ヒーリングっど♥プリキュアを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
三幹部同時進行の窮地に対し、段階的戦力集中という選択を果たしたプリキュア。
”後回し”にされた花のエレメント攻防戦は、時間とともに悪化する戦況に翻弄され、闘志を挫く。
それでも、掴み取ったものが無駄ではないと。
それでも、戦う意志は消え去らないと。
そんな感じの、1クール目をまとめる大決戦、ヒープリ第11話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
”医療””環境”をテーマに選んだこの作品が、どういう闘いを少女に課すのか。劣勢で掴むべき決意とは。
よく見えるエピソードとなった。
真剣勝負を制するものは、技術でも体格でもない。
完全に今年のプリキュア、メンタルが鋼の防人
今回扱うエレメントは”光””水””花”であり、つまりプリキュアのモチーフと重なる大事な回といえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
ここで”花”を最後に回している所に、花寺のどかの救世主願望と危うさが透けて見える気もするが、それは先のお話。
今は出来ることを決死に、時間制限のあるなかでやっていくしかない。
時間経過とともに強くなるメガビョーゲンはつまり”病根”であり、足踏みしていれば患者…この話では人々の生活が乗っかる地球全体が危うくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
的確な判断と治療がすぐさま必要だが、決断は必ずしも勝利に結びつくとは限らない。
勝ちきれないことも、負けることもまたある。
それでもプリキュアは医師として戦士として闘うし、病原に蝕まれるエレメントもまた、生存を諦めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
”生きる”という最も根源的な闘争は、誰よりもまず当事者にとっての闘争であり、また助力者にとっても闘いである。
全ての祈りが集積した、今回のパワーアップ。
非常に納得がいった。
第2の闘いである水のエレメント戦は、結構さらっと勝てる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
しかし個人的に重要な描写も、そこにはあった。
汚染の広がった川に向き合う前、ちゆは背中にラテを庇い、敵に後ろを見せる。
前だけ向いて闘うことは、彼女には出来ないのだ。
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大胆に引いたカメラで、景色全体を見せる角銅監督独特の演出が、独自のテンポを生んでる回だが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
守り、癒やし、闘う。
プリキュアに課せられた課題は非常に多く、これに加えて少女たちは”学ぶ”ということも果たさなければいけない。
闘争と治療の機械に成り果てることは、けして許されない。
持てる戦力を集中しなければ突破できない難局でも、闘う理由、守るべき存在、癒やすべき患者を見落とさず、しっかり扱うこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
のどかは自然と、そしておそらく意識して”それ”をやっている。
全てを見守り、全てを救う。時に人の身には余る、過大な救済願望。
それが、かつて闘い救われ生き残った”弱者”だった(そして現在進行系で”である”)経験から生まれていることも、今回分かってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
弱さと痛みを知ればこそ、広い視野と不屈の心を育める。
共に戦ってくれた匿名の医師(せんし)を覚えていればこそ、己を奮い立たせることも出来る。
戦場を越えてなお、戦場は広がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
手の付くしようがないと思えるほど、赤く染まった花園は、少女たちの”選択と集中”の結果だ。
選ぶことは常に、シビアな結果を突きつけてくる。
敵が強くなるのも、患者が苦しむのも、大地に取り返せない傷がつくのも、全て己の責である。
©ABC-A・東映アニメーション pic.twitter.com/qRFbXolR99
このように過酷な状況でも、のどかはやはり、背後を見落とさない(あるいは見落とせない)。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
弱く無力なラテを庇い、一時の敗北が訪れるのは、優しさの対価か。苦しむものを置き去りにして、ただただ勝利に向けて邁進すれば良いのか。
当然”プリキュア”は、そういう思考停止の効率化を是としない。
同時に『全てを救う』という大望の厳しさ、払うべきコストの重さも、逃さず描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
ヒープリに漂うザラツイたリアリティ、生死の際に立つ悲壮感は、僕は非常に好ましいと思う。
扱っている題材(と偶然重なった時流)を思えば、重くやるのは正解であり誠実でもあろう。
次回へのヒキにもなっている、成熟メガビョーゲンの吐き出した”種”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
地球を赤く染め上げ、生を追い出して死に塗ろうとするビョーゲンズもまた、新しい可能性を生み出し世に放つ。
環境改変は生存のための戦略であり、生きるために生きるものを奪うカルマが、そこにはある
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今回のお話は環境汚染(と、エレメントによって形成される地球、並びにそこに住まう生ある人類には受け取られるもの)と、病状進行が重ねて描かれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
しかし僕ら愚かな人間だって、基本的には環境を壊したいと思って立ち回っているわけではない。
より便利に、安全に、健康に暮らしたい。
飢えや病や貧困から遠ざけられ、より善く生きたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
そう願って、種の特性として環境を改変し、制御しきれずに自分たちの寝床すら壊してしまう。
死を撒き散らしつつなお”生きる”ビョーゲンズには、そういう人間種のカルマが鏡写しになっているように思う。
奴らは奴らなりに”増える”のだ。
”敵”の中にある己の似姿に目を向けるのは先の話として、今は戦場に照らされる無力な己を見るタイミングである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
少女たちはプリキュアの鎧を剥がされ、制服に身を包んだ弱々しい姿で、己の在り方を問いただす。
より完璧な正解が、そこにはあったのではないか。
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生きること、救うこと、闘うことに真摯だからこそ、少女と妖精は強く悩む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
ここのやり取りは、超常の戦士ではなく生身の児童として交わされるからこそ、重くしんどかった。
大半の"子供"が考えなくても良い、非常にシリアスな生き死にの問題。決断の重さ。
そういうものを、戦士は背負う。
背負わざるを得ない宿命を、アニマルズの手を取ったときから受け止めて、少女たちは今ここに立っているわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
勝つために選び取った戦術が、取り返しのつかない失敗、重たい犠牲を生む。
その重責と後悔に押し潰されそうになった時、ちゆは己の記憶から、立ち上がるための力を絞り出す。
病との闘いは、特別な技術を持った医師だけのものではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
当事者として苦しみ、未来に向かってあがく患者もまた、ともに戦っている。
むしろこの戦闘の”主”は、より弱き者にこそある。諦めない希望、諦めさせない優しさが、勝利への唯一の道である。
のどかはそのことを知っている。体験している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
何しろ、当事者として死病に立ち向かい、生還したからこそプリキュアになったのだ。
自分がより善き生に進むべく、支え励ましてくれた医療者、両親、世界を満たすありとあらゆるものを、今度は私が救う。
使える武器は、変身コスチュームだけではない。
万人が持ち、しかし簡単に萎えてしまう心の力をこそ、束ねて魂の杖とする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
そういう闘いを、のどかは既に体験している。その記憶を、友に伝え一緒に立ち上がることが出来る。
そしてもう一つ、闘うための武器がある。
声無き他者の声を”聴く”、開けた心である。
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”聴診器”を作品の重要なフェティッシュに据えたのは、ヒープリの妙手だと僕は思っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
地球を構成する様々なエレメントの声は、普通には聞けない。
しかし不思議な聴診器を解することで、彼らもまた感謝と仁愛の心を持ち、死に立ち向かう”声”を持っていると判る。
声を聞き、声を届ける連帯こそが、冷たく迫る”死”のリアリティに立ち向かうための、最大の武器となりうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
医師のフェティッシュである”聴診器”は、不可視の超自然存在と対話するためのコミュニケーション・メディアともなっている。
作品が何を大事にし何を伝えたいか、強く鮮明化していると思う。
己の敗北により、より広がった病根。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
患者の心を挫く病魔を前に、プリキュアは『生きることを諦めるな!』と、必死に叫ぶ。
ここら辺は完全に、バイタル弱ってる患者に決死の救命医療を施す医療従事者そのもので、重たい切迫感があった。
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踏みにじられなお生きようとする、悍ましき生命。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
クールでニヒルなダルイゼンくんは、溢れる光を前に何を思ったのだろうか。
生存の前提自体が噛み合わない異種は、闘争のなかで何を伝え合うのだろうか。
やっぱ、そこが気になる。かなり難しいことやろうとしとるなヒープリ…。
同族の生存を願う、エレメントの祈りを束ねて、プリキュアに新たな力が宿る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
慈しみの掌で、ギュッと命を抱きしめる、施療としての必殺技。
しかしそれは、全てをなかったコトにはしてくれない。選択の代価は、長く大地に染み渡ることになる。
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なにかを選ぶことはつまり、何かを選ばないということ。そして何も選ばなければ、全てが踏みにじられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
人生という、苛烈で正解のない問題集に百点取れるやつはいない。
とはいえハープリ、プリキュアの中でも特にシビアなリアリティで回っている。ここで満点取らせてくれねぇもんなぁ…。
そして少女たちは、一人で戦い生きているわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
ラテ様は無事快癒させ、なんとか守れたモノの意味を噛みしめる少女の前に、先生が必死の形相で追いすがる。
ここで怒るより先に泣かせる所に、ヒープリらしさがある。『生きてるって感じ』は、時に涙を生むのだ
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少女たちは地球の命運を背負う超常の戦士であり、不思議な友達と出会えた特別な存在である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
同時により成熟した存在に見守られ、導かれる存在でもある。
花のエレメントに仲間が向ける祈りを描いた今回、児童を至極真っ当に心配する先生もちゃんと描いたのはマジ偉い。
特別な必殺技に繋がる連帯の意識は、妖精だけの特権ではない。冴えない外見をしたオッサンも、同じようにプリキュアたる少女たちを心配している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
その涙は、熱く重い。
エレメントの特別な力に意味を見出すのであれば、安堵に膝を折って泣き崩れる教師の涙もまた、特別なのだ。
のどか達の背後に隠れるアニマルズは、可愛くもあり、また切なくもあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
『秘密の戦士』という作品のフレームを考えると、アニマルズは人に知られちゃいけない。
だが、必死に戦ってる彼らが当たり前に、先生の前に出て言葉を交わせたらと、僕は思ってしまう。日陰にいるべきじゃねぇよ彼らは…
『新必殺技もパなして、一件落着大勝利!』と思ってたら、妖精女王の地縛霊が不吉な予感を垂れ流し、”遊星よりの物体X”みてーなシーケンスで不気味に次回へ引いた。絵面は完全にホラーである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
ここで寄生されてるのが、ヌートリアっていう侵略的外来種なのがまた…。
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という感じの、華やかなる防人達の後悔と未来でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
負けることが恥ではない。戦わぬことが恥なのだ。
完全に覚悟完了したのどかに率いられ、決断の荒野へと踏み込む年若き武者たち。
パステル色に飾られた悲壮感、正解が何処にもないシビアさを、『それでも』と顔を上げる決意で支える。
ヒープリがどんな話なのかってのが、よく判るエピソードだったと思います。第1クールの折返しに、相応しい仕上がりでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
バトルドレスを脱がせて、制服の一児童として迷い、苦しむ描写をちゃんと重ねるのは、やっぱり偉い。
生身から流れる精神の血あってこそ、超常のヒーローなのだ。
『犠牲者たる地球や日常もまた、闘いの参加者なのだ。生きるという戦いにおいて、全ての存在が主役なのだ』という、広いビジョンを見せれたのも良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
特別綺麗で可愛くて強い”プリキュア”を描くからこそ。
そうではない存在全ても、それぞれの戦場で戦っているのだという尊厳は大事だ
そして次回は、特訓と新たな敵。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年4月14日
育ちきった病巣が吐き出した”種”が、どういう災厄をもたらすのか。
2クール目を見据え、休むことなく話が転換しそうですが、さてどう見せてくるか。非常に楽しみです。