イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

現代の海賊

土井全二郎、成山堂書店。交通ブックスシリーズの一冊で、「きっぷの話」や「日本の灯台」といったのどかなタイトルが並ぶ中、サブタイトルである「ビジネス化する無法社会」にふさわしく、モルッカ海峡の現状をメインにした現在の海賊の話。
現在の海賊、といいつつも、カリブの海賊や私掠船、倭寇といった過去の海賊に関するさまざまな話も交え、海賊全書といった様相である。筆は色んなところに横滑りするし、緻密な論理構築はないが、元ジャーナリストの筆者の気質もあってか、現在の海上犯罪の状況や原因、それに対する対策などを生々しく伝えている。
筆が横滑りするとはいっても、関係のない論を積むわけではなし、そのような荒さもひっくるめてなかなか面白い。海賊といえば過去の遺物と考えがちだったが、新聞取材を通して体験した現状を、国際法の穴や具体的な海賊の手口など、非常にハンディな話題を積み重ねて解りやすく面白く書いてある。なかなか数が少ないテーマだけに、興味深く読めた。良著。