イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

サンクト・ペテルブルグ

小町文雄、中公新書ソ連時代はレニングラードとして知られた、ロシア最大の文化都市に関する本。筆者は外務省から上智大のロシア楽教授になった方であり、ロシアに関する知識では相当なものである。
二千年のペテルブルグ・サミットに、この町で生まれたウラディミル・プーチン大統領が「お色直し」を命じたおかげで、ソ連時代の薄汚れた気は一層され、ピョトール一世とエカテリーナ二世という、二人の大帝が愛したロシアの矛盾都市は古都としての風格を取り戻したそうだ。
その空気が伝わってくるような、弾むような文体と共に、流石にロシア学への深い見識を持つ筆者、ただの旅行ガイドのような浅薄な描写には終わらない。歴史、美術、生活しなどなど、さまざまな視点からの分析を細やかに挿入してくる。
サンクト・ペテルブルグの美しい町並み、水上都市・人工都市としてとしての矛盾。帝政ロシア期の首都として、文化の中心であったが故の絢爛。さまざまな側面を内包する豊かな街を、豊かな文体と学識で丁寧に書いている。良著。