イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

オウム

島田裕巳、トランスヴュウ。サブタイトルは「何故宗教はテロリズムを生んだか」 というわけでいまさらオウムの本など読んだ。判断に困る本である。筆者は宗教学者であり、大学院時代にヤマギシ会の調査に行ってヤマギシ会員になってしまったという経歴の持ち主である。マスコミに「オウム擁護」と言われ、大学を辞めている。
さてはて、そういう個人的事情が強く滲みながらも、オウム関連の分析は丁寧かつ適切である。資料の腑分けも構造分析も良くできていると思う。しかし、「何故オウムが」という部分になるととたんに胡乱になる。あまりにも練りこみの足りない社会学的分析をベースに現代日本を語り、そこから「何故」の答えを導き出す。結果はどうにも頼りのないものだ。村上春樹の分析もまた強論の色がぬぐえない。どうにも、資料分析から一歩踏み出した瞬間、足場がなくなってしまうのだ。
資料分析以上のことがやりたかった、やらなければなかった気持ちは、なんとなくわかるような気がする。彼は当事者だからだ。そこには必然性と意味があったのだろうし、それは重要なことだ。ただ、それと別領域に踏み込む時の文字の確かさ、というのはまったくの別物だ。というわけで、評価と判断に困る本だ。