イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

蝋燭姫 1、2

鈴木健也エンターブレイン。フェローズで連載されていた、フェミニズム中世ロマンス。百合というには少々ガチっているので、フェミニズムロマンスで良いと思う。基本構造はいわゆるロマンスを踏襲しており、高貴な姫と愚直な従者、襲い来る苦難、敵と仲間、陰謀と意志。しかし、無論2010年も終わったこのご時勢、ロマンスだけでは渡っていけない。
パワーのある素朴な描線と、フェティシズムを感じさせる中世の絵力(書き込む余力があるときの背景は、マジでスゲェ)があいまり、猥雑で力強い時空が展開されている。ここに従者が女性であり、黒人種であり、被差別階級であるという三捻りが混じり、単純なハーレクインとは異なる、意図された混迷のパワーが生まれてくる。
ロマンスが理想を追いかける戯画だとすれば、この話はファンタジー化した「薄汚い中世」を徹底的に追いかける、という意味合いでロマンスである。姫君は全てを奪われ、豊かではなく、高貴ではなく、美しくもなく、高潔でもなくなってしまう。偶像としての姫が、それを手に入れるのを阻んでいた性別も社会的地位も感情的なしこりも、全ての障壁が消失しロマンスがその存在意味を失ったとき、従者の取った行動は非常に納得のいくものだ。ロマンスとは偶像の追跡であり、高嶺の花には触られてはいけない。
しこうしてその上で、この漫画がフェミニズム漫画足りえてるのは、その先があるからだ。ロマンスが破綻した後の荒野がどうなるか、はネタバレになるので避けるとして、僕個人としては納得のいく終わりだった。男性に対して、女性に対して、世界に対して一応の回答を出していると、僕は思う。
マンガとしては山盛りフェティッシュ詰め込んだ漫画で、油断した女体を描く事に情熱燃やしてんなー、と感じた。あとリョナい。フェローズリョナ要素分厚くないすかね? まぁそこは横に置くとして、かなりの漫画背筋を持った傑作漫画である。こいつぁスゲェぜ。