イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ヒトラーの秘密警察

ルパート・バトラー、原書房。RFSSハインリヒ・ヒムラー配下のSSとゲシュタポの、1920年代から1945年までの活動をまとめた書物。写真が豊富であり、ナチス政権掌握以前から話を始め、丁寧に記述するスタンスには好感が持てる。通時的分析は読みやすく、いかにしてヒムラー配下の秘密警察が権力を掌握したかをよく書いている。
少々アジテーションが過ぎる文面が認められ、資料の発掘が甘いところもある。が、現代を破壊しつくした行為としてのナチスを理解するうえで、ヒムラーと彼の組織の存在はけして欠くことが出来ないものであり、その理解への第一歩としてこの書物は悪くないと思う。ただし、文章も写真の選択も扇情的だ、と心にすえた上で、であるが。(ナチスという問題を扇情的でない場所から語ることが出来るのか、という課題は答えることが困難(もしかすると不可能)であるが、それでもなお、プロパガンダの言説が常にある種の危険性を宿していることは意識の片隅において問題ないだろうと思う)
個人的には、アレント「悪の陳腐さについて」を併読するとよいのではないかと感じた。