イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

武道の誕生

井上俊、吉川弘文館明治維新以降の柔道隆盛をモデルに、いかに武術が武道になったか、を分析する本。明治維新により鎖国が終り、江戸期以前の伝統が無為に返されようとしたときに、いかにして東大出身の学習院教師、嘉納治五郎が己の修めた天真楊神流、起倒流柔術講道館柔道として纏め上げ、組織を作り、発展させていったのか。
あえて柔道の発展し一本、しかも嘉納治五郎という人物の内面にまで踏み込んだクローズアップの筆致と、丁寧な資料発掘、的確な論理分析により、いかに近代化・軍国化していく日本の中で、武術が武道になり、生き残っていったかの戦術が鮮やかに浮き彫りになっている。格闘技ブーム、武士道ブームというが、それを支える日本の武術的背骨についての考察に関して、確実な一助となる本である。良著。