かくしごと を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
犬に名前、日々に意地、明日に約束。継ぎ接ぎだらけの仮住まいと、指さされても前を向く。
可久士と姫の奇妙な生活は、陰りを振りちぎって前へと進む。明日は、きっと良い日になる。
そんな祈りが行き着いた、鎌倉の荒れ屋、姫の孤独。
次第に顕になる過去と未来が、残酷を照らす
そんな感じの、失われたイノセンスの物語第八回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
終盤を迎え、”かくしごと”を閉じ込めた箱も次第に空いてきた。
妻との関係とか、鎌倉と下目黒の二重写しとか、”ダテナオト”との軋轢とか、喪失を埋めるピースがだんだん揃ってきて…未だ足りない。真相暴露は辛い体験になりそうだなぁ…。
暴走超特急な可久士が抱える、なかなか笑えない重さと暗さもジワジワ滲んできて、コメディだけでもほのぼのだけでも終わらない多層性が、そろそろ牙を剥いてきそうでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
明るいボケで乗り切れない、父子家庭の世知辛さがだんだん、色を濃くしてきた感じもあるね。
ポケーっとしてるわりにそういう所に敏い姫と、その気遣いやら口さがない世間やらを奥歯噛み締めて跳ね除けようとする可久士の、必死の日々。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
笑えねぇモノを笑えるように、笑顔の仮面に涙を隠す道化の奮闘が、報われたとは思えない未来の荒廃がまた、なんとも辛い。
やっぱ最初に感じた『このほのぼの親子奮戦記が、ああいう寂しい景色に行き着くのか…なんで?』という疑問が、自分がこの話見る軸になってる感じはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
世に幸せと思われなくとも、賤業と蔑まれようとも、二人なり幸福に生きようと頑張っていた親子は、なぜあの場所に流れ着いてしまうのか。
情報が出るほどに、『ある程度以上納得の行く運びを見せてくれないと、許さねぇぞ久米田…』という気持ちにはなっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
同時に相当テクニカルに、かくしごとの蓋が開くミステリを取り回している巧さも見えるので、信頼もしているのだが。視聴者が受け取る情報と情動の制御、巧いねぇ…。
先週新たな家族になった犬は、後藤家らしいドタバタとズッコケを繰り返しながら、(仮)の取れた名前を手に入れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
後藤ロク。”ご登録”とのダジャレなんだが、姫は運命と目を輝かせ、楽しそうに興奮している。
なら、それでいいじゃねぇか。
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職業漫画家として、ウケるウケない色んな波風に晒されつつ、世に問うてきた作品の名前も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
母のいない家で、それでも幸福を握りしめて必死に生きている生活も。
全うと世間には扱われなくとも、そこには不思議な奇縁と、確かな人間の血潮がある。
会社に勤めて、家族が揃って。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
捻くれた性格の自意識爆裂父さんと、ポケーっと天然な娘は、世間がその刃に気づかないまま振る舞わす”正しさ”からは足りない(あるいは過大な)存在だ。
しかし歪で欠落している存在は、幸福を求めてはいけないのだろうか? 正しくないのは、そんなに間違っているのか?
姫がまだ感じない世間の風を、可久士は特に敏感に感じ取る。擦れっ枯らしに傷つき、逃げたり暴れたりしつつも、それに膝を屈しないように懸命に色々繋ぎ合わせ、自分なりのシェルターに娘を抱え込んでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
そのブリコラージュ的な生き方は、僕には切なく愛しい。笑いと吠え声に、血が滲んでる。
反目する義父から受け取った名前でも、姫は世界で唯一の己の娘であり、愛した人の名残を受け継いでもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
こんなに優しく、こんなに愛おしく育った結果をこそ大事にして、過去の因縁は乗り越えるべきなのかもしれない。
娘の一言は、知らず父の涙を誘う
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その涙をアイマスクで可笑しく隠す所が、この作品のシャイネスであり、必死に”父”であろうと藻掻く可久士のプライドを守ってあげる、敬意と優しさだなぁと感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
名前を巡る一連の流れは、ネタだったはずのものが重たいマジに変わる手筋も含めて、非常にこの作品らしいと思う。
良い話をやったら即座にダイナシにしてしまうのも、この話の味で。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
まーた天然の超ヤバ力を発揮してる十丸院と変な共鳴して、ノリと勢いでヤバい方向に突っ走る可久士先生は、やっぱダメダメである。
仲悪いけど波長は合うよね、この二人…。
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天然ヤバ男な十丸院から発せられる、ブラックな笑いで空気を抜かないと、ドンドン話が重くなるってのもあるけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
ナチュラルクズな彼がいるから、コメディとして回ってる部分はあるよね。いや凄いけどね彼…色んな意味で。生っぽい”いそう”感とかさ。
傷心を抱えて歩く冬の湘南は、今まで描かれた未来の青さとは、また違う色彩をしている。じっとり湿って重く、孤独な綺麗さが薄い、現実の延長線。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
そこに、大嫌いな義父が残した(仮)。あり得たかも知れない、下書きの幸福。
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運命は思わぬ幸福だけでなく、望まない不幸と絶望も連れてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
妻(義父にとっては姫と同じ”娘”)が去り、ありふれた当たり前の幸せ(未来に置いて、可久士が届かない夢と原稿に刻んだのと同じもの)はもう、現実にはならない。
その拙さと綻びに、世間の風が染み渡る。
可久士が顔のない世の中の声を過剰に気にし、それに反発することで前に進む…あるいは危うく歪む様子は、スタジオの仕事風景にも何度か切り取られてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
漫画家は賤業、父子家庭は不幸。
そういう心無い声に、『なにくそ!』と齧りついて進む。
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そのシリアスな重たさを、可久士は仕事仲間にも家族にも”かくしごと”にすることで、脆いプライドを守っているようにも思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
あるいは、何より大事な姫が風に晒されないよう、自分の心を盾にして守っているか。
普通でもマトモでもないけど、人として必死で全うなあり方だ。
それでも喪失は重たすぎて、暴走する強がりを冬の七里ヶ浜に、可久士は置き去りにしてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
『下書きを越える線は、絶対に描けない』
姫とロクが教えてくれた、ツギハギの幸福を可久士は、どうしても信じきれない。
それは多分、満ち足りていた過去があまりにも、可久士の中で眩しいからだ。
話が進むにつれて、過去と未来に秘められていた”かくしごと”が顕になり、可久士が抱え込む重さも見えてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
今掴み取ったツギハギの幸福と、失われてしまった満ち足りた過去。なにくそと踏み出した答えが、脆く崩壊した先にある未来。
朗らかなエッセイに絆されていると、猛烈な足払いが来そうな不穏
終盤に差し掛かり、作品の全体像もまた、おぼろげに見えてきた気がする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
ペシミスティックに世間を睨み、揺るがない”正解”になりそうな現状肯定を切り崩すシビアな視線が結像させる、未来の青い夏。
そのさらに先にある結末が、不格好でも幸福であることを、僕としては望みたい。
答えと喪失の間で揺らぐ運動は、もう一度”正解≒姫”の方へと戻ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
自己紹介失敗しちゃった友達に、優しく手を差し伸べた救世主。未完成の幸福は、絶対間違いじゃない。
うん…でもズタズタ下書きは間違いだと思うよ、後藤先生…。
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姫が孤独に吹かれる未来は、可久士の”答え”に彼女がなりきれなかった過去を想起させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
『これで良いんだ、これが良いんだ』と安心するのに十分な温もりと確かさを描きつつ、それを裏切る結末を既に見せてしまう。
この不安定な問いかけも、このお話の思弁性といえるか。ぼんやりとした不安、か。
話のネタはアニバーサリーに写って、まーた十丸院のヤバ蔵っぷりが暴れ狂い、可久士がワイワイコメディを演じる。本当仲いいね…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
娘の”かくしごと”を、ボーイフレンド騒動に勘違いする、ありふれた一笑い。
しかし姫の曇り顔は、それで解決するには重い
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可久士は十全な人格者などとは当然描かれていなくて、問題山積の厄介人間である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
思い込みで大事なものを見落として、大丈夫だと確信したらすぐに揺らぐ。
傷だらけの人間性を何とか継ぎ接ぎに、娘といる”今”を守ろうと必死になっている、ただの人間である。
その愛おしい欠落の描き方が、キャラの魅力と作品の手触りを彫り込んでいる作品だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
そして勘違いしたまま、姫の過剰な気遣いをそのままにしはしない。『なにくそ!』という歯ぎしりを笑顔に隠して、娘の望む夢を何とか、形にしようと約束する。
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その約束が、多分形を為さないこと含めて、暖かく切ないやり取りだった。まーたこの男はモテてからに…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
手に入れて、失って、また手に入れて、失う。
サヨナラばかりが積み重なる人生に、それでも一瞬の夢を見て、必死に生きる。
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人生の振り子は、”来年”を約束する継ぎ接ぎの幸福、姫といる真実で止まってくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
これもまた危うい下書きでしかなく、残酷な運命はより酷い未来をペンで縁取っている。
気楽な日常系の匂いを上質に漂わせつつも、その脆さ、儚さを常に添える作風である。
姫は下目黒では聞こえなかかった潮騒に身を委ねつつ、欄間に輝くあり得たかも知れない夢を、未来に見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
あの時は気づけなかった、父の傷と強がり。
幸福の入れ物を捨てることも、隣に置くことも出来ないまま、不格好な多重生活を続けた日々。
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瓦が剥げ落ち、”売家”の赤字が目に厳しい、未来の我が家。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
それと重なる思い出の”箱”には、どんな謎が残っているのか。可久士は何に飲み込まれて、未来に不在なのか。
やっぱりそういう疑問を呼び覚ませて、物語は次回に続く。未来編の描写で現在を挟むことで、アニメはミステリ構造を強化してる印象ね
そんな感じに陰影を増す、冬と夏の物語でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
季節が現在と未来でズレてきたので、二つの物語の間にある差異もまた、より際立って見えてきた感じ。
可久士がなんとか隠そうとした人生の重たさを、ミライの姫は全身で、一人で背負っちゃってる形だからなぁ…。
『様々に奪われたが、それでも俺は娘を守る』という可久士の答えは、頓挫することが約束されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
でもその不格好な奮闘が、無意味でも無様でもないと僕は思う。
吹き荒れる透明な嵐を前に、『こなくそ!』と吠えて、時に迷って、大事なものを大事にしようとする。
それは偉いし、それだけでは運命と闘いきれなかったと描くのは正しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
シビアで暖かな視線で、キャラクターと作品を貫通しながら作ってる話なんだな、という印象が強くなった。
これから話が終わりに近づくにつれ、箱の蓋はもっと開いて、過去と現在と未来を埋める”かくしごと”は暴かれていく。
それは結構辛くて、それでも妙に温かい…この話らしい解決編になるんじゃないかなぁと、僕は思っています。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年5月22日
期待してる、が正しいか。何を以て”報われた”とするかはとても難しいと思うけど、後藤家には報いのある終わりを掴み取って欲しい。
そんな願いが、どう転がるか。来週も楽しみ。