象でしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
呪いのような赤い月に食われながら、クリムゾン・ウィッチの末裔は妹の涙を拭う。
多分それが、彼女が姉であった最後の瞬間。
家名、”普通”の人間としての幸福、魔術師の夢。
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今や全てがどうでも良いと、自分の中には愛を糧に燃える憎悪しか無いと、アンナは夜と同化しながら呟き、緑の光になって消える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
魔力そのものに圧縮され、赤子のように泣きながら消えた終末の、それは予言だったのだろう。最後に見る姉が”あれ”かよ…マジでクレアが悲惨。
アンナ最後の晴れ舞台は、燃え盛る炎を宿した地獄の景色。亡者のように、何度砕かれても蘇りながら、ただただ憎悪を引きずって走る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
『頭は氷のように冷静に、心は炎のように熱く』
アンナも口にする慣用句だが、彼女を支配するのは茹で上がった理性と、劣等感に凍った心である。
凡人が神に愛された天才に食らいつくには、そこまでネジ曲がらなければいけないと、バトルが語っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
沢山のアイデアが投入された高速バトルシーンなんだけども、兎にも角にも悲惨で、アクションを楽しむ余裕がない。
多分、作ってる側の狙い通りだと思う。初めて死人が出る話だからね…。
新月は持ち前の才能で、圧倒的なパワーを手に入れたアンナを翻弄する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
姉を傷つけたくなかった。思い出を守りたかった。
その優しさが、事態をここまで追い込んだ。ただしい指摘だろう。だがどうすればよかったのか? 優しい人に、優しくなくなれ、というのは難しい。
何がどうなろうと、二人はもう行き着くところまで行くしか無いのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
高まりきった妄念は、手足を奪う程度では止まらない。不死鳥は、炎の中から何度でも蘇る。氷を砕き、刃に変える。その度に人形はおぞましく、強く姿を変えていく。
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バトルが何度もあるのが、(新月の大好きな)『普通』じゃもう収まらない感情のこじれを強く印象づける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
悪鬼の王のように、沢山の使い魔を呼び出す凡人。たった一つ、圧倒的な才覚を精霊に宿し”質”で勝負できる天才。
バトルを構築するロジックが、冷静にキャラを捉えて容赦がない。
二度目の決戦でアンナが惑わされたのは、過剰な炎と氷が生み出した蜃気楼だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
エルネスタへのコンプレックスを肥大化させ、惑わされきって道を違えた歩みと、戦いの軌跡はシンクロしていく。
正しく勝利を重ねても、新月が何も掴みきれないのも同じだ。勝っても勝っても、殺意は終わらない。
幾度目かの決着。『あなたは私に勝てない』という事実の確認。血の涙を流し、あるいは影に真意を隠す情念を、満月はぼーっと見守るしか無い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
やはりここでも、常人は超常から阻害される。魔法を手に入れても、巨大な感情に踏み込む権利は発行されない。
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新月とアンナのコンプレックスは、年月を重ねたからこそ強靭である。偶然行きあって仲良くなったポッと出が、口を挟めない時間の蓄積。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
それはどれだけ魔術の才能があっても埋められないし、世界から切り離された疎外感は満月の原風景でもある。
それを埋めるべく魔法を求めたのに、また無力を思い知る
あんま目立たんけども、満月にもキツいバトルだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
エルネスタの魔術は時を巻き戻し、出会った時の氷の城を蘇らせる。想い出の原風景、お互いが姉妹になれそうだったあの時間。
でも、今更そんなの出されても、帰れるわけ無いじゃん。
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アンナの糸繰り場に、青い新月の幻影が立つ。高い位置から見下ろすポジションは、アンナの嫉心が生んだ妄想か、客観的な才能の格差か。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
あるいはもう、思いと現実の区別はないのか。その境目をなくすのが、魔術の魔術たる由縁か。
因縁の処刑場たる雪の城は、あまりにも悲しい色をしている。
あの時、フーゴの一員として無邪気に受け止めてくれた手。氷の中を、温かい歓待を探してくれた姉。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
それは不意打ちの炎となって吹き上がる。新月の糸繰り場で、アンナは両足で立つ。同じ目線、同じ才能、同じ立場に這い上がったのだと、殺意が昇る。
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差し出された善意を受け取ったのが悲劇の始まりだったのだとしたら、どうすれば良かったのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
心を凍らせて、力は人を不幸にすると諦めて、誰とも触れ合わなければよかったのか。
それでも、私は触れ合いたい。普通に笑い合いたい。
新月の幼い願いが、ぶった切られ燃やされ凍りつかされていく。
新月は朦朧とする意識の中で、アンナの殺意ではなくグランベルムの歯車を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
力そのものといえる圧倒的な才覚が、人としての不幸を呼ぶ。魔術師であることの末路が”ここ”なら、いらない、いらない、いらない。
殺傷の歓喜の中で、アンナもまた自分を見ない新月を、見ない。
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涙は宝石。あの時手渡された可能性。家族になれる、幸福になれる約束と夢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
全ては砕けて散っていく。新月の”才”は、極限で姉を殺し、勝利を掴み取る。掴み取ってしまう。
背後の刃に気づかぬ非才。隠し通せてしまう天才。姉妹は、最期まですれ違う。
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バトルモノとして圧倒的なアドバンテージである『生き残る才能』『相手を殺す才能』が、新月が本当に欲しかったものをぶっ殺す展開は、余りに巧妙で残酷である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
その才能がアンナを引きつけ、燃え上がった愛が憎悪に変わり、冷たい離別を生んだことも含め、間違いきることしか許されなかった姉妹。
雪が降る。涙は凍って、再び魔石になるのか。その瞳は、何を写すのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
アンナを説得する時、新月の言葉の選択が決定的ずれているのが悲しかった。
母妹の愛は、もう彼女を現実に繋ぎ止めるアンカーにはなりえない。ありうるとしたら、それは新月自身がここ迄身を削り、救済しようとする理由だけ。
でも家族もなく、買える場所もないと思いつめている新月は、自分の言葉がそんな力を持つと信じられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
今更『アイシテル』なんて言われても、アンナは戻ってこれなかっただろう。
でも燃え盛る氷と、凍てついた炎が一方通行ではなく、見上げるだけしかない星も自分を見ていたと知れたのなら。
…仮定は虚しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
新月はそういうクリティカルな”普通”を、絶対的に掴み取れない少女であるし、アンナもまた圧倒的に間違いきった。
この結末は必然。幸福な出会いが、家名と才覚に捻れきり、バラバラに砕けた果ての景色である。
それでも、余りに悲痛である。死んだアンナも、生き延びる新月も。
それを傍観するしかなかった、空白の主人公も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年8月17日
少女が魔力に食われても、世界は続く、月は満ちて欠け、再び満ちる。グランベルムは続くのだ。
”死”という最悪のハードランディングを超えて、魔術師達は日常と非日常に何を見るのか。何を望むのか。
来週も楽しみですね。