イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

それでも町は廻っている 5

石黒正数少年画報社アワーズのヘンテコ漫画、それ町五巻目でございます。ゆる系日常漫画と思わせつつ、骨格の太い構成とペーソスで読ませる実力派のマンガ。今回はSFっぽさ漂うお話が多めで、漫画としての骨の太さが良くわかる巻だったと思います。なんとはなしに星新一とか藤子とかの、オールドスクールな日本SFの匂いがしますね。
そんな中でも、今回のトリである「学校迷宮案内」は白眉の出来で。この漫画は脇キャラの掘りこみが丁寧で、派手さはないが良く作りこまれてるゆえに良く回る。ので、主人公である歩鳥を外しても、十分以上に漫画になるのがまず凄い。その上で、一学年進むごとに視座と世界が変わる小学校時代を精度鋭く描きつつ、最後のオチで一気に話しをどんでん返しにしてみせるトリックの巧さ。この作者の巧さが全部詰まってる感じですね。
その上で、SF味やトリッキーな展開に頼らなくても十分面白いのがこの漫画のいいところです。キャラのツブが立ってて、その上でキャラに流されない軸のあるお話をしっかり刻んでます。一番刺さる武器だな、と思うのは全体的な郷愁の匂わせ方というか、あるあるとも少しずれた懐かしさの制御のしかた。この漫画に漂う懐かしくて、それでいて適切に遠い感覚はなかなか出せないと思ってます。それを崩さずに、ちまちまと続いてほしいところです。