イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ヘッピリムシの屁

ウィリアム・アゴスタ、青土社。とりあえずこの日本語タイトルはどうかと思うが、サブタイトルのとおり「動植物の科学戦略」の本。
毒から始まって薬、フェロモン、誘引物質などなど、生物学界における化学反応を非常に幅広く扱っている。生物と生物、生物と環境、生物と人間と、さまざまな角度から生物界の化学反応を扱っており、ヴァラエティーに富んでいて面白い。
書き口が少々こなれていない感じを受けた(訳文のせいもあるかもしれない)が、内容自体は非常にわかりやすく、動植物の生態も必要十分に説明されている。化学物質の作用も分子構造のカメノコにまで突っ込むことなく説明されており、化学の知識がない僕にはとてもありがたかった。
特に興味をそそられたのは生物が作り出した化学物質を人間が利用する部分で、薬・毒はもちろんのことながら、(冷静に考えれば当たり前だが)絹が蚕の体内における化学反応の産物だったり、誘導物質を利用して害虫の捕食者を農薬代わりに使う計画など、なかなかSFテイストあふれる事柄がたくさん書かれている。
少々「いかにも」なエコロジーくささが鼻に付くが、そこらへんはご愛嬌のレベルだろう。内容や説明の仕方は非常にわかりやすいし、面白い。良著。