イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

人斬り半次郎

池波正太郎、角川文庫。というわけで再読。思えば僕の抜剣術びいきは、この本から始まったような気がする。「幕末の三人斬り」といわれ、野太刀示現流の達人だった中村半次郎と、その師たる西郷隆盛の、幕末から西南戦争までを一気に駆け抜けるような、濃厚な時代小説である。
池波正太郎といえば江戸物、薫り立つような情景の描写と人の機微、と思われがちだが、やはり流石に練達、幕末の激動、新政府の動乱を丁寧に描き、調べ、又調べるその姿勢は、どっしりと腰が深い。それと相まって、半次郎や西郷の人柄をしのばせるエピソードを随所に挿入し、風景の薫りが場面に色を添えてくる。やはり池波は凄い。
僕は時代小説が好きで、色々読む。けれんみの隆、荒唐無稽の山田、史実の司馬、情の山本。共に綺羅星のような作家だが、やはり統合的な実力、という意味では、池波が鋭く光、僕の胸を貫いて抜けないのだな、と。そんなことを再確認した読書でした。