イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

DIMENSION W:第2話『ルーザー』感想

コイルまみれの世間に背中を向けた時代遅れの男と、コイルという可能性の先端にいるガイノイドの凸凹コンビがお送りする、近未来サイバネティック・ノワールSFの第二話。
導入編が終わって本格的に事件が動き出すぞー! ってわけで、仮面の復讐者とその娘のコンビとチャンチャンバラバラ、丁々発止の追いかけっこをする回でした。
謎の特殊部隊『グレンデル』に、尋常ならざるパワーを秘めた『ナンバーズ』、コイルの危険な側面『Wの具象化』と、お話しの奥底に導いてくれそうなキー・ワードも沢山出てきて、期待がグンと増す第2話でした。

第一話はスピード重視で一気に駆け抜け、お話やキャラクターの雰囲気や匂いを感じさせる展開だったわけですが、今回は紹介も終わり、結構カッチリと話を回してきた印象です。
キョーマさんの超常的な身体能力や、曰く有りげな過去が仮面の怪盗とのチェイスシーンで見え隠れし、それに置いて行かれたミラちゃんはコイルの申し子とも言える超計算能力を発揮する。
キャラクターがどの程度の能力を持っていて、何が出来るのかってのが見えてくると、今後展開されるであろうアクションの天井も大体見えてきて、期待と安定感が生まれますね。

それを目立たせるためのライバルとして出てきたのが、仮面の怪盗・ルーザーとその娘。
壮年男性と若い女性って組み合わせから見ても、見事に主人公コンビのシャドウとして生み出されたキャラクターですが、コイルへの憎悪という一番大事な部分を共有させているのが、ライバルとしてよく出来てるところです。
ここを共有することでキョーマさんとルーザーは影写しの親近感を生み出すことが出来、同時にそれが世界観を貫く非常に大きなモチベーションだからこそ、彼らは不倶戴天のライバル足りえる。
お話しの大事なところ、どう足掻いても共有できない核の部分を追いかけ合うことで、物語にスピード感と緊張感が出てくるってのは、男二人の華麗な追いかけっこでアクションとして示されていました。

キョーマさんにしてもルーザーにしても過去が秘せられていて、これはハードボイルドな雰囲気を高めると同時に、キャラクターの顔が見える歴史を追いかけていくことで、作品世界の歴史を視聴者に近い位置で見せられる効果があります。
ダラダラとセリフで解説されるより、キャラクターが活きた過去としてお話しのコアを見せてしまうことで、退屈と停滞を追い出すって手法ですね。
逆に言えば、男たちの過去が見えきってしまうとお話しの燃料が枯れてくるわけで、今回期待を持たせつつ喋りすぎないように、上手い塩梅で情報を出したわけです。

コイルで強化されたロボットをワンパンするキョーマさんの実力にも『グレンデル』なる、如何にも強そうな特殊部隊設定を見せて、少し説明されました。
ルーザーが追いかける『ナンバーズ』なる特殊なコイルもそうなんですが、ケレン味の効いたキー・ワードをチラ見せすることで、先が見たくなる物語的スケベ根性を煽る手法は、とても基本的、かつ効果的だと思います。
一度も美術品を盗んだことのない怪盗『ルーザー』が、実は世界の暗部に秘められた最も危険なコイルを盗んでいる凄腕っていう設定の捻り方とか、最高にカッコいい。
オーソドックスなハードボイルド・サイバーパンクのレールをちゃんと踏みしめつつ、捻るべきところは捻り、煽るべきところは煽る見極めと手際の良さは、このアニメの強いところです。


そんな風にカッコいい男衆に負けないように、あざとさと可愛げと優秀さをアピールする我らがヒロイン、ミラちゃん。
単色背景で抜く独特の演出が、ソリッドで乾いた裏路地の風を一旦止めて、ミラちゃんの純粋さと可愛さを無理なく映像に入れ込む仕事をしっかり果たしていました。
ミラちゃんが可愛いヒロインとして機能することは、過去と心を閉ざしたソリッドなキョーマさんが少しずつ心を開いていくためにも大事なポイントなわけで、とにかく可愛くあざとく仕草を作る細やかな作画は、お話運びのためにもありがたい努力でした。
ほんとなー、表情だけではなく仕草が可愛いね、ミラちゃんは。

ただボーッと突っ立ってるヒロインではなく、彼女は回収屋の相棒でもあるわけで、世界最高峰のガイノイドとしての能力を披露するシーンも、ビシっと決まっていました。
キョーマさんは脳筋というわけではなく頭もキレるし、ミラちゃんも書斎派ってわけではなくドロイドパワーでビュンビュン飛び回れるのですが、一応キョーマさんは肉体、ミラちゃんは頭脳という風に見せ場をしっかり別けて演出していたのは、キャラの強みがよく分かってグッドでした。
ルーザーをドローンやアニマトロイドで支援する娘の電脳魔術師っぷりも、サイバーな雰囲気をよく加速していて、『やっぱ細かいギミックに凝ったSFは良いなぁ』という気持ちにさせられました。

キョーマさんは男ツンデレがクラスに入っているので、ミラちゃんは機械扱い、道具扱いしないとお話が進みません。
同時にこの話新米バディものでもあるので、適度に頼りつつ距離を起きつつの揺れ動きを、どう気持ちよく見せるかってのが大事な話だと思います。
電子知性という新しい種として、感情を持ち心の血を流すミラちゃんが、どうにかキョーマさんの役に立とうと奮戦したり、可愛いアピールをキョーマさんに跳ね返される掛け合いの描写は、微笑ましくて暖かくて良かったです。
ツンデレはデレ強めの方が個人的には好きなので、基本ポンコツアンドロイド扱い、時々軽めのデレを見せる今のキョーマさんはやっぱり良い。
この冷淡と情のバランスを上手く見せることで、『過去に何かあって心を閉ざした』『しかし根本的には熱血漢で人情家』というキョーマさんのキャラが良く伝わってくるのが、男ツンデレとしての完成度が高いところです。

ギミックという意味では、キョーマさんの『コイル潰すッ!』というモチベーションを裏打ちする、『Wの具象化』のビジュアル的なヤバさはインパクトがあり、とても良かったです。
人間と無機物が奇っ怪に重なりあった、死ぬよりもおぞましい末路が不正コイル(というかコイル技術そのもの?)の先にあるのなら、そら確かに『コイル潰すッ!』ってなるわ。
このように絵の説得力でキャラのモチベーション、お話しの方向性に重さを付け加えてくれると、お話を受け止める上で凄くスムーズですね、やっぱ。


そんなわけで、回収屋キョーマ&ミラの初事件は、アクションありヒューマン・ドラマあり、今後の展開への伏線とライバルの顔見世ありと、盛り沢山な内容となりました。
過積載するとクラッシュが怖いものですが、各々のシーンのバランスを良く取って、見せ方も色々工夫して情報密度を上げた結果、とても興奮できる24分間に仕上がっていました。
ジャンルの定番をしっかり押さえつつ、必要なところではフレッシュなアイデアやヴィジュアルをしっかり盛り込んでいるところが、なかなかニクいところです。

コイルの持つ可能性と危険性を、ミラと『Wの具現化』という形でちゃんと見せたのも良かったですね。
今後もコイルを追いかけることで、キャラクターと世界と物語を掘り下げていく話だと思うので、そこに説得力が生まれたのはとても良かったと思います。
ルーザーとの対決は一旦取りやめにして、回収屋は別の事件、別のコイルを追いかけるようですが、さてはてどんな物語を見せてくれるのか。
とても楽しみです。