イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

フロイト的身体

レオ・ベルサーニ青土社フロイトのテクスト論的読解。どうにも評価の難しい書物である。「セクシャリティの起源はマゾヒズムにある」と明白な結論を持って、フロイトのテクストを解体し分析するときの怜悧な理論。また、アッシリア美術を分析するときの正確かつ適切な指摘。それらは素晴らしいもので、筆者の博識を確かに感じさせる。
しかし、フロイトの中に観念的野心を見、筆者もその中に踊りこむとき、とたんに筆が迷う。今までの怜悧さとの完璧な決別を見せる、まさに乖離性人格障害的な論調。それは迷走し、よろけ、どうにも読みにくい。先日「シュルレアリスムと性」という感覚と理性の融合の(ある種の)完成形を読んでいただけに、どうにもそこが惜しく感じてしまうのだ。
しかしその迷走を悪筆と断じることができない奇妙な魅力、くるくる遊びをした後のような浮遊感が心地好いのも事実だ。とても奇妙な本で、貴重だと思う。