イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ハチミツとクローバー 10

羽海野チカ集英社。というわけでハチクロ最終巻。今回は早く出た。何を言ってもバレになるので
というわけで終わりです。本編が半分、残りを番外編二本、短編二本で分け合う構成。本編のほうは、9巻を読んだときに「終われる漫画は少ないので、しっかりと終わって欲しい」と感想を書いたが、そこらへんに議論の余地を残す終わり方だったな、とは思う。僕は修はぐでずっと来たわけですが、三角関係の話は飽くまで森田さんと竹本くんがはぐちゃんに矢印伸ばすつくりだったわけで。修ちゃんと恋、ってのが結びつく尺が足らなかった部分も含めて、不完全燃焼、と感じる人は多いんじゃないかな。
それはそれとして、個人としては終わったなぁ、と思いました。はぐちゃんが女の子ではなくて「強い女」(最終話、森田さんの台詞)になって終わったということは、まぁいろんなことにどうあがいても言葉が足らないこの枚数の中で、相当満腹した部分でした。ずっと、切れ味鋭い人間観察を、素トンすとんと鋭く貫く漫画力で形にしてきたこの漫画が、こういうなんともしっくり来ないけどここが落としどころだな、と奇妙な満足感を覚える場所で終わったのは、僕個人的には喜ばしいことです。
この作品は嘘の中にホントがあって、本当を気持ちい嘘のヴェールで包んでいた作品だったと思うわけです。それが、まぁ恋が終わっても、体が傷ついても、別れが起きても、それでも続く形で、しかも劇的に終わらせたのは、やはり羽海野先生の漫画力だなぁ、と。ひどく抜いたシーンから不意打ちに、柔らかい部分を貫通する言葉が出てきたり、きつい場面でも笑いを忘れなかったり、アンバランスでありながら最適な場面を、丁寧に書き続けたこの漫画が、こういう風に終わったのは、僕は満足しています。
しかし、その終わりと同じくらい脳髄を吹っ飛ばされたのは短編「星のオペラ」です。何がまずスゴいかというと
アンキパン
なんていう小道具から、ここまで響く物語を作れるところ。そして、個人的に思ったのは「SFだなぁ」ということ。ひどく稚拙な宇宙がらみの描写も、完全な異郷を書き出してくる砂の惑星描写も、すべてひっくるめて、大きなもので小さなものを掬い取り、小さな部分を描くことで大きなものを書ききるSFだな、と思いました。
とにかくこま一つ一つ、台詞の一個一個がかちり、かちりとはまっていて恐ろしいぐらいに完成度が高い漫画です。切れ、冴え、才気。そういうものの塊のような、鋭く尖った漫画。こういう漫画がかけるので、羽海野先生には、漫画を是非続けて欲しいと思いました。面白く、素晴らしく、いい漫画だった。