イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

飛び道具の人類史

アルフレッド・W・クロスビー、紀伊国屋書店。サブタイトルは「火を投げるサルが宇宙を飛ぶまで」 サブタイトルのとおり、投石からV2ロケットまで、アトゥル・アトゥルからアポロまで「物を投げる生き物」としての人類を取り上げた本。
「物を投げる」「火を投げる」生き物として人類を捉える視座がまず面白い。人類の二足歩行が可能にした投擲動作の特殊性を、人類学的な視座から分析・解析し、技術の発展を丁寧に追いかけている。自然それは武器の発展史になり、戦争の発展史にもなる。横幅の広い取り組みである。自然抜け落ちる部分がないでもないが、粗雑さが魅力を覆い隠すほどでもない。
テーマ史ごとに章立てを作っており、時代が前後するので少々困惑する。が、たとえば火薬の発達史であったり、火砲の発達史であったりする個別テーマへの取り組みはなかなかに丁寧であり、各テーマは有機的にリンクしている。このリンクが少々恣意的に思えるのもまた、減点の対象かもしれない。
全般的に大雑把で駆け足だが、それゆえの読みやすさと大上段に切り落とす気持ちよさがある。なにより「火を投げる」生き物としての人類史、という視座の新規さ、そしてそこから見えてくる新しい見識は、なかなかに稀少だ。ようよう人類は人類を殺す才能があることを、この書物もよく教えてくれる。良著。