イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Go! プリンセスプリキュア:第47話『花のように…! つよくやさしく美しく!』感想

年も開けたし最終決戦突入! というわけで、ホープキングダム開放回でした。
とは言うものの戦いの推移や結果はそんなに重要ではなく、大事なのは幻影の中で与えられた希望を否定し、自分の信じる道を再確認すること。
主人公はるかの歩いてきた道をわかりやすくまとめると同時に、敵対者として光の道を際立たせたクローズの物語も、今回纏まった感じがします。

はるかの成長はやっぱり第39話で完成している感じがあり、記憶を奪い幻の中に閉じ込めても、そこまで厳しいピンチという感じはしません。
雪に耐えて咲くスノードロップを思い出すこと、自分が歩いてきた凸凹道を再起することで幻影を破壊し、自分自身の夢に立ち返ってくる頼もしさは、キャラの成長加減を見誤らない安心感があります。
まぁ夢を支えてくれた恋人に『もうお前は頑張るな』と言われる経験を乗り越えた女が、たかが精神攻撃程度で潰れるわけないよねーっていう。

今回のお話は最終決戦前に作品のテーマ全部を総まとめにするエピソードでして、『夢が叶うという結末ではなく、終わりのない過程を歩ききるためには『強さ』と『優しさ』と『美しさ』が大事』というテーマを、もう一度わかりやすく言葉にしていました。
はるかが見せられた幻影のように、何もかもが完璧に上手く行って、終わりも始まりもない時間の静止した世界というのは、時々夢に願ってしまうものだけど、実現はしない。
はるかが喝破したように、そしてこの物語が描いてきたように、生きること、夢見ることには必ず痛みと困難を伴い、ともすれば折れてしまうこともある。
しかしその労苦を完全に拒絶することは出来ないし、今回の幻影が不気味に示していたように、それは不自然なことでもある。
痛みを伴う凸凹とした道を歩くために必要なのが、『強く』『優しく』『美しく』の三条件であり、与えられるだけのプリンセスではなく、自分から学び勝ち取っていくグランプリンセスの姿勢なわけです。


はるかは今回そこに辿り着いた(というよりも、既に辿り着いていることに気づいた)わけですが、それは一人で歩けた道ではない。
プリキュアの仲間や友人、家族といった支えとともに、教えを与えてくれたシャムールが、彼女の歩みには大きく影響しています。
はるかが力強く自分の決意を語るとき、主役たちだけではなくシャムールにも時間をたっぷり使い、その言葉が染み入っていく様子を描いてくれていました。
これは『教育者』『文化人』『大人』の代表として、ヘンテコな声の猫妖精をとても大事に描いてくれた、このアニメらしいシーンだと思います。

戦火に追い立てられてやってきた異界でも、教え子と教育の可能性を信じてレッスンを続けたシャムールが、自分の教えの先を行くはるかの決意を聞いた瞬間の表情。
それは驚きであると同時に、大きな喜びでもあるはずです。
第33話で主役を担当し、『夢を叶えたはずの大人でも、まだまだ永遠に夢のなかにいる』という、スケールの大きなテーマ描写を可能にしたシャムール。
そんな彼女の夢、『教え子が大きく羽ばたく』という瞬間をしっかり捉えてくれたのは、彼女の大ファンである僕にとっては、とてもありがたい演出でした。
今回はるかが辿り着いた『永遠に夢を追いかけ続ける』という境涯は、実はシャムールや他の大人たちの姿で事前に示唆されていたものでもありまして、プリキュアになれなくても強く正しく美しく、夢を生き続けている先輩たちの代表として、シャムールがいたのかもしれないなと思います。

夢を叶えて、その先にある夢を追いかけ続けて、いつか人生の歩みを止める。
はるかがこれから目指す、とても理想的で綺麗な生き方はプリンセスの幻影なんかよりずっとお伽話で、絵空事の綺麗事です。
でも物語という装置は、そういうあまりにも綺麗すぎて信じ切れないような真実を、真顔でまっすぐに言い切ることも、大事な仕事だと思うわけです。
時々こうやって語り直してくれないと、強くも正しくも美しくもなりきれない僕たちはそういう理想と真実を忘れてしまうわけで。
そして、プリキュアが女児アニである以上、もしかしたらこのアニメーションが初めて出会う物語かもしれない存在をメインに据えている以上、この真っ向勝負のどストレートな語り口ってのは、大事だしパワフルです。
別の女児アニの言葉を借りれば『みんなが進む道は明るいって、未来は美しく輝いてるって、私たちが言わなきゃ、誰が言うんだ!』ってことを、照れずに、真っ直ぐ、視聴者の(少なくとも僕の)心に届くように描いてくれるこのアニメは、やっぱ素晴らしいアニメでしょう。


はるかが一つの境涯にたどり着くために支えになったのは、実は味方だけではありません。
厳正の世界の中で唯一の実体として、はるかを誘惑し続けたクローズさんも、光を生み出す影としての仕事をしっかりしていました。
『大した夢じゃねぇんだろぉ!』『夢はお前を傷つける』『お前は終わらない夢を追いかけ続けるんだよ!』などなど、クローズさんのトス上げはマジ名台詞過ぎて、彼がプリキュアの理想を磨き上げる砥石役をやってくれなければ、このお話しの切れ味はかなり鈍っていたでしょう。

『"やはり"クローズ様の作戦は失敗か』というセリフから考えると、偽りの理想をフローラに与えても効果はないと、クローズさんは感じていたように思います。
憎悪をむき出しに、暴力を片手に何度も何度も立ちふさがっても、自分の想像を超えて立ち上がるフローラに、クローズさんは一種の憧れのような感情を抱いているのかもしれません。
少なくとも、その精神の強靭さを認めてはいるのでしょう。
もし仮にフローラが幻影に囚われたままだったら、クローズさんはずっと幸せの青い鳥を演じ続けることになります。
静止した永遠の中で、憎みつつ憧れる存在と落下し続ける可能性を睨みつけつつ、フローラの希望を演じ続けたクローズさんの気持ちがどんなだったのか、少し気になる所です。

いやだってさ~、フローラが自分と同レベルのゴミクズ人間だったらマジ一生二人きりだよ?
それを可能にしたのがディスピア様への忠誠なのか、フローラへのライバル心なのか、はたまた別の感情なのか、僕はとっても興味が湧くわけですよ。
もともとクローズさんは、キュアフローラが好きで憎くて好きすぎて頭おかしい敵幹部だったわけですが、今回ほぼサシで一話貰った結果、彼が抱える愛憎がより深い陰影を与えられた感じがありますね。

というわけで、最終決戦第一章として、主人公が代表する作品のテーマを整え、ライバルとの魂の対話を済ませる回でした。
最終目標は達成したけど、実質的な目的達成は先って意味では、ホープキングダムをお取りに現実世界にチェックを掛けに来たディスピアの動きと、今回のお話は重ね合わせなわけですね。
はるかが幻影を脱出したように、譲られた夢の国だけではなく、夢を現実に変えていく舞台も奪い返して、プリンセスの矜持を可憐に示して欲しいものです。
まほうつかいにバトンタッチするまで後三話、非常に楽しみです。