イマワノキワ

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技術の哲学

三枝博音岩波書店。1951年に発行された技術史論の再発行版。
なにぶん50年以上前の本であるので、書き口が堅くとっつきにくい印象がある。が、中身は非常に堅牢かつ丁寧な技術史論であり、いったん飲み込んでしまえばするりと読める。ギリシャから産業革命までを扱った第一部「歴史における技術」と、技術論・技術史論を扱った第二部「現実における技術」第三部「理論における技術」の三部構成であり、各部ごとのタイトルに偽りのない、わかりやすい構成である。
内容的にはカント−マルクスに論理的立脚点を預けつつ、当時の諸理論に幅広く目を配った形である。徹底的な西洋偏重の技術史論は、今見るといささか片手落ちのような気もしないではないが、こと西洋技術史という観点から見ればしっかりとした論理の背骨のある書物に仕上がっている。特に第一部の技術史記述は具体的かつ着眼点が的確で、非常に面白い。
一言添えるのであれば、この本が書かれた1951年から50年以上の時間を重ね、おそらく長足の発展を遂げた技術(と経済)を省みる鏡としての役割も十全に果たしうる書物だと思う。語り口だけではない旧さもたしかにこの本にはあるのだが、その旧さの原因に思いをめぐらせることで見えてくる部分も多々あるのではないか。
この本単体でも十全に面白いし、他の本に接続して思考を広げてもまた興味深い。良著。