グランベルムを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
魔力で編まれた人形が、最後に少女の夢を見る。日々を笑顔で過ごして、かすかに消えていく。
仕組まれた孤独の中で、少女は人形を夢見た。誰かが側にいて欲しいという、あまりにも愚かで切ない夢。
新月と満月。
相反する二貌の月が、最後の舞台に上る前の。
最後の日常が終わる
というわけで少女残酷魔術譚、最後の日常回である。第1話は決戦から始まり、第2話で魔術的日常を描いた。これを反転して、最終話一個前で日常を描き、最終話で決戦をやり切る構図で、お話は終わりそうである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
もう”箱”の段階で構造が綺麗だもんな…やっぱスゲーヨグラんベルム…(結論)
終わってもしゃーないので、描かれる日常という魔術書を読み解いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
今回は出だしから7分くらいでクライマックスが来て涙腺が爆裂し、きららマンガみてぇなポワッとした日常が展開して、満月がエモ爆弾をバイバイ花火で着火してまたクライマックスが始まり、最後のグランベルムへと繋ぐ構成である
絶望の果てに出会った四翠は、消えた九音のことを憶えていない。しかし当たり前に過ぎていく日常が奇跡の産物で、偶然と出会いは全て運命だという、非常に魔術師的な観点から”日常”を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
そして憶えていないはずなのに、涙腺は愛おしさに反応する。
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水鏡は忘却のただ中にいる四翠と、彼女の中の九音を照らす。そこにいないはずなのに、九音は確かに四翠の魂に残響している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
ならば、奇跡に満ちた日々の中に、私という白紙の人形もまた名残り続けるだろう。
四翠との対話を通じて、満月は己が孤独ではない事実を豁然と悟る。
ここで四翠が九音のことを憶えていたり、グランベルムで有利になる必殺技を伝授したりしない所が、このアニメっぽいなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
泡沫に消えていくものは、その運命を全うする。それは変えられない。
しかし、確かにそこに”何か”がある。かけがえのない、微かなものが。
新月はそれにまだ、気づくことが出来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
思い出すのは人形遊び、まだ幸福だった時代の残響。
魔力があれば動くはずの人形は、けして動かなかった。アンナとエルネスタの運命を暗示するような遊びの破綻。
それに傷つけられてなお、消せない夢。
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影絵芝居の人形のように、シルエットが色濃く色づいたグランベルム的空間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
傷と愛おしさが同居する思い出を、共有できる相手も減った。満月から届いたメッセージを、新月は震えながら受け取る。
涙雨のように、星が窓に宿る。電話越しのシルエット・アクト。
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そこから実体モリモリ、モノローグで後悔と謝罪バリバリのエモダッシュにぶっ込んで、クライマックス感はガン上がりである。泣かんで…君が泣かんでええんや!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
『感情の”天井”くるのはえーな…』と思ったけども、キャンプ後もう一回エモダッシュするので、構造的には天丼の一回目やね。
マギアコナトスに愛され、望まぬ試練を与えられた少女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
”普通”に友達を望んでも、孤独が神に相応しい運命を整えていく。
そんな中、願った。願ってしまった。だから叶った。新月から満月が生まれた。
走る月の子を、魔法の花が照らしていく。
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存在し、当たり前に夢を見るだけで世界を変えてしまう魔力の子供。神に為るには余りに人間的で、余りに優しい新月は、願ってしまったことを謝る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
思わなければ、世界はねじ曲がらなかった。理不尽な白紙の不安を抱えて、消える定めを背負わなくても良かった。
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魔力よりも強く世界を埋める、理不尽と罪悪感。泣き濡れる新月に対し、満月はずっと笑顔である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
今回、満月が一回も泣かないのが本当に辛い。そして彼女が泣かないことが、なにもないことに怯え続けてきた人形がようやく手に入れた魔法だと思うと、祝福しないとダメだな、とも思う。哀しいけど…。
生まれたこと。出会えたこと。そこにいた事。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
四翠が見つけて伝えたように、それは無意味でも無価値でもない。風の前の塵のように消えていくとしても、確かに何かが残るのであれば。
微かな微笑みを、世界に生み出せるのならば。
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魔術と縁もゆかりもない、”従”であり満月が乗り越えるべき白紙の象徴だったはずのクラスメートの笑顔が、人形最後の矜持を支える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
私は確かに、ここにいた。ガラスに映らないほど希薄になっても、誰に認識されなくても、家族が私を忘れても。
哀しい、だがとても確かな決意を、満月は伝えていく。
それは新月が泣くほど欲しかった”普通”の幸福を、彼女の人形(アルマノクス)である満月が既に、手に入れていた事実も照らす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
私があなたの望みから生まれたものなら、私が既に手に入れたものを、あなたはいつか必ず手に入れるでしょう。
人形の糸を逆にたどって、因果と希望を導く強さ。
それはやっぱり痛ましくて、新月と一緒に俺もボロッボロ泣いてしまったが、空白に怯え続け、空白に食い散らかされようとしている満月が、差し出せる一番強いものだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
それを、新月もゆっくり口に入れていく。消滅の悲しさを、やっぱりうまく言葉には出来ないけど。
身の養いを口に入れ、肌を心地よい衣で覆う。日々を楽しみ、そこにある喜びに身を浸す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
”なんてことない毎日が、かけがえないの”
脳内を名曲”カレンダーガール”が鳴り響く中、満月はいつものように食事を差し出し、新月に”当たり前”の温もりと喜びを伝えていく
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思えば生きるのブキッチョ人間だった新月に対し、満月は非日常で劣位に、日常で優位に立ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
今回再確認される料理の下手さを、”普通”のお弁当で満たしてきた彼女の人形は、魔術師…星読みとしても新月に優越し、前に出る。
月と星と闇が織りなす、運命のタピストリー。
それを読み解き、世界と人生の意味を見出していくこともまた、魔術の重要なアーツである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
並び立たない新月と満月。その名前に既に預言されていた相互消滅の運命に、しかし満月は新しく意味を付け足していく。
月がないからこそ、見える星がある。見えなくなっても、月はそこにある。
そのことをあなたが忘れなければ、私はずっとそこにいるから。あなたのお人形は、いつでもあなたの友達だから。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
”ロボアニメ”であることの物語的意味を、こういう形で回収してくるとは思っていなかったので、凄く幸運に不意打ちでぶっ飛ばされてしまった。
アルマノクスは心の形、魔術の人形。
だから、新月が編み上げた満月こそが、彼女最後のアルマノクスだった。き、綺麗なテーマ回収すぎる…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
さておき、コンビニのお姉さんと一緒に星を見上げて、世界の美しさを皆が飲み込む。
月が消えたように思えても、大丈夫、もう一度昇るから。
あかーーーん!!(一度目のエモ死)
ここで見ず知らずのお姉さんが”一人”の新月を気にかけて、当たり前の優しさをカーディガンにしてかけてくれていることが、もうマギアコナトスに勝利してる事実を語ってるんスよ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
満月は見えなくてもそこにあって、約束された新月の孤独は乗り越えられているんスよ…。
ファミレスで出会い直せたクラスメイトといい、ここまで魔術的日常に埋もれていた”当たり前”が凄い勢いで輝きだして、魔術に対抗しうる”強度”を出してきたのは凄い反転だな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
絵的にも展開的にも勝てないはずだった”普通”が、巨大すぎる魔法を静かに克服しつつあるんだよなぁ…。
これは魔術的非日常をあらゆる場所に侵食させつつ、同時に日常の温もりと優しさを丁寧に摘んできたからこそ可能な相転移だとも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
そこは白々しい、嘘の世界だった。でも本当に、温かいものもあったのだ。
だから勝つ。クソみたいな魔法に、人間の思い出が負けてたまるかよ…!
さて、カメラはこっから唐突なゆるキャンである。魔術的不穏さに満ちてきた”街”を抜けて、みんなで楽しい野外活動!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
かしいだカメラワークや複雑な色彩、大胆なレイアウトは一旦鳴りを潜め、”普通”の日常が積み重なっていく。
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のんきな日常のなかで積み重なる、当たり前の笑顔と生活。満月の白紙を埋め、新月が恋い焦がれたもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
魔術と魔術の子供を忘れつつある少女とともに、そこに身を浸しつつ。
満月は”はじめまして”の悲しさを、笑顔で飲み込んでいく。そこの露骨な柱! ”断絶”って名札を貼っておきな!!
妹の名が”希望”なのは、それを失った今強い皮肉だし、同時に満月の切なる望みをこれ以上ないほど上手く照らしてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
魔力で塗りつぶしたいと願った、当たり前の日々。そこにあったはずの”希望”は、もう新月の名を憶えてはいないのだ。せ、切ねぇ…露骨ジャンク系きららシーンなのに…。
ドヘタ料理にゆかりんのお歌。当たり前の日々を、キラキラな当たり前が素直に埋めていく幸福が、魔力の赤と青に染まっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
人間であることを誰よりも願った人形、最後の挨拶。最後の魔法。
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『”バイバイ”じゃ…”バイバイ”じゃないんだよコノヤロー!!!』と皆さんも吠えたんでしょうが、ええ、僕も吠えましたわ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
すっかり『お、当たり前の日々の幸福をスタンダードな画角で描いてくわけね…』と油断した腹筋に、突き刺さる叙情性のブロウ。貴様ーッ!(二度目のエモ死)
人形芝居の最後を飾るように、愛おしい人々に満月が礼をしてるのも、魔力で編まれた彼女最後の魔法がこんなちっぽけなものなのも、全てが切ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
『満月の気持ち世界で今一番判るマン』だから断言するけど、彼女は泣きたいわけですよ。しかし笑顔の道化のまま去ることを自分に任じたから、泣かない。
作られた道化には、道化なりのプライドってのがあるわけですよ。自分で決めたプログラムのまま踊りきって、笑って忘れてもらうことが彼女最後の矜持だったわけですよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
だから泣かない。一礼で、華麗に去る。
その強がりに、彼女の親友は全力で追いついていくわけですよ。
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一分前までのきらら時空が嘘だったかのように、いかにもグランベルム的色彩と画角で描かれる”森(魔術的領域)”
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
魔法的な存在を忘れていく、日常の中に置き去りにして(置き去りにされて)いく人たちを背中において、世界唯一の魔術の子は、自分が生み出した人形(夢、希望)にちゃんと追いつく。
夜と昼が混じり合う場所で、満月はやっぱり微笑んで、新月に思い出させていく。普通でいたかった願い、魔法を消し去りたい望みを。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
それは生み出され消えていくはずの従属の人形が、糸を手繰って生み出し手、操り手を導いていく構図だ。主従と因果が反転しているわけだ。
ちびっこなアルマノクスが、下から姉のように、母のように、親友のように手を伸ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
私を殺して。私を忘れないで。
早すぎる遺言は深く、新月に突き刺さる。でも、もう泣かない。受け取ったものがあるから。
ED入るタイミングも完璧っすわ…”願い”、マジ名曲。
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奇跡と予兆に満ちたあまりに美しい世界を、鏡合わせの赤い月が染めていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
手を取る。糸を手繰る。
たとえ約束されたものだったとしても、生まれたこと、出会えたことに間違いなどないから。
もう二人は泣かない。
…その代わり俺が泣くッ!(キモ顔大号泣)
前倒しの日常回で、キャラの倫理的、感情的到達点を先取りに突っ走っちゃってるのは上手いなーと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
ここで感情に答えを出してしまっているので、最終話はロボバトルボコボコやり続けても、キッチリ終わるもんな。
そしてこの積み上げたパトスチップは、水晶を倒す武器になる…(エンギア者の感想)
今回新月は、魔術を駆使して親友=人形を残すルート、マギアコナトスに選ばれた魔術師に為るルートを丁寧に潰す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
それはラスボスたる水晶が希い、辿り着こうとしている異質な道のりだ。そこに同じ願いを抱えつつ、あえて背を向ける。
魔法がなくとも、ないからこそ、世界は生きるに値する。
そういう”普通”に、涙ボロボロ流しながら自分の足でたどり着かないと、新月ちゃんのクエストが終わらんのよね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
そして既に、水晶的な生き方を克服していることが、最後の強敵を乗り越えるバトルで生きてくるって寸法よ…。こ構成にマジで隙がない。傑作か。(間違いなく傑作です)
そしてその”普通”にたどり着くために、人を模して作り出された人形が主のために、自分の答えを優しく、けして泣かずに伝えてる所が健気なんですよ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
人形は、人のためにある。白紙に怯え、非日常を求めた”人間”から、満月は己が生まれた本懐へと帰還し、その喜びを主に捨て身で伝えているわけです。
魔術の子供として定められた生き方を、超越することで物語を終えようとしている新月と、そこに帰還することで答えを得た満月。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
月の二つの顔は真逆に見えて、非常に奥深いところで繋がってる。多分、愛と呼ばれるもので。
神智は、愛によってのみ定まる。”魔術”なんだよなぁ…。
赤い月は日常を侵食し、最後の非日常の扉を開ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
美しい紫…現実の赤と青を入り混ぜた色彩が拡がり、グランベルムの開幕を告げる。
決意を込めて呪文を唱え、求め訴えよ。そこに、未来に至る城が生まれ出るだろう。
次週、決戦である。
©ProjectGRANBELM pic.twitter.com/35N0ImCird
というわけで、最後の日常回にダブルエモ爆弾を仕込む、巧妙なエピソードでした。素晴らしかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
四翠に反射する奇跡を見つめた、満月の到達点。”普通”の優しさが救いとなりうる、小さな祈り。
それを泣きながら抱きしめて、最後の決戦に挑む新月。
哀しくも頼もしい、二人の魔術師の勇姿である。
そしてどっしりと構えて待つ、俺達の袴田水晶大先生。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
異質、異形。新月と満月がたどり着き得なかった超越の領域に居座るラスボスと、主人公たちはいかなるバトルを繰り広げるのか。
全てが溶け合う忘我の局地は、すぐそこに待つ。
次週、マジで楽しみです。いやー、ヤベェわ…。
あ、”エクスタシー”は『相反するものが混じり合った法悦』を意味するれっきとした魔術用語、神秘主義の重要概念なので、ここで引っ張り出すのは大正解だと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
セックスは生死や男女(同性もあるけど)が融合する、一番身近な魔術なんで、用語を借りてるってわけね。
書き終わった後の寝言
ああ、月(魔力の象徴、マギアコナトスの家)を消すから”新月”で、その空疎を満たすから”満月”なんだな……ネーミング天才か?(今更当たり前の事実に気づくマン)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
あとオレは美しすぎてその価値を忘れていた日常が、一握の砂のように掌から逃げていくシーンで”カレンダーガール”脳内大音量でかけすぎだと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2019年9月16日
でもアイカツに魂焼かれた連中は”みんな”そうでしょ?(主語を全銀河規模で拡大するマン)