イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

「日米関係」とは何だったのか

マイケル・シャラー、草思社。アメリカサイドから、1945〜1970年の日米関係を、主に防衛・貿易の視点から分析した本。英語版は1997年、日本語版は2004年発行。サブタイトルは「占領期から冷戦終結後」までとあるが、70年以降は一章を割いているだけである。
1945年の敗戦から1972年の沖縄返還までと、アメリカの占領政策期に重点を置いた歴史分析である。徹底して実務的な記述であり、政治史らしいある種の「建前」の排除を徹底した姿勢がすがすがしい。冷戦構造の変化、日本の国力回復、それに伴う日米関係の力点変化などを、徹底した叙事記述で追いかけている。
日本では微妙にタブー視されている(ように思える)日本の核武装を巡る攻防、在日米軍核武装を巡る問題も、この本では丁寧に論じられている。というか、東アジア共産化による『ドミノ理論』を重視した当時のアメリカにとって、核の抑止力は重大な防衛問題であり、この時期の(そしてもしかしたら今の)日本の核、という問題を避けては語れるものも語れない。そこにまっとうに筆を入れていて、好感を抱いた。
他にもCIAによる自民・自民よりの社民への資金提供などなど一種扇情的な話題もあるが、それも一つの事実として、他の話題と温度を変えずに論じられる。歴史からスキャンダラスな事象だけを引っ張り出すのではなく、それも含めての敗戦後の日米防衛・貿易関係、というテーマを徹底して掘り下げ、一定水準以上の丁寧な記述と理論でその運動を書き記す。解釈や意見を必要以上に引っ張り出さない冷静な視座が、そこにはある。
ここら辺の話は、最近過熱気味な議論が横行し正直食傷していたが、この本の徹底して平板とすらいえる冷静な歴史学的記述はほっとするものであった。可読性も低くなく、論理の混乱も見られない。良著。