イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

プリパラ:第81話『地下アイドル始めました』感想

かの邪智暴虐のひびきを除くべく、いろんな場所で色んなアイドルが決起するプリパラ革命絵巻逆襲編第2回。
いろんな都合でメインカメラから遠ざけられていたあじみちゃんとふわりにようやく光が当たり、地下パラは地道に着実に影響力を強め、まほちゃんは迫り来る破滅を知らないまま、我が世の春を謳歌する。
色んな人の色んな表情が切り取られた、反撃の準備を整える回でした。
状況がスムーズに整理されるだけはなく、色んなライブがあって楽しそうな地下パラのぬくもりとか、最高にキチなれど捜査官としては優秀なあじみちゃんとか、自分の気持に素直になった結果ひびきとの絆を再確認したふわりのキテるっぷりとか、感情に訴えかける熱量がちゃんとあったのが、とってもグッドですな。

今回は地下パラ、セレパラ、プリパリ、パルプスという4つの舞台が入れ替わり立ち替わりで進む、結構複雑な話です。
キャラが散らばったのでそれをまとめる話も複雑になるって話なんですが、全ての場所でガッチリとお話に食い込んだシーンが展開するので、没入度が高まってあまり混乱しなかったですね。
パリではあじみちゃんがまほちゃんの過去に迫り真相の一部を無事ゲット。
危険物過ぎて隔離された立場を活かして、逆に主人公達が触り得ない情報に接触するという立ち回りはクレバーなんだが、久々にフル回転で聞いたあじみ語は脳に痛かった。
くるくるちゃん時代のひびきとは因縁があったようですが、考えれば考えるほどひびきの人格が歪んだ原因が果物泥棒のせいでひどい。
純真な五歳児が天然キチガイのフルーツセフト高校生に語尾付きで追い込まれたら、そりゃ怖いよね……。

パルプスでは玄田声のキャラが濃いお爺さんが良いトスを上げて、ふわり大復活。
嘘に彩られたひびきの言葉の中から本物を探す過程で、傷つけられてもひびきを求める自分の気持に気づく流れは、なかなか綺麗だったなぁ。
ひびきとレオナの対話のキー・ワードが『あるがまま』だったこと、ふわりのナチュラルさにひびきが惹かれていたことを考えると、ここでひびきの欺瞞性とそこに隠されている真実にふわりが気づいたのは、凄く大きな鍵だと思います。

『偶然の出会い→高まる恋心→手ひどい裏切り→心を見つめなおす→真実の愛の再獲得』というのはロマンスの基本形態なので、ふわりのヒロイン力もめっちゃ高まる展開だしな。
ひびきが自分を見失い、欺瞞性の海に溺れきっているのはセレパラの体たらくでよく分かったので、ここで真実と真心を手に入れ『ひびきの味方』が唯一できる立場になったのは、相当な勝ちフラグだと思います。
今までさんざん泥を食わされた分、ふわりには大逆転ホームラン決めて、最高に美味しいポジションもぎ取って欲しい。

……あじみちゃんの過去回想と合わせると、ひびきは『プリンス≒男の偽物』である自分に真正性を感じていないわけだが、ふわりを『私のプリンセス』として求める気持ちは『一番本物』なんだよな……。
これを無意識的な女達の連帯と取るか、男/女を含めた記号性を全て捨てた裸のひびきがふわりを求めていたと取るかで、ひびきのセクシュアリティはかなり複雑なブレを見せると思う。
別にゲイであろうがヘテロであろうが、友情だろうが愛情だろうが、どちらにも(もしくはそういう所飛び越えた場所に)価値はあると思うが、幼い頃からの欺瞞性を苦痛と感じていればこそ、ひびきはふわりに救いを求めて接触した。
なので、どういう所に落ち着くにしても『あるがまま』の紫京院ひびきを肯定できたら良いなと思う。
それは王子様を演じる女の子と、お姫様として見初められた女の子のねじれて型にはまった恋愛より、魂の血が通ったロマンスになると思う。


ほんでもって主役たちは地道な努力を積み重ね、一歩ずつ自分たちの『あるがまま』のプリパラを取り戻していた。
マネージャーたちの葛藤と奮起、少しずつ増えていく理解者、セレパラにはなくなってしまった温かみと、地下パラ運営の描写が凄く地道かつ丁寧なのが、濃厚に体温を感じさせて素晴らしい。
こうやってジワジワと実績を積み重ねて自分の領土を広げる描写がしっかりあると、驕り高ぶったセレパラをぶっ倒す時の説得力と爽快感もガン上がりするからな。
こういう整理回で欲しい描写をしっかり埋め込むのは、凄くいいことだ。

今回地下パラの体温を感じさせる助けになってたのが、1ステージをじっくり見せるのではなく、色んなキャラクターの色んなステージを細切れでつなげて、『みんなトモダチ、みんなアイドル』という理想をちゃんと絵にした所。
楽曲含めたプリパラのステージ表現の幅広さってのはこのアニメの大きな楽しみだし、セレパラでは失われてる多様性の素晴らしさを、説明ではなく描写することで視聴者を強烈にフックするのは、物語だからこそ出来る見せ方やね。

既に偉業を成し遂げた主人公だけではなく、まだまだ駆け出しのはななちゃんのステージを入れこむことで、前回ガァルルのステージで見せたパフォーマンス一辺倒主義へのカウンターがより鋭く刺さったのも、非常に良かった。
セレパラではガァルルやはななのステージは存在すら許されないわけだけど、その背景にあるドラマ込みで見守った視聴者にとってそれは凄く楽しいもので、そういう楽しさを排除しているセレパラの現状はちょっとなぁ……という気持ちが、自然に生まれるようになっとる。
これを今回用意したあじみちゃんの操作やふわりの決意と混ぜあわせると、ひびきの歪んだ支配体制を打倒し、彼女が苛まれている欺瞞性を引っぺがして『あるがまま』のひびきを開放する流れがスムーズに生まれるわけだ。
ここら辺のドラマとカタルシスが流れるための、感情と物語の水路づくりが今回非常に見事で、今後の展開にすごく期待が高まりました。

というわけで、お話を丁寧に整理し今後の展開を導くための、技アリの準備回でした。
テクニックに溺れることなく、しっかりキャラクターとテーマを見据え、熱量のある描写を積み重ねて物語の道筋を整えるという、凄く高度なエンタテインメントの技量が詰まったエピソードでしたね。
こういうお話を事件と事件の合間にしっかり用意できると、お話全体の構造が非常に堅牢になるし、周到に整えられた感情の高まりがドラマと結びつく足場もちゃんと生まれるわけで、アニメとして強いなと思います。
様々な場所で生まれた逆転の種火を、どうやってひびきに叩きつけ、物語を燃え上がらせるか。
来週以降が非常に楽しみになる、良いエピソードだったともいます。