イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

こんな夢を見た

幕末、京都。材木屋の風体の男が三人、路を歩いている。一人はやせ細った黒い肌。一人は異常な大男、一人は糸目の禅僧のような男である。と、不逞浪士にかつ上げされている商人。
「やりますか」
「やるか、宍戸の」
次の瞬間、不逞浪士の一人は土塀に大量の鎖で繋がれていた。土塀に突き刺さっているのは異形の棘。宍戸、と呼ばれた男の袖から滑り出した、鎖暗器である。
「十三代目宍戸梅権の裏芸「糸蜘蛛」、冥土のお土産にたんとおみなせぇ」
両の手に握った鎌が、不逞浪士の一人の喉に紅の花を咲かせた。
「な!」
「ふむう」
禅僧の風体の男が、驚く浪士の前に立った。白刃が日光を照り返して跳ねた。気合声とともに切りかかろうとした浪士は一歩も前に進まず、全身の骨を砕かれた。坊主の背中に隠された仕込八節杖がうなり、鎖と杖により滅多打ちにされたのだ。ぐずぐずになった足で地面に倒れこむと、禅僧のような男の糸目が見えた。
「往生してください」
微笑む男の目には、慈悲があった。振り下ろされた杖の一打ちで、頭がなくなる。人外の技に怯えた浪士の生き残りが、逃げようとするところを二人まとめて宙に浮いた。巨人のような大男に両手で捕らえられたのである。
「にげるのはぁ、よくねぇなぁ」
次の瞬間、ぽーんと浪士の体が宙に舞い、男たちは二枚におろされた。大男の両手に握られたのは、巨大な鉈である。
「ありがとうございます」
「いいってことよ」
「あなたたちは?」
「材木屋、白木組でございますよ」
感謝して去る商人の背中を見ながら、宍戸が呟く。
「しかし、戦国の裏芸をこんなに簡単にみしちまっていいのかね」
「いやいや、棟梁いわく、いまこそ戦国、らしいですぞ」
幕末、京都であった。
−暗転−
三人が材木問屋に帰ると、異相の老人が息も絶え絶えに横たわっていた。白木屋の主人、白木三十郎である。齢六十をこえるとは思えぬ肉の盛り上がりには、刀傷が幾重にも見えた。背中にはなにやら豪華な仕立ての侍を背負っている。ぷん、と位の高い風が香った。
「お頭!」
「ううむ」
頭をさすりながら立ち上がった三十朗はかっと目を見開く。今までの死闘を思わせるような鬼の形相であり、髪も髭も逆立っていた。
「ご無事で」
「うむ。しかし、白木屋にも時代の風が吹いてきたな…」
「といいますと」
「このお方、松平容保公。尊王の輩に護衛を殺されたところを、わしが助けた」
「ふふ…戦国ですからね、裏が表にかえりますか」
男達の笑いが、低く材木屋に響いた。
−暗転−
「ききましたか、あの噂」
だんだらの浅葱はもちろん、壬生狼の異名を取る新撰組である。その本陣で囁いているのは、幼顔の剣鬼、沖田総司
「あれか。天皇直属の鬼どもの話か。くだらねぇ話よ」
切って捨てた男の顔は、するりと男ぶりがよい。鬼の副長、土方歳三である。
「何でも松平様から孝明天皇の護衛を頼まれて、闇で動いてるとか。実際、うちのもやりあってますよ。噂じゃないんです」
「そうだな」
土方の顔が引き締まる。
「一体、どういうことだか」
後の世に剣鬼と歌われたものが多数出た幕末の闇の奥に、人知れず修羅鬼の名とともに天皇の軍勢として動いた存在があった。その闇の物語が今、明かされようとしている。

そんな夢。