イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

図説「最悪」の仕事の歴史

トニー・ロビンソン、原書房。英国チャンネル4の歴史番組をベースにした、イギリスの歴史読本。切り込む視点はタイトルどおり「最悪の仕事」で、労働時間・労働環境・衛生環境・賃金・安全環境などから「最悪」さを判別している。
場所は徹底してブリテン島限定だが、時代はロンドンがロンディウムというローマ植民市だった時代から始まり、中世、チューダー朝、スチュワート超、ジョージ王朝、ヴィクトリア朝と細分されている。それぞれの時代ごとに例えば「硝石収集人」とか「マッチ職人」など個別の職業をピックし、読みやすい文体で書き上げている。
時代の幅広さと、取り上げる職業の多さは特筆に価するし、幅の広さの割りに取材は細かく、当時の職業状況への言及は丁寧である。さすがにエンターテインメントであることを意識しているせいか、文章はとにかく読みやすい。きつくて汚くて危険で、安くて退屈な職業がこれでもかと乗っており、カタログ的な見方としては悪くない。
もちろん文句がないわけではなく、なんというか、「昔は悪かったな、あっはっはっは」と笑い飛ばして省みないエンターテインメントの視座は、どうしてもそこで止まってしまうものだ。娯楽書物にそれ以上を求めるのも酷なのかもしれないが、考察の深さという点では少々問題がある。加えて、女性職業差別への言及がほとんどないのも個人的には気になった。
とはいうものの、手に取りやすさと横幅の広さ、記述の丁寧さはなかなかのものである。良著。