イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

エマ 10

森薫エンターブレイン。「明日からメイドを書いたら腕切断」という法律が施行されても、多分メイドを書くであろう漫画家のヴィクトリアンロマンス最終巻。ついに。遂に完結であります。まぁ話的には七巻で終わってたといえば終わってたんですが、短編の切れ味が異常によかったので問題はなしだよ。
んで。前半は各キャラをピックした短編。相も変わらず漫画力が高いなメ神(メイド神の略)は。アーサーのイートン校生活が、微妙に今も変わらぬブリテン野郎のブルジョア具合を垣間見れて好みです。他の短編も必要なものを必要にまとめていて、コンパクトかつ丁寧な仕上がり。やっぱ僕はこの人の出す空気がすきなんだなぁ、とつくづく思った。
そして今回本命はたっぷり三話かけた最終回。まさにグランドフィナーレにふさわしい、ほぼフルキャスト大盤振る舞い。このマンガのキャラクターはほぼ全員好きなので、バンバン出てくれて嬉しいです。そしてただ画面に写るだけではなく、映り行く時代、変わり行く人々の気配を匂わせつつ、今まで培ってきたキャラクタ性の貯金を使いきる丁寧な描写。贅沢な漫画だ。
個人的にスゲェ、と思ったのが、ラストエピに子供組をきっちり成長させた外見で出してきたところ。ローティーン以下は一二年で一気に見違えるので、ガッツリ書きこんで空気作る労力は本当に凄いと思う。ヴィヴィーが美人になりアーサーがありえんほどのイケメンに育っているのが、嬉しいやら寂しいやら。漫画という媒体で、流れる時間の寂しさを感じさせるのは本当にありえない。
漫画は続くことより終わることのほうが難しいメディアだと、僕は思っています。終わり時を間違えて、作品として死んだ漫画は山ほどあります。そんな中、この最終三話はありえないほど幸福に漫画を終えることが出来た例として、特筆しても良いと。そう思います。マンガとして積み上げてきたキャラクター、世界観、空気。そういう財産を全て使い切り、余韻を残しつつも文句も悔いもない幕引き。良い漫画であった。