イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

インターコース

アンドレア・ドウォーキン青土社。サブタイトルは「性的行為の政治学」 非常に強力かつオフェンシブなフェミニズム批評。第一部で繰り広げられる、トルストイからシンガーまで西洋近代テクストの強烈な読みがまず凄まじい威力を持っている。作者の博識と鋭い視座が鋭利な刃物となって、白人男性中心社会にためらいなく振り下ろされる。その威力はつまり、読みの確かさと言説の強度、書き物としての精度に支えられている。
そして、筆者の言説はより根源的なものへ変わり、セクシャルな事柄がけして「自然」なものではなく、男性中心社会が制度化し強制化した人造物であることを暴露していく。特に「処女性」というタイトルで書かれたジャンヌ・ダルク論は非常に強力かつ鮮烈であり、思わず奥歯を噛み締める。
男である僕にとって、この本は非常に居心地が悪い。それは、この本の態度が非常にオフェンシブなフェミニズムであり、そこにおいて男性/異性愛者/日本人である僕は攻撃対象だからだ。喉元に突きつけられた必死の刃から、一体何を得ればいいのか。言説であると同時に行動でもある強烈なこの本は、そんな不条理を僕に突きつけてきた。
だが、ならばその居心地の悪さと不条理、非論理性を丸ごと飲み込む以外に手はないだろう。たとえ僕が無条件に加害者の位置に立つしかないとしても、この言説を受け取るべき誠実さは持つのが条理だ。重ねて言うが、この言説は攻撃的で、それゆえに僕はそれを受け取るのに幾度となく二の足を踏む。それでなければならないのだ。この本は受け流され消費されすりつぶされる惰弱な情報などではなく、怒りをこめて振り上げられたこぶしなのだから。その拳を前に、立ち尽くしながらも見つめる視座を、何とか確立しようと、僕は少し混乱した思いを抱いて読了した。傑作である。