イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

劇画・長谷川伸シリーズ 沓掛時次郎

長谷川伸小林まこと講談社。言わずと知れた股旅物の元祖、長谷川伸の原作を小林先生が漫画にしたもの。イブニングでの連載をちらちら見て、単行本からなんかオーラみたいの出てたので買った。大当たりでした。マーロウより十年ぐらい早く原作は書かれているのだが、ありえないぐらいに完璧なハードボイルドで死ぬかと思った。
まず、主人公の時さんが完璧すぎですな。強くて優しく仁義で人情、格好悪い瞬間がない。正確に言うと、おもらいのふりをして団子を買ったり、お金がなかったり、地面を舐めるシーンは在る。んだが、ハードボイルドはやせ我慢なので、土をかむシーンはむしろ重要かつ必要であり、小林先生の漫画力でしっかり描写してくれています。一番好きなシーンは、おはぎを食って時さんが「うめぇ……」って言って涙ぐむシーン。
一宿一飯の義理で旦那を殺され、他ならぬ時さんに人情で助けられ、逃亡生活を共にする親子の描写もいい。安宿の主人の人情、わるい奴等の悪さ。こう来て欲しいところにずぱっと来る気持ちよさに流される自分を鑑みるに、ああ年取ったなぁと思うが、脳味噌の裏ッ側にビリビリ来るんだからしょうがない。原作の力ももちろんありますが、小林先生の絵の巧さ、漫画力の高さがここまで気持ちよいものに仕上げてくれる根っこかな、と思います。読み終わった後、シリーズ前作の「関の弥太ッぺ」も買うと強く誓う。ベテラン中のベテランが持ってる、骨太なパワーってヤツを感じる。そんな漫画でした。