GREAT PRETENDERを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
偽物のヒーローと、焼け焦げたバレリーナと、翼を喪ったパイロット。
憎悪と苦痛に塞がれた、それぞれの記憶が新嘉坡に踊る。
悪漢が泥濘に首まで浸かる上に、広がる輝かしい空。
飛ぶことで救われるもの、堕ちることで生きるもの。
それぞれの輝きは、まるで花火のように…。
そんな感じの、シンガポール編最終回ッ! である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
うーむ…正直評価が難しい。
今までの停滞を全部エダマメがぶっ飛ばし、善人がスカッと空を飛んで風通しが良くなる話運びも、その裏で狡く鐘を回収する詐欺師達の手際も、暗喩を上手く使った絵作り、独自の演出でよく冴えた。桜美かつしは流石だ…。
なん、だけ、ども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
アビーもルイスもクラークもイザベルも、このエピソードで事故を開放するべきキャラクターのカタルシスが全部この話数に突っ込まれていて、ややリアヘビーな構成が過ぎる気がする。
ここで開放するために溜め込んだ結果、話全体が重くなった感じするし。
今回のお話はアビーを掘り下げるエピソードだったと思うのだが、彼女がとにかく自分を解放しないために、空を飛ぶ話なのに立ち止まってる感じが強くあり、かなりフラストレーションがあった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
それがアビーのキャラ性なのだと、際立たせるための構成だとは思うけど。
最後に一回だけ実現する真剣勝負を、爽やかに熱く見せるために、前座の嘘っぱちエアレースをタメた、ということでもあると思うけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
虚実が入り混じり、人情と我欲が錯綜するあやふやさこそがコンゲームの醍醐味…てのも判るが、カタルシス前にチマチマ、アガりどころヌキどころが欲しかった。
ので、そういうのが全部やってくる今回は単品としてみるとすげー面白いけども、連作としてみると難しいな、と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
まぁラストカットのアビーの笑顔が”強く”て、アレで全部OKになっちゃう感じもあるけど。アレも散々陰鬱で凶暴な顔を書き続け、タメたからこそのカタルシスだしなぁ…。
とまれ、物語はどすぐらい夜に煌めくナイフから始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
全てを焼き尽くされたアビーも、地面に叩き落されたルイスも、空っぽという意味では同類だ。
そんな同属が相喰む悲劇を、エダマメは体を張って止める。やっぱ、詐欺師やるには善人過ぎるな…。
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ここが話のトーンとしてはどん底で、アビーもルイスも瞳はガンギマリ、殺し殺され修羅の顔である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
そんな彼らがちったぁ爽やかな顔をするためには、お人好しでお節介なエダマメの介入が必要になる。
というか、犯罪と怨恨にまみれたこの世界で”いい話”出来ることが、主役の特権と資質なのだろう。
第1連作で自分の物語に一つのケリを付けたエダマメは、大事なものがなにかもう見つけている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
そこから続くこのシンガポールでは、自分の中の宝物を他人に差し出して、擦り切れつつも助けを求めている連中に手を差し伸べていくことになる。
話数をまたいで見える人間的成長は、やっぱ良い。
自分の大事なものを見定め据わった腹は、詐欺師としてのエダマメのパフォーマンスも上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
獅子身中の虫として、サムを地獄にハメる誘導役。ローランの計画の要を、エダマメはしっかりやってのける。
弟相手のときもそうだけど、相手ノセるの上手いよな…。
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真剣勝負にこもる思い、人一人の人生。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
エダマメがプールサイドでサムに問いただしているのは、彼が金より大事だと思っている(から、第5話で金捨てて自首した)ものだ。
サムはその全てを『下らない』と切り捨てる。その情のなさが、最後の最後で弟の反抗、自身の破滅を呼ぶ。
ローランも人間の気持ちがないクソ野郎で、エダマメ自身をハメた爆破座薬を当人に手渡し、詐欺の始末を預けてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
しかしそれを、人情家であることを止めれないエダマメが跳ね除ける事は計算に入っていて、抜け目なく保険もかける。
一流の悪党は、人間の甘さも見据えて計画を作る、と。
ここら辺、悪党としての格の違いが見えて面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
なんとなくだけど、ローランは甘ちゃんで善人なエダマメが、自分が渦中にいる悪徳に引き寄せられてるミスマッチを面白がってるのかな、と思う。
だから詐欺師は止めさせないし、自分のビジネスを潰す決断も、掌の上で転がしてる。…悪魔じゃん!
流石にヤッパが出てきて限界だと思ったのか、エダマメは今までの足踏みが嘘のようにガツガツ動き出す。今回のエダマメ人情無双、カタルシスのドミノ倒しはマジで気持ちよかったね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。まずはお嫁さんの攻略からである。
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アビーの帽子、ルイスのフード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
イザベラとの対話を塞ぐ藤棚。
クラークがアルコール入りの哺乳分を加え、身を預ける空飛ぶ揺りかご。
何かを覆い隠し、閉じ込めるモチーフが今回は多く、それは全てから解放されて広い空を泳ぐクライマックスへ繋がっている。
本当は、何がしたいのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
LAでのビズ、監獄での日々でエダマメが向き合ったものを、彼は今回のアクターに問いかけていく。
爆撃はアビーの家族と心だけでなく、ルイスの魂も焼いていたこと。
偽物のヒーローも、空を飛びたいと願い、それがヒールを焼き尽くしたこと。
今まで覆いの内側に隠され、閉じこもっていたものが一気に飛び出してきて、その感情が何かを表に出させる、大事な足場になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
…やっぱイベント多すぎな回で、今回やったことを二話に分割してたら、丁度いい濃度になってたんじゃないかな…。(しつこい)
しかし解放それ自体は、的確な画作りとメタファーで気持ちよく展開していく。ドラマに必要な映像を、しっかり創れるクオリティの高さは、このアニメの強みだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
誰かが用意したシートから降りて、王子は真実と本音を口にする。
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用意された台本ではなく、魂が焼け付く真剣勝負を果たしたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
それはローランのビジネスからはみ出して、関係者全員が自由に飛べるよう走り回るエダマメと、どこか似た衝動だ。
望む善を掴みそこねて詐欺師やってる、挫折加減もよく似てる。クラークはエダマメのシャドウでもあったんやね。
エダマメが煽った怒りを燃料に、偽りの玉座から飛び出すことで、クラークはようやくキャラクターとして自立し、自分の願いを抱えて物語へと進み出ることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
こうやってキャラが鎖を引きちぎる瞬間はとても好きで、そういう開放が連鎖してクライマックスが加速していくのも気持ちいい。
感情の連鎖爆裂はアビーにも届いて、バカにしてたカプセルトイで運命を占い、譲れない信念の話をエダマメとすることになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
帽子を外し、相手の顔を見る。甘っちょろい情熱を生身で受け止めて、心に降り積もった灰に火を入れる。
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そうしても言いかな、と。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
狂える半死人に思わせていいくらいには、エダマメは色々頑張ってきて、それがようやく実るシーンだ。
今まで焼け焦げたメダルだけを握りしめていたアビーが、他人の象徴を自分の手のひらの中に入れるシーンでもある。カプセルトイ、良い使い方してるよな。
色々文句も言うけど、シンガポールで醸成されたアビーとエダマメの関係は凄く好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
簡単には癒やされない過去の傷に、あえて踏み込み人情を差し出すエダマメと、押しに押されてようやく生きる方向に転がりだすアビー。
それは、腐れ詐欺師にもどうしても宿る、人間味というやつで。
ローランが悪辣に取り回すクールなビズだけだと、やっぱりドラマを駆動させるにはちと足らなくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
エダマメのチョロい人情物語があってこそ、この話にはじんわりした熱が宿るのだと思う。
それが仲間に伝わり、もしかしたら変えていく一人目として、シンガポールのアビーがいるってのは、結構好き。
エダマメくんの人格無双はまだまだ続き、ついにトラウマの当事者が顔を突き合わせ、ナイフではなく言葉を交わす場面を創る。ホント偉いよ~。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
明かされる反逆の真相、明け透けなルイスの態度。フードを外した男に対し、帽子をかぶったままの女。
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アビーのデレ期は最後の最後なので、この段階ではルイスの露悪と率直に背中を向けたている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
まぁルイスも、焼け焦げた自分を薬で落ち着かせながら、地べたの暮らしをなんとか生き延びてるからな…なかなか、素直にはなれない。
そうい奴らまとめて、自由な空に飛ばすのがエダマメだ。
彼は自分を陥れた悪魔の薬を、結局使えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
インチキ勝負の金目になる偽パイロットの代わりに、後悔が焦げ付いた敗北者を、コックピットに乗せてしまう。
信念があれば、金でも王様でも刺す。
豊臣秀吉志願が、明智光秀になっちまったな…。
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そんなお人好しが用意した玉座に座って、ルイスもようやく枷を外す。地べたで這いずり回ってた心を、空に飛ばす翼を用意してやったことが、アビーの執着も解きほぐしていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
エダマメの勝手な善良さが、関係者全員爽やかに飛ばしていくのは、やっぱ良い。主役が主役してる。
アップテンポな音楽ではなく、アビーの思い出を込めた静かな舞曲に乗って、子供のように男たちが舞う。あの時付けそこねた決着を、台本破りで自由に飛ばす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
嘘まみれだったシンガポールの空が、ようやくその本来の色を取り戻す中、錯綜する思い。
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先週ルイスが空を見上げ、虚しい夢を追いかけてるシーンでもそうだったけど、加害者(パイロット)の傷と被害者(バレリーナ)の痛みを音楽で重ねて、翼を喪った同志として見せる演出は、メロウで詩的で凄く良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
アビーの過去設定がエアレースという題材と噛み合い、上手く話をまとめてくる。
固くて暗いアビーの殻をこじ開けて、全力で真心を届けてきたエダマメのお節介も、ようやく実を結ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
今まで頑なさの象徴だった帽子がここで、アビーの柔らかな心を写さない優しい防壁として機能してるのも、なかなか好きな演出だ。エダマメの慈愛の表情も、最高に良い。
こんだけ人情のドミノを一気に倒し、みんなをいい方向に導ける資質があるエダマメが、詐欺師をやっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
善への信念を殺せず、ビジネスひっくり返すとしてもやりたいことやっちまう男が、ハメられて詐欺を続けている。
やっぱ、ラスボスローランなんじゃねぇかな、と思う。師匠超えの構図にもなるし
エダマメが今回横紙破りをやったのは、ビジネスを台無しにしても判ってくれるという、コンフィデンスマンへの信頼があったからだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
それに応えるように、悪党は完璧なハメ手で、クズの財布からすべてを奪う。
『ンッザマァァ!!』と、気持ちよく吐き出せるの大事
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ビジネスの成功だけ考えれば、日本でそうしたように裏から手を回し、気付かれないようにエダマメを操作すればよかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
しかしローランは余計な手数をかけ、危ない橋を渡ってハメ手を作った。この”遊び”に、この詐欺師がエダマメに抱く執着の強さが、滲んでいる感じもある。エダマメ好きすぎこの男…
『自分たちで勝手にやったんだから、銃弾のリスクも自分たちで乗り越えろ』とばかりに、訪れる最後のピンチ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
高所恐怖症の男は飛べない女を抱え、落ちることでなにかから解放されていく。それは多分、偽物の王子も同じだ。
そして傷ついたヒールは、飛ぶことで再生する
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失って、手に入れる。落ちることで、飛ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
矛盾に思えるものが背中合わせに繋がっている人生の不可思議が、”空”を中心軸に踊るこのエピローグは、とても綺麗で好きだ。エアレースという題材にもあってるし。
空からの爆撃で人生焼かれたアビーも、偽物のパイロットであることを拒絶して話がまとまる。
逆に心底飛びたかったルイスは、爆弾がついてない飛行機に乗り込むことで、愛する女との関係を修復し、未来に向かって踏み出すことが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
真剣勝負を望んだ結果、戦友を壊してしまった偽王子も、兄の用意した台本を破り捨て、ついでにエアレース自体もぶっ壊して、自分の道に進む。
終わることで、始まるものもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
それは自ら檻に入ることで、詐欺師として人間として大きく成長したエダマメが、第1章で体現した不思議だ。
アビーもまた、お節介な仲間命がけの真心を受け取って、灰の中から立ち上がっていくのか。
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第3章でのアビーが楽しみになる、最高の笑顔でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
エダマメのグズグズ顔も、最高にかっこいいよ…。事前に『コイツ高い所まじダメなんで』と見せてたことが、アビーの未来のためにシンガポールの空に踊った侠気を、上手く強調すんのよな。
7話のオチが”仲良く墜落”だったのを拾う、リフレインも良い
あの時は獣のようだったアビーは、シンガポールの鬱屈と解放を経て、少女のように笑う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
それを取り戻すのが、エダマメが本当にやりたいことだから、彼は台本通りの詐欺仕事に背中を向けた。
さて、この次に人情野郎が攻略していくのは誰か…はたまた、別の角度から物語を創るのか。
タメまくりだった第2章の値段は、やっぱ今後のお話の中で決まってくるかな、という気持ちもあります。第1章を経てのエダマメが、今回マジ最高だったようにね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
そこら辺含め、次はどんなお話が来るのか。やっぱり楽しみです。
…やっぱ二章ラストの今回が良かったから、こういう気持ちになるんだろうな
追記 ピカレスク・ブロマンスとしての側面が、ローランのネットリした執着で常時テカってるのは、このアニメに”艶”を与えて良い所だと思う。
グレプリ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
『善を追い求めつつそれを為せない偽悪者と、人間味溢れる面白さに魅了された悪魔』としてエダマメとローランを見ると、かなり古典的な聖人譚なんだな、この話。
悪魔と聖人の恋は実らないのがセオリーだが、さてローランの誘惑はどうなるのかねぇ。
追記 視聴メディアの違いによる、第2章の受け取り方の違いについての会話。
(鍵アカの友人からのリプライ。公開許可済み)
自分はネットフリックスでエピソードまとめてみてるのでルイス周りを随分後ろに持ってきたなぁ程度の認識ですが。とにかくうまくいかない展開多いので、一週一週見てると確かに重いかもと思いました。
それに対する僕の返答。
週刊連載と単行本で漫画見る時の、感覚の差に近いかんじですかね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2020年9月13日
ネトフリで一気観する視聴体験を前提に、エピソードを組んでるのはあるかもですね。
話の作り方が、24×5の二時間映画に近いんですよね…分割すると、ちょっとギクシャクするポイントかも知れません。