イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

CIA 失敗の研究

落合浩太郎、文春新書。タイトルどおり、1990年代からのCIAの失敗についての分析書。「失敗」という一点にポイントを絞り、時間軸も冷戦終了以降という短い時間に絞ったためか、非常に中身の濃い分析がされている。この時期はCIAが対ソ・対国家諜報ではなく、対テロリスト諜報に舵を切るべき事件が多発した時期である。WTC爆破未遂事件しかり、アメリカ大使館爆破事件しかり。
しかしCIAはその縄張り意識、行政的に不確かな立場、予算削減、政策決定の不確かさなどさまざまな要因により、舵取りに失敗する。その結果が9.11であり、アフガンであり、現在進行中のイラク戦争である。諜報機関の声が政治化され、国家という有機体にとって一種の抗体である「自国にとって不都合な情報」が握りつぶされる。
その状況は冷戦期にもあったし、世界中の歴史の中で見ることが出来る。しかしアメリカは現在世界最大国家であり、その身震い一つで百人が死に、千人が飢え、万人が国を失うのである。自らの体の下に何があるのか。それを知らせる諜報機関がいかに機能してないか、を冷静に分析し、丁寧に調べ上げた本。良著である。