イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

緋弾のアリアAA:第9話『家庭訪問』感想

ほのぼのとクソレズと暴力が交錯するアニメ、そろそろクライマックスが見えてくる第9話。
AA世界ではかなりのパーフェクト先輩として自分を保つアリアが、あかりの不都合なポイントにギリギリと迫る話でした。
緩く楽しく友情してたら、犯罪者がマシンガン抱えてお礼参りに来るアリア世界はほんと、暴力に満ちてるな……。

いつもは楽しい淫夢から始まるAAが悪夢から始まったことからも判るように、今回はお話をまとめるためのシリアスな展開に滑り込んでいく回であります。
アリア先輩があかりの薄暗い側面を気にかけていたのは、結構前からちゃんと描写されていたことでもあり、タメていた要素を回収しにかかったとも言える。
間宮の家を襲った(らしい)悲劇や、染み付いた殺人術の細かいところはあかりちゃんの口から説明されたわけではないので、まだまだシリアスの入り口って感じですが。
露骨に『このままだと死にます』と額に貼り付けてある妹のフラグも、回収しきってないしね。

今回のお話は合間合間に楽しいクソレズストーカーの奇行やら、チャンスを見つけてはイチャイチャするライきりなんかを挟みつつも、あかりちゃんとアリアの関係を問い直す話です。
アリアがあかりを糾弾する言葉はいちいち正論なんですが、あかりちゃんが抱え込んでいる背景を考慮すると、多分印象が変わるんだろうなぁ。
武偵高校では評価されない殺人技を隠し、殺さずのアリアに憧れたあかりちゃんが、どういう体験をしてきたのか。
このアニメチャランポランのようでここら辺のヒントは巧く出していて、一種身勝手な憧れを押し付けた結果アリアに縁切りされたあかりちゃんの事情を、明言されなくても推測できるようになってます。
第2話で唐突に出て来てトラウマフラッシュバックさせるだけさせて帰った犬も、仕事のしがいがあるってもんだ。

次回予告を見るだに話はさらに加速するようで、今回分かたれた二人を時間が癒やす、百合漫画みてーなヌルい展開は期待できそうもありません。
毎週意味ありげに陰謀を企んでいた夾竹桃さんも動くようだし、一気に過去を切開し、友たちの助けで乗り越えるルートが、一応ハードコアアクションの側面も持ってるこのアニメにはふさわしいってことでしょうね。
キャラの立った濃い口レズがキャイキャイするだけで面白いアニメではあるのですが、この展開に持っていくために積み上げてきたモノの量を考えると、こうまとまるのは必然ではあるか。

僕はこのアニメの子たち結構好きなので、隠している自分をさらけ出し、より自分を好きになれるようなお話を展開してくれると良いなぁと思っています。
これまで楽しんでいたクソレズコメディは別に嘘ではないけれども、コメディエンヌながらもこの話のキャラクターたちはシリアスな世界に生きていて、『誰得シリアス』などという言葉で蔑されそうな要素があってこそ、笑いと可愛さを振りまいてくれるわけで。
コメディ部分だけでよかったなどと言われないように、暴力と悲惨にもしっかり向き合って描いてほしいものですし、今回アリアが見せた真剣な表情はそこに立ち向かう覚悟が少し見えて、好きになれるシーンでした。


自分にないものだからこそ憧れたあかりからアリアへの視線と、戦妹の影を見ぬいてシビアに判別する目を持ったアリアの視線。
同じ風景を見ているようでいて、あかりちゃんが過去を隠した結果、バラバラだった方向性をアリアが確認した。
メイン二人はこういうシリアスな話をしていたわけですが、その周辺をうろうろするレズ共はいつもの様に元気で優しかったです。
二人だけだと空気が重くなりがちだったと思うので、賑やかしをやってくれる脇役たちは実際貴重。

特に高千穂さんと志乃はすっかり仲良くなってしまっており、『君ら一応、ライバル的ポジションじゃなかったっけ?』とツッコんでしまった。
志乃の隠せてない汚物っぷりをスルーしてアリアに夢中なあかりちゃんを見てると、おそらく親友以上の脈はないわけで、割れ鍋に綴じ蓋でまとまっちゃうのもありかもしれんね。
あとライカの麒麟拒絶もすっかり弱々しいものになっていて、クリスマス辺りには一線超えてそうなクソザコレズを祝福してあげたい気持ちになった。
まぁライカは素直になるまでが物語という、非常に正統派な百合キャラなのであり、形だけでも拒絶はしないといけないよな。

このアニメってカップリングによって全く異なる話が展開されていて、レズ汚物として暴走することで笑いの大半を担当している志乃&高千穂と、複雑な自意識に悩みつつ麒麟というパートナーと、性欲まで含んだ関係を一歩ずつ進んでいくライカと、憧れと屈折をアリアに叩きつけながら苦難を乗り越えていくあかりちゃんとでは、描かれていることがジャンルレベルで違う。
話数ごとの主役に合わせてアニメのジャンルを切り替え、違う楽しみを届けてくれる切り分けが嬉しかったりもするわけですが、同時に彼女たちは同じ作品空間・作品時間を共有し、相互に影響しあう友でもあるわけで。
今後シリアスな方向に雪崩れていくとしても、巧く間合いを読みつつ、別ジャンルの住人たる脇役たちにも見せ場がほしいところです。

どちらにしても、あかりちゃんがシビアな状況に追い込まれる今回のお話において、アホやって空気を賑やかにし、肌色シーンで空気を抜いてくれる友人たちが、軒並みあかりちゃんを大好きでいてくれていることが、思いの外ありがたかった。
いろいろひねた眼で見つつも、自分はこのアニメの純朴性というか、『あかりちゃん大好き! あかりちゃんの友達もみんな大好き!』という、愛情で纏まってしまうシンプルさが一等好きなのだなぁ。
あかりちゃんがシンプルではない側面を出してきた今、オバカ要素と並列してお話を支えている『まっすぐな愛』を担うのは今回賑やかしだったキャラクターたちなので、今後予測されるシリアス展開のなかでも活躍して欲しいところです。
ヌキがなくなると途端に画面が間延びし始めるのは第5話で分かったので、そこら辺をどう乗り切るかも気になるところね。

演出の話をすると、監督自らがコンテを切ったのもあってか、アリアAAに特徴的な演出-速いカット割り、クローズアップの多様、人物と無機物のシャッフルなど-が更に目立っていた印象を受けます。
今回のようにシリアスとコメディの際にいる話だと、平和な風景の中に不穏な感じを醸し出せるフラッシーな演出はいい仕事するわね。
川畑監督がシャフト系列の出身なので、『動かさずに動かす』方法論の一種なのかもしれないけど。

というわけで、いつもの賑やかなアリアAAを意識して演出しつつ、お話の最終コーナーを回る話でした。
特徴的な演出がストーリーの展開と良い噛み合い方をして、印象的なエピソードになったと思います。
今回曲がったコーナーからどんな景色が見えるのか、そしてどんなゴールに辿り着くのかは今後のエピソード次第ではありますが、なかなか良いコーナリングだったのではないでしょうか。