イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

投資銀行家が見たサウジ石油の真実

マシュー・R・シモンズ、日経BP社。ひどい邦題だが、各種石油機関に投資している石油エキスパートが、サウジアラビアの石油生産を独自に研究、分析した書物。原題は「Twilight of the desert」
石油採掘」という見知らぬジャンルだが、「サウジアラビアは石油埋蔵量・石油発掘予想を楽観視しており、近いうちに枯渇する」という刺激的でスキャンダラスな論点を牽引力にするすると読める。筆者の立場が立場なので、具体的なカネの話が頻出し、そこは生々しい。
のだが、主張を裏付ける技術論となると"門前の小僧"をでない、そうである。僕も石油採掘に専門的な知識があるわけではないので、受け売りだが。門外漢がやりがちな、自分で考えた理論を手前勝手に暴走させるのではなく、技術論文だけで徹底的にくみ上げる姿勢は誠実だ。だが、それをワンクッション精査してくれる専門化が間にいてもよいかな、と思った。
しかし、門外漢であるが故に、石油採掘の技術的な話をゼロから丁寧に話す部分は、非常に飲み込みやすい。技術の解釈は別として、技術それ自体の解説は丁寧でなかなか興味深い。スキャンダラスな主張も声高に叫ぶのではなく、自分なりの足場を固めて発言している、共感の持てるものである。専門である石油ビジネス周りの話しは言わずもがなである。
主張と内容をばらして読むことが必要だが、専門外の知識をわかりやすく伝えてくれる。良著。