イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

錬金術大全

ガレス・ロバーツ、東洋書林。オカルトでも、化学の前風景でもない、錬金術としての錬金術の本。序文における自己定義を囲繞すると「錬金術の初等読本」
正直文字数が少なく食い足りないが、オカルトでも科学史でもなく、12世紀から発展した一種の文化としての錬金術、という視点の絞り方はそれ自体非常に興味深い。錬金術の歴史から始まって、著名な錬金術師、理論と実践、そして錬金術における言葉遣い、という構成になっている。先にも述べたが各章の文字数が足らず、散漫な印象は拭えない。
のだが、ほぼ毎ページごとに乗っている中世〜ルネサンス期の錬金術図版はいかにも「いかがわし」く、それを見ているだけで楽しい書物でもある。内容にしても、突っ込み加減が足らないだけでけして間違った論を強引に進めているというわけではない。特に終章の「錬金術における言葉遣い」はほとんど暗号文ともいえる錬金術独特の言い回しにフォーカスを当てており、なかなか他には見られない視点である。
少々横に広げすぎて密度が薄くなった感はあるが、触って損がある書物でもない。むしろ錬金術をただ錬金術として紹介する本はなかなかないので、良い本だといえるだろう。