イマワノキワ

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シリーズ現代思想ガイドブック ロラン・バルト

グレアム・アレン、青土社青土社が積極的に翻訳しているラトリウィッジ社の入門書シリーズ。毎回特定の思想家を取り上げているが、今回はフランス現代思想の博学、テクスト理論の第一人者、浮遊する言説者、ロラン・バルトである。
このシリーズはレギュレーションがある程度固まっており、最初に取り上げた思想家の活動と功績をまとめ、残りのページを使用してその分析を行っている。バルトの活動範囲は広く、書き上げたテキストは膨大な量に及ぶ。纏め上げるのは困難だと思いながら読んでいたが、時間経過と、発表したテキストのみをよりどころにする一転突破の分析法が逆に功を制した感がある。
バルトはさまざまな立場を泳ぎ、さまざまな言葉を紡ぎ、さまざまな理論を発表した。その捕らえにくさを捕らえにくさとしてあえてみとめ、その上で、あくまで彼の書いたもののみに依拠して論を進めていくのは、バルトの思想を追いかける入門書として誠実かつ適切な姿勢だったと思える。
バルトのテキストはラベルを貼り付けにくいくせに、さまざまな領域において(批判対象という場合も含めて)重要な言説であると僕は思う。それは、この章の最後がたぶんにバルトの現代性に批判的な「バルト以降」であることにも現れている。そんな思想家であるバルトへの、確かな足がかりとして、この書物はなかなかよいと思った。