イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

パラレルワールド

ミチオ・カク、NHK出版。超ひも理論の第一人者による素粒子論・宇宙論の本。日本語サブタイトルは「11次元の宇宙から超空間へ」英語サブタイトルは「A journey through creation,high dimensions,and thefuture of the cosmos」
なんとも盛りだくさんな内容で、アインシュタイン物理学の創立からひも理論、M理論に至るまでの宇宙論の歴史と詳細、1990年以降の宇宙観測機器・素粒子実験器具の発展、素粒子物理学から見た宇宙の現在と今後などの内容を含んでいる。極力専門用語は押さえられており、論旨の進め方も明快である。
専門用語や知識が必要な部分を省略し結果だけを書き記す記述形態により、ところどころ「本当にそうなるのか?」と首をひねる部分もある。僕は物理学や天文学、数学の専門的知識に長じているわけではないので、読みやすさのためとはいえ過程の省略された結果を鵜呑みするわけにはいかないのだ。そういう部分に気をつけて読み進める必要のある文だとはいえる。
ただ、この10年で爆発的に宇宙論素粒子物理学が発展した(ようである)ことはそれだけで単純に興味を惹かれ面白い。無視できない省略が散見するものの、しっかりと語るべきところではたいてい地面に足の付いた粘り強い、その上読みやすい記述がしてある。かといって論理の運びを地名的に間違えているとか、意図的に捻じ曲げている部分はない。
一言で言えば非常に誠実な本であり、テーマも書き味も非常に興味深い。いかに平易に書かれても扱っている題材は深遠で、それゆえに噛み応えがある。そして、その噛み味は飲み込むのに労力を必要とするとはいえ、真っ直ぐな論理に支えられた平明なものである。良著。