イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

灰とダイヤモンド

アンジェイェフスキ、岩波文庫。歴史的名作ながら、恥ずかしいことに読んでいなかったのでいまさら読書。さて、困った。面白いのである。この小説はまごうことなき強烈な文学作品だ。ポーランド文学であり、収容所文学であり、戦後文学であり、青春文学である。
しかし、作者の驚異的な構成力と、描写の美しさ、そして群像劇としての、青春劇としての鮮烈な物語の面白さが凄まじい。ぐいぐいと引きずり込まれ、いや、引っ張り込まれて読まされてしまう。面白いのだ。古典といえば睡眠導入剤、という話も多いなか、ここまで面白いのは単純に凄い。もしくは単純ゆえに凄い。
だが、その奥に流れる作者の激情と確かな視線は強烈だ。ポーランドという、あまたの他国に蹂躙され続けた国家への視線。第二次大戦と収容所という、大文字の『人間』への最終打撃への視線。ソ連帝国主義コミュニズムの不協和音への視線。それは文学以外に汲み取ることの出来ない強烈な一撃だ。その、身を焼く炎にも煮た文学と、引きずりまわされるほどに面白い小説の両立。まさに傑作である。