イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

三種の神器

稲田智宏、学研新書。タイトルのとおり、剣、鏡、勾玉の三種の神器の発生とその歴史についての本。サブタイトルは「謎めく天皇家の秘宝」だが、あとがきで作者が『気に入らない』と述べているように、あまりセンセーショナルな内容ではない。
ではどのような本科というと、資料と研究を丁寧に調査発掘し、新書にふさわしいコンパクトな取り回しにまとめた本である。要するにしっかりした研究書で、かつよく整理されていて読みやすい。神器とはいっても熱田に置かれている剣、伊勢に置かれている鏡についてはそれほど触れず、もっぱら宮中に置かれている神器について語っている。
神器の発生過程やそれにまつわるエピソード、霊力を宿した神秘深奥としての神器、歴史・政治の中の神器と、さまざまな角度から、さまざまな資料を駆使して三種の神器を調べ上げている。具体的な祭祀や縁起の商会みならず、歴史書の解釈や神道概念の分析なども行っており、かつ丁寧な資料読解と破綻のない論理展開で説得力が高い。
横幅の広さのわりに、食い足りなさは感じないし、新書にありがちな表面だけタッチした軽々しさもない。一次資料と研究書両方丁寧に当たり、自分の説を持ちながらも事前の研究に耳を傾ける柔軟性がある。加えて言えば、それらを解りやすく纏め上げる文章力で本を組み立てており、理解しやすい。
テーマに対して真っ向相撲を取りつつ、軸のブレがない丁寧な記述が、可読性と相まって非常に面白く、読みやすい。良著。