イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

僕だけがいない街:第6話『死神』感想

顔のない悪意と無謀な戦いを続ける男の物語、今回は現代放浪編。
真犯人の罠にきっちりハメられ寄る辺ない日々を送る悟くんが、数少ない味方と語りつつ自分を確認するようなお話でした。
情報とモチベーション整理のいわゆる『中継ぎ回』なんだけど、悟くんというキャラクターやお話のテーマにじわっと迫る話でもあって、しみじみと面白い。

前回驚愕のヒキを見せた片桐家炎上ですが、店長の助けもあってなんとか愛梨は無事救出。
『手柄は俺のモノだ』と悪ぶる店長が、下衆なのか偽悪なのか、定かならぬ所に納めてる流れが好きだ。
『17歳のJKをモノにしちゃる!!』という欲望剥き出しでありつつも、やってることは命がけの人命救助なわけで、善悪定かならぬハンパな存在がちゃんといるってのは、お話が一方の極に偏り過ぎなくて良い。

なんとか脱出した後はお母さんの元同僚にあったり、愛梨と再開したり、ポリスに逮捕されたり、リバイバルの気配が忍び寄ってきたり、非常に色々あった。
悟くんの放浪をレールにして、事件の情報をまとめたり、『信じる』という無私の行動を何度もリフレインさせたり、アクションとサスペンスが回りだすと確認できないこまごましたことを、手際よく処理しているのが良い。
あと愛梨の細かい仕草が可愛らしくて、寄せてくれる信の分厚さもあってヒロイン力高いのがグッド。
キャラも沢山出たなぁ……西園議員と澤田さん、愛梨母あたりか。

今回は真犯人の長い手を避けつつ、色んな協力者が悟を助けてくれる話でもありました。
澤田さんにしても、愛梨ママンにしても、愛梨にしても、世界が敵になった悟を支えてくれる存在に共通しているのは『信頼』だと思います。
見返りを求めず、あくまで自分のエゴの延長として、結果を自分で引き受ける覚悟を込めた『信頼』があってこそ、わざわざ親殺しの逃亡者を助け、正義が為されるための道を引いてくれる。
愛梨の好意という見返りを狙って行動しているあたり、ここでも店長が良いスパイスになってますね。

愛梨ママンは直接悟を助けるわけじゃないんだけど、娘の真剣な『信頼』を感じ取って、自分も身を捨てて乗っかることにする。
偽証を問われて警察とトラブルになったとしても、おそらくママンは一切後悔しないのでしょう。
それは自分が勝手に自発的に、『信じたい』と願ってやっていることであり、社会的義務とか打算とか、外側から生まれる行動ではない。
ハードな状況で正義を為すためには、助力者であっても無私の覚悟が必要だとするあたり、やっぱこのアニメは正義にまつわる物語なんだと思います。
娘を信じきって正しいことをした愛梨ママンは、息子の証言を信じきれなかった悟ママンと、ちょっと対になってんのかね。

スタイリッシュなアニメーションで描かれていた死神の物語はつまり、リバイバルというインチキ能力を持ち、しかしマイナスをプラマイゼロに変える程度の正義しか出来なかった悟自身の物語だと思います。
預けられた『信頼』を果たしきれず、何度も負けてきた悟はしかし、結構立派なことをしてきた。
その姿勢を他人が勝手に『信じたいから信じた』のだから、罪悪感を覚えるよりも、自分を認めて欲しい。
橋の下で愛梨と語っていたのは、多分そういうことなんだと思います。
ほんと悟はナイーブで公平な、いいヒーロー的性格をしている。

身勝手で掛け替えのない『信頼』にどう答え、どう報いれば良いのか。
おそらく一回目の事件で何も出来なかった時から悟を苛んできた罪悪感は、力及ばず逮捕される段になってようやく答えを得る。
『ありがとう』と礼を言って、前を向いて歩き直すという悟の解答は、無駄に終わった『信頼』をバカにすることのない、良いアンサーだったと思います。
ここで逮捕されて終わったらただの無力な正解なんだけど、まぁ悟くんには無敵のリバイバルがあるからな!
……この答えを意味あるものにするために、歩かなきゃいけない旅路の険しさを考えると、『休んでくれていいのよ……?』と言いたくもなるな。


ヒーローが自分の道に答えを出す一方、悪いやつは影でほくそ笑んでいました。
有機酸と10歳の自分を重ねるように、ペーパークラフトの飛行機を直してあげた後、川の中を無駄になった善意が流れていくシーンの作りとか、『世の中、なかなかそうは上手く行かないよ?』という製作者のメッセージが上手く伝わる展開だった。
ほんとなー、『これは勝てるフラグッ!!』と視聴者の心を盛り上げてから、『いやそうも上手く行かねぇか……』としょんぼりさせ『でも負けっぱなしは超納得行かねぇ! 先見せろ!!』って気持ちにさせる手管が、圧倒的に巧すぎる。

話の半分くらいは真犯人のねちっこい偽装工作の説明に費やされてましたが、いやはや周到で執拗な野郎だ。
殺傷方法も歪んだ欲望を感じさせる手間の掛かったもので、嫌悪感をいだかせるのに十分である。
ラスボスは『こいつはやく死なねぇかな』と『強いからなかなか死なねぇな』を両立させなきゃいけんわけですが、今回犯行の細かい描写が入ったことで、視聴者に与えなければいけない印象両方が強化された感じですね。
少し都合よくスケープゴートを作れすぎている印象もあるけど、主人公のリバイバルのように、真犯人にも生け贄を判断する特殊能力とかあるのかしらね。

というわけで、現代を放浪し、仲間とチート知識と信頼を回収しつつ、二度目の敗北を喫する回でした。
散々色んな伏線とフラグも回収したし、あのヒキは露骨に『リバイバル発動で二度目の勝負!』という展開……だよね?
作品のテーマや主人公の内面的成長など、凄く良い準備がされた現代編だと思うので、過去に飛んでからの頑張りにも、否応なく期待が高まります。
託された『信頼』を背中に背負って、悟がどういう戦いを見せてくれるのか。
来週が楽しみです。